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Career Design Seminar in USA Autumn 20162016.11.10
1)目的達成型留学から、可能性探求型留学への変貌
このような傾向は2~3年前から顕著になっています。MBA留学の目的が、「特定の業種や職種を目指すため」というものから「自分の可能性を拡げるため」「自分の可能性を知りたいから」という内容に変わってきていることを、今回さらに強く感じました。
その背景には、MBAを求める声が多様化しており、留学を通じてキャリアチェンジの可能性が大きく広がっていることが周知されてきた点があります。SNS時代であるいま、MBAの諸先輩の卒業後の進路について、留学中でも多くの情報を得られるようになりました。様々な業界、職種でリスタートをしている人たちの情報に触れ、それらを知ることができるようになってきたことも影響しているようです。特に直近である2014年あたりからのMBA卒業生のキャリア、進路が各ビジネススクールの学生数に影響しているようにも感じました。
日本人数がある程度多い学校は、在校生のバックグラウンドについても、また卒業時のキャリアの選択肢についてもバラエティに溢れていることがアピールできるので、次年度以降にも好循環を起こします。他方、日本人留学生が少なくなると、そのようなアピールは難しいためますます入学希望者が減少してしまいます。可能性探求型の私費留学生が増える傾向下では、各ビジネススクールの在校生数は重要なポイントになりそうです。
2)企業派遣生のキャリアチェンジ…5年後、10年後の市場価値を模索
企業派遣生の中にも、社外のキャリアの可能性を探求しようという人が増えています。派遣元に戻ると決めている人であっても、長期的には必ずしも会社内でのキャリアが安定的なものではなく、今後も絶対に転職しないとはいえない、ということが強く認識されていました。5年後、10年後のご自身のキャリア、その市場価値について、今年はご相談を受けることが増えました。
3)Combined Program の価値
Whartonの国際関係論と経営学、MITのエンジニアと経営学、Harvardの国際政治学と経営学など、経営学と並行してもう一つの専門性を高める“Combined Program”に留学する人が増えてきました。それらのプログラムを修了した人材は、MBAではないものの、それに準じるものとして採用側から期待されています。もちろん何を学んだかということが重要です。採用側は学位の有無ではなく、あくまで自社が求める知識・スキルが備わっているかを採否のポイントにしています。
4)交換留学の増加
Wharton、Kellogg、INSEAD、IESE、慶應などのビジネススクールで交換留学制度があるのはご承知のとおりですが、以前に比べ、地域的にもカルチャー的にも異なるビジネススクールで学んで経験を拡げ、将来の機会を広げたいと考える人が増えています。これも可能性探求型留学の傾向の表れのように思いました。
5)日本語ができる外国籍の方々の、日本への関心の高まり
海外で育った日本人の方も多数ビジネススクールに進学されていますが、その方々は卒業後、日本での就労を希望されない場合が多いもの。その一方で、ネイティブではないが日本語が堪能な外国籍の方々の中で、日本勤務を希望される人が少し増えてきた感触を持ちました。今回は、フランス、韓国、アメリカ、インドなどの国籍の方からもキャリア相談をお受けしましたが、そのような傾向が見てとれました。
6)採用活動の前倒し
売り手市場であることから、採用側は審査やオファーのタイミングを例年にも増して早めている印象を受けました。10月前半には投資銀行、コンサルティングファームなどで既にオファーが発行されたという話を耳にしました。
7)女性の留学生数の減少
今回たまたまお目にかかれなかっただけかもしれませんが、例年に比べて女性の留学生数が減少している印象です。一部、女性の数が多い学校もありましたので、地域あるいは国によって違いがあるのかもしれません。なんとか女性も男性も、MBA留学を志す方が増えてほしいものです。
以上が今年の米国ビジネススクール訪問の所感になりますが、帰国後すぐに2年生の方々を対象として、キャリア相談・キャリア紹介を全力で行っています。2年生の皆さんの積極性は素晴らしく、時差ボケを感じる暇もないほど。前述のとおり、採用側のプロセスが少し前倒しになった影響があるのかもしれません。いずれにせよ、引き続きフルパワーで留学生の皆さんのご支援をしていきたいと思います。
追伸: 今回は東海岸の都市部を中心に訪問したわけですが、米国はすでにモバイル&アプリが深く生活に入り込んでおり、それらがなければ大学院生活が立ち行かない状況になっていました。現地で勤務するMBA既卒生とも旧交を温めてきましたが、「もはやATMに行くことはない。モバイル&アプリで生活に必要なことがすべて、発注・支払い・手配できるようになっている」と話していました。10日間程の短い滞在でしたが、現金からカード、さらにモバイル&アプリの時代が米国では本格的に始まっているのだなと強く感じました。
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)
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