MENU
- MBA転職・外資系求人(HOME)
- イベント
- プロ経営者の特別セミナー
- 星野リゾート社長・星野佳路氏が語る「リゾート産業の未来と、マネジメント力」
イベントプロ経営者の特別セミナー
星野リゾート社長・星野佳路氏が語る「リゾート産業の未来と、マネジメント力」2007.03.15
第1部(前半):星野社長が語る 『リゾート産業の未来と、マネジメント力』
◆株式会社星野リゾート 代表取締役社長 星野佳路 氏
星野リゾートの歴史と、観光後進国ニッポン
皆さんこんにちは。私が今日の主催であるアクシアムの渡邊社長と出会ったのは、随分前のことになります。たしか地ビール「よなよなエール」事業を立ち上げようとして、醸造家となれる人材を探していたときでした。大阪まで候補者を一緒に説得しにいったことが懐かしく思い出されますが、その時、入社してくれたスタッフは今でもうちで活躍してくれています。
日本の地ビール業界というのはちょっと特殊で、地方の街おこしと結びついて乱立し、質的な問題もあって一旦廃れた歴史を持っています。そんな苦しい時期、私たちは他のメーカーがばたばたと慌てて動く中、味を変えたりラインナップを増やすなど新たな投資をせず、じっと最初のコンセプトを守り、ただ品質や味を追求していました。いわば省エネの経営をしていたんですね。そうこうするうち、現在につながるプレミアムビールのブームが到来。「よなよなエール」は世界4大ビール品評会のひとつ「インターナショナル・ビア・コンペティション」の「アメリカンスタイル・ペールエール」部門で7年連続金賞を受賞し、3年連続で経常利益を更新する商品に成長しました。何も変えないことが、逆に戦略になると知った例でした。
少し前段が長くなりましたが、本日は地ビール事業のお話ではなく、我々のリゾート事業をご紹介し、後半で組織のお話をしたいと思います。
1904年、星野リゾートは「星野温泉旅館」として軽井沢の地に誕生しました。私で3代目になります。もともと軽井沢の町は宣教師アレキサンダー・クロフト・ショーが開いた街で、夏の間の避暑地として発展していきました。その後、日本に空前の国内旅行ブームが訪れ、また天皇ご一家が別荘でお過ごしになる様子が報道され、軽井沢はいっきに観光地として全国に知れ渡ることとなりました。いわば偶然が重なって、一大ブランド観光地となったのです。どうしてこのようなブランドが築けたのか、街の誰もが分かっていませんでしたし、現在も認識されていません。ただそのブランドは、年々劣化の一途を辿っているのです。
そして今度は円の変動相場制導入がきっかけとなって、海外旅行ブームがやって来ます。日本から海外へ出かける旅行者はどんどん増加していきました。その間、国内旅行産業はというと、ほとんど成長しませんでした。一方、海外旅行産業は劇的に伸び続けたのです。つまり、我々のような地方の観光協会や温泉組合などは、気づかないうちに海外の宿泊施設と競合していたことになります。日本の旅行者を国内と海外の市場で奪い合う関係だったということです。しかも日本全体の旅行需要は伸びているのに、国内はほとんど伸びなかった…つまりプラスの部分はすべて海外に向けられてきたのです。
他国の例を見てみると、自国民の旅行需要が高まって海外に出て行く人が増えても、同時に海外からの旅行者も増えていく場合がほとんどです。しかし、日本の場合はその旅行者が増えない。ここが、日本の旅行産業が遅れているといわれる所以(ゆえん)でしょう。どのくらい日本が観光後進国かというと、昨年の観光訪問者数の世界ランキングでは、なんと30位。じつは一昨年までは32位でチュニジアの33位とほぼ同じ。サッカーで負けたとしても、観光で負けてはいけません。ちなみに1位はフランス、2位はスペイン、3位はアメリカ、4位は中国、5位はイタリア。1位のフランスに至っては約6000万人の人口に対し、7500万人の観光者を集めています。フランスは堂々たる観光大国なんですね。
観光大国となる条件は3つあるといわれています。
- 文化の知名度
- 安全性、治安の良さ
- 交通インフラ
以上の条件において、日本はいずれもトップクラスにあるはずです。それなのに後進国なのです。日本が観光後進国である理由をよく政府のせいにする声を聞きますが、私自身インフラは十分整っていると思います。後進国に甘んじている原因は、観光産業そのものの競争力のなさや生産性の低さにあるはず。伸びていく条件=潜在能力はあるわけですから、競争力や生産性を高めていくことが今後の課題でしょう。
