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転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2008年 7月~9月 2008.07.03
続・金融業界からの変化
前号に続き、金融業界の求人市場の変化をご報告します。感覚的には海外に比べ、半年ほど遅れて、いよいよ日本でも変化が生じてきたことはお伝えしたとおりですが、弊社で受託している金融機関からの求人受託数を見たところ、昨年末と比較して6月上旬で20%近くも激減していることが分かりました。
ただ一般社会では、そのような激減も既に織り込み済みのような風潮を感じます。大型リストラ等の発表が新聞紙面に踊るサプライズ的な要素はなく、「分かりきっていたこと」と冷静に受け止められているかのごとくです。この点は、1998年頃の社会のありようとは異なっています。
金融業界におけるダウンサイジングの実態としては、数千名の大型リストラを発表するといったショッキングな形をとらず、部門別であったり、シニアVPレベルだけであったり、いわゆる「間引き」の状態でひっそりと数百名単位のリストラが進行しているようです。特に外資系企業では、ある日、急にあの人がいなくなってしまった…という状況が起きているものと思われます。日系の金融機関等では、社内的にはオープンなものとして早期退職プログラムが発動されています。しかしながら、これらが新聞記事になることは、もうありません。
一方、海外の破綻した金融機関に対して、日本の金融機関が増資を引き受けるべく名乗りを上げるということも起きています。日本に新たに参入する外資系ファンドもあります。金融機関のすべてをひと括りにして「好調」「不調」などと、一律に見ることができない時代になったのかもしれません。
そのような情勢の中、筆者は、ここ3年ほど活発であった投資銀行・ファンド・不動産金融・リテール金融・保険・インターネット金融などの各業界の採用戦略、その変化に注目しておきたいと思っています。今後それぞれの求人数は激減するでしょうが、その中でも求人をし続けるポジションというのは、本当にその企業にとって重要な”戦略的ポジション”と見てとれるからです。その重要性は、業績好調で「数」を追いかけなければならない状況下での採用とは、まったく異なります。
もし、求人数がこれまでの5分の1になり、人材市場に出てくる金融出身者が5倍になったとすれば、個人から見たマッチングの頻度はいっきに25倍も悪くなります。(これは仮設の数値ですが、決してありえないものでもなく、筆者の体感としては現実となる可能性が十分にある数値です。)このような点が、金融業界にお勤めになる方の給与水準が高い理由なのかなと、筆者などは思います。もちろん優秀な方が多いので報酬が高い面はありますが、それ加えてこのような「リスク・プレミア」が最も高い業界だと感じています。
さて、そうなれば、これから先のことが気になりますが、2009年末までは不動産価格等も落ち着かないという専門家の意見があります。仮に2010年までこの状態が続くとすれば、大きな転身を決意する必要があるのかもしれません。もしそのように希望・決心される場合には、まだコンサルティング会社や事業会社など他業界での求人が活発な間に、キャリアのグランドデザインを変更し、対処されることがキャリア・ディベロップメントの重要なポイントになると考えます。
関連情報
- 「総務省・統計局」平成20年5月の完全失業率『4.0%』(6月27日公表)
- 「厚生労働省・職業安定局」平成20年5月の有効求人倍率『0.92倍』(6月27日公表)
コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)