成長へのポイントは、所有と運営の分離
では、私たち観光産業の問題点を考えてみましょう。この図(※A)は、私が社長就任以来、変わらず使っているものなのですが、ちょっと見てください。リゾート業界では、4つのプレイヤーがそれぞれ関わり合って事業を支えています。オーナー(所有者)、レンダー(金融機関・貸付業者)、デベロッパー(開発業者)、オペレーター(運営会社)です。
▲図(※A)
日本の特徴としては、開発と所有と運営を同一者が担っているという点です。”旅館の経営者”は、この3つをひとりで受け持っていますよね?この場合、ボトルネックになるのはレンダー(多くの場合「地方銀行」)です。旅館を拡張したいと地銀にいっても、経営者(個人)の担保能力は限られています。つまり、その担保能力の範囲でしか拡張できず、その限界が日本全体のリゾート産業のボトルネックになっているのです。
ところが、海外の事情は違います。4つのプレイヤーはそれぞれ特化した存在。海外市場にお客を取られている場合、現状をどうするのか。戦略を立て、実行にいくらかかるのか。その方法論が正しければ、投資家はいくらでも資金を出す仕組みができあがっています。我々と提携しているゴールドマン・サックスは、再生の戦略とそれによるリターンを厳しく精査しますが、土地の担保が欲しいなどとは決して言いません。
以上のように、所有と運営の分離こそが最重要課題。この分離によって、運営者は運営に特化してより戦略志向、顧客志向になることができると思います。
「仕組み」の導入による、リゾートや温泉旅館の再生へ
私たち星野リゾートは、「あの支配人がいるから」という俗人的な能力に頼るのではなく、「新たな仕組みづくり」による変革を重視しています。この仕組みを導入すれば顧客志向が高まり、顧客満足度が上がり、その結果として稼働率が上がるというような。
90年代、私たちが運営をまかせてもらえる(運営に特化した)会社になろうと「運営の仕組みづくり」に取り組んでいる中、ビジネスの相手となるはずの全国各地のリゾートが次々と破綻していってしまいました。そんな状況があり、予想外にも再生の主体的な役割を担う仕事に入っていくこととなったのです。
現在、再生を請け負っているリゾートの案件は全国で3件。2001年からのリゾナーレ、2003年からのアルツ磐梯リゾートとも、おかげさまで運営受託から3年で黒字化を達成できました。それからリゾート再生の中で最も注力しているのが、2004年から始めたアルファリゾート・トマム。まだここは今年いっぱいまで黒字化に時間がかかると予想しています。
北海道のスキー場に共通の問題点として、本州のスキー場との差別化がなされていないという点が挙げられます。「北海道ならでは」という上位概念がない限り、わざわざ北海道まで行く必要がないという消費者の声は明らかです。ですから私たちは「北海道でスキーをするとは、どういうことか?」と定義しなおす戦略に出ています。決められたエリア(ゲレンデ)だけを滑るのではなく、北海道全体の山をスキー場にしてしまおうといった「冬山解放宣言」などの取り組みがその代表例です。
一方、2005年4月からは「温泉旅館再生事業」がスタートしたのですが、ここに至って初めて、私たちは純粋な意味で「運営会社」になれました。投資・買収に関しては100%ゴールドマン・サックスが役割を担い、運営(経営)は星野リゾートが行うという事業です。第一号案件は、創業1624年の登録有形文化財の宿、加賀の山代温泉・白銀屋です。今後は温泉旅館の再生案件を増やし、会社としても注力していく方針です。
私たちはスキー場はじめ様々な形式のリゾートを再生してきましたが、日本の観光産業の競争力を高めるために一番効果があるのは「温泉旅館だ」と考えています。全国に約6万件ある温泉旅館の生産性はとても低い現状です。その生産性が改善され、経営が効率化されれば、ボトルネックが解消されて発展できると思っています。
世界中のリゾートを視察して、私自身思うことがあります。どこも素晴らしいロケーション、施設、サービスを持っているのですが、どことなく似ていて違いがない。そんな中で日本の温泉旅館だけが、畳に蒲団を敷いて眠り、箸を使って食事し、温泉という共同浴場に入る……これはとても特殊な宿泊形態であり、かつ日本の文化的美点を凝縮した貴重なものだとも思うのです。温泉旅館そのものが世界遺産・文化遺産になれるぐらいの価値あるものだと、その将来性とともに感じています。
「勝ち続ける組織」を作る仕組みを
以上、事業についてのお話をしてきたわけですが、つぎに、星野リゾートのガバナンスの変遷についてお話しし、星野リゾートの組織や文化などについても皆さんにご紹介できればと思います。
私が社長に就任した当初(1990年代)の悩みは、「人(働き手)が集まらない」「サービスのレベルが低い」「生産性が低い」というものでした。中でも人の問題は深刻でした。やはり旅館は他の産業に比べ、働きやすい安定した職場とはいえません。その点をまず変えていかなければいけないと考えました。ただ、従業員の給与を高くしたり、休みを多くしたり、コストのかかる変更は急にはできません。そこで、こんな2つのテーマを挙げ、コストをかけずに何ができるだろうかと考えました。
- (1)働いてみたくなる会社に見せる
- (2)組織全体を顧客志向にする
(1)働いてみたくなる会社に見せるために、組織論の教科書に載っている基本的なことですが、「ヴィジョン」「バリュー」「コンセプト」を明確にすることを実行しました。「ヴィジョン」を掲げることで社員のモチベーションを高め、会社の「バリュー」「コンセプト」を提示することで社員が安心して働ける基盤にしようと。その取り組みの中で掲げたのが『リゾート運営の達人になる』というヴィジョンです。(※B)
ヴィジョン(将来像)を設定し、最短距離を行こうとすることは経営者の重要な役目です。ただし、ここで大事になってくるのが”価値観”です。価値観とは、経営者の行動に対する制約要件だと私は思っています。
また、(2)組織全体を顧客志向にするために導入したのは、自分たちのサービスの質を顧客視点で測定し、全社員にフィードバックするというものでした。サービスに関する40項目・7段階評価のアンケートを利用客に実施し、データーベース化して社員に開示。それから、毎月ユニット(部門)ごとの損益、経常利益を全社員に公開する取り組みもはじめました。経営者と同じ判断ができるよう、そのための材料は持ってもらおうという意図からでした。
ちなみに、顧客満足度について1998年に我々が出会った問題について少しお話したいと思います。それは「顧客満足度は本当に重要か?」という疑問です。もちろん重要なのは当たり前なのですが、顧客満足度とは、本来企業にとって利益を上げるためのツールのひとつであるはずです。しかし、あまりに追求していくと果てしなくコストのかかる改善項目が出てきてしまう矛盾を孕んでいます。つまり、満足度がどのように利益につながっているのかという仕組みそのものがブラックボックスの中にあり、誰にも分かっていないのです。そこで私たちは、その仕組みに科学的アプローチをしていこうと現在も取り組んでいます。
今までに色々面白いことがわかってきました。例えば効率的にリピート利用させるには、中途半端な満足度では意味がないこと。顧客の志向・目的により、リピートしやすいセグメントとそうでないセグメントが存在することなど。これらがさらに明らかになれば、採算を合わせた、より効率的な資源配分が可能になるはずです。
このように私たち星野リゾートでは、(1)働いてみたくなる会社に見せる (2)組織全体を顧客志向にすることへ日々トライを続けてきたわけですが、もうひとつ組織にとって重要な問題が評価・報酬制度です。我々の制度の特徴は、「シンプルな評価」「オープンな評価」「決算賞与での利益配分」という点です。私は正しい評価というより、納得(合意)できる評価であることが大切だと考えています。合意するためには、議論が紛糾しがちになる複雑・厳密な基準は必要なく、極力シンプルな基準があればよいと思うのです。また、決算賞与での利益配分については、ヴィジョンである「達人の度合い(=顧客満足度のポイント)」と「経常利益の金額」とのマトリックスでリゾート施設ごとに配分を決定しています。
2000年ショックを受けて、ユニットディレクターの導入へ
じつは2000年、星野リゾートでは順調に業績を伸ばしたものの顧客満足度のポイントが落ちるという現象に見まわれました。その要因としては、スタート時の10年前と比べて主たる経営陣が老齢化し、結果的に年功序列的になってしまっていたことがありました。また、業績の良い時期が続いて組織が緩んだというか、変革のスピードが落ちてしまったこともありました。「失敗は成功のもと」といいますが、企業にとっては「成功は失敗のもと」という側面があるのかもしれません。
そこで、業績が良いときも悪いときも、変革のスピードが落ちないような仕組み作りが必要になってきたのです。その仕組みとは、ひとことで言うと『交替する責任者制度』です。私たちは社員を10人程度のユニットに分け、そのユニット毎にプレーヤーと責任委譲されたディレクターを置くというフラットな組織体系を採用しています。ユニットディレクター(UD)は全社からの立候補制。自分ならこうするという戦略提案を行い、社員による投票結果を重視して選出されます。
役職というのは、過去の功績に対する報酬としての意味を含んでいることも多く、「なんであの人があのポジションに?」という社員の疑問、不満をときに引き起こします。このような状況をなくさなければいけない。UDの立候補制はとても有効な手法であると思います。UDになれば責任が大きくなる分、給与は上がります。スタッフに戻れば、当然給与は下がってもとに戻ります。こうして常に「現在の働き」に対して報酬を支払い、過去の活躍に対する見返りとしての報酬やポジションは用意しません。これにより、過去の成功にあぐらをかかず、常に変革を生み出し続ける土壌が醸成されます。私たちはUDになることを出世と言わず発散と呼びます。プレイヤーに戻ることを降格と言わず、充電と呼んでいます。
我々の組織には、さらに『上限無しの社長賞』という制度もあります。変革を約束したUDがそれを成し遂げ、利益を生んだ場合にその一部を受け取るというものです。これも、常に会社と社員の関係をイーブンに保つための仕組みです。イーブンな関係であれば、UDを交替してもらわなければならなくなったときにも言いやすいですし、本人も受け入れやすく、また再チャレンジもしやすくなります。私は非常に納得のいく制度だと感じています。
また、私たちの組織における別の特徴としては、どうしても負けられない局面にある部門に対し、組織横断的なプロジェクトをリードする人材の配置、、そして社内ビジネススクール「麓村塾(ろくそんじゅく)」などがあります。私たちの事業拠点は地方にあり、学ぶ機会が地理的に制約されていることは否めません。そこで「麓村塾」で不利を補完し、また今まで語ってきた様々な仕組みを支えるUD候補=人材を育てていくための投資として実施しています。
第2部:星野社長とのQ&Aタイム
御社はマーケティングを得意にしておられるとテレビ等で拝見して認識しているのですが、ターゲットのセグメントを全社的に年齢層などでされているのでしょうか?あるいは施設ごとに設定されているのでしょうか?
今まで手がけてきたリゾート再生の案件については、スケールメリットを出すためにも同一のターゲットを設定したかったのですが、現状は実現できていません。運営していく中で結果的にリゾナーレ、アルツ磐梯、トマム、それぞれのターゲット設定が必要になり、したがってコンセプトが異なってしまい、スケールメリットが活かしきれていない状況です。
ですから、今後事業拡大しようとしている温泉旅館再生事業では、ぜひターゲットを同一にしていきたいと考えています。そのためには宿泊の価格帯や規模など、再生に着手する案件のタイプをある程度集約していきたいと思っています。
海外からの旅行者の取り込みについて、グループ全体としての戦略をお持ちなのか、あるいは施設ごとの戦略をお持ちなのでしょうか?
短期的な営業については、グループ全体で行っています。既存のチャネルについては、フェアーシェアを取れていると自負しています。今後の戦略については、特にメインランドチャイナに注目しています。中国本土、上海、北京はまさにこれからの市場で、発展していくまでに少し時間的な余裕もありますから、グループとして包括的なブランド戦略を展開していくつもりです。
先程、温泉旅館は非常にユニークな施設だというお話がありましたが、世界に対してそのユニークさを伝えて行くのは難しくはありませんか?また、伝える妙案をお持ちなのでしょうか?
私はユニークさや魅力を伝えることが、難しいとは思いません。実際に温泉旅館を体験された海外旅行者の満足度はとても高いですし、それらがクチコミで意外に浸透しつつある状況だと思います。実際、温泉旅館を取り上げたガイドブック的な書籍が売れているという話も聞きます。
ただ問題なのは、温泉旅館が彼ら(彼女ら)の興味を惹くものの、あまりに「秘境」に見えてしまっていること。交通の便や朝食を出す仕組みや一泊二食の料金体系など、彼らが慣れているホテル形式の宿泊形態に変えていくべき部分は多々あると思います。あくまで温泉旅館のいいところを残しつつ、そのような改善をしていくことが大切でしょう。
日本に約6万件ある温泉旅館ですが、再生のニーズについて、今後も増えるとお考えですか?
難しい質問ですね。6万件のうち、ペンション・民宿等を除いて主要温泉旅館が2万件あるとすると、そのうちの約7割が正確にバランスシートをつくれば債務超過の状況にあるといわれています。もし金融機関がこの処理に入り始めれば、社会的ニーズはとても高くなるでしょう。しかしながら、旅館を経営する本人たちにニーズはないでしょう。
温泉旅館の再生における問題点は何ですか?
当たり前ですが、集客力(稼働率)をいかに上げていくか、そして効率をいかに上げていくかという点です。ひとつの旅館では規模がそれなりですから、本部でできる作業と現地でできる作業を切り分け、スケールメリットを活かしていくことが大切だと思います。たとえばセブンイレブンの手法をイメージしていただけると分かりやすいかと思います。
各施設の従業員の確保に対して問題はありますか?
人の問題は、確保という点ではありません。あるとすれば高齢化です。私たちの手法では、従業員には「多能工化」を求めます。具体的には、待ち時間を減らして効率化するため、5種類の仕事をできるようにしましょうということです。そのためには研修などを受け、学習してもらう必要が出てきます。そのため、それらの体制を整える必要があると思っています。
再生事業では、士気の落ちた現場に入っていかれると思うのですが、どのように現場のモチベーションを上げておられるのでしょうか?
すごく面白いことに、今までの案件では、士気が落ちていて困ったという経験をしていません。なぜなら、私たちの導入する仕組みは「会社情報を公開します」「報酬制度を明らかにします」「意思決定の過程を公開します」「意思決定のプロセスに参加していただきます」「法令を遵守してサービス残業をなくします」などといったもので、今まで良くない点を進言したけれど変わらなかった…と失望した従業員の方にも、何か変わるかも知れないという希望を持っていただける場合が多いからです。
あとは、新しい仕事のやり方をスタートさせて、最初の成功体験をしてもらうまでが大切ですね。それまでは、こちらがかなり誘導して、とにかく変化して良かったと思ってもらうことがポイントになると思います。
ユニット制をとられていますが、セクショナリズムは強くなってしまいませんか?
ないとはいいませんが、だからこそ、全体の最高意志決定会議を公開することにしています。不思議なものですが、公開の場では、セクショナリズムはなかなか押し通せないものです。利害対立者同士のみで議論するのではなく、議論や決定のプロセスを公開することで防げると考えています。
ゴールドマン・サックスがイグジット先を見つけたとき、星野リゾートとしてはどうされるのですか?
ゴールドマン・サックスの相手先が経営(運営)をしたいといえば、うちが降りるのはやむをえないと考えています。たとえ所有者がゴールドマン・サックスのままでも、リターンが悪ければクビになるかもしれないのですし。誰が所有者であろうと、温泉旅館が投資として考えられる時代が来るなら、我々のビジネスはいつでもそんな可能性を含んだものだろうと認識しています。最大の利益を出せる人が、経営(運営)をすべきなのですから。
運営会社として、他社との差別点は何ですか?
優秀な総支配人やマネージャーを派遣して売り上げを上げるという、個人の能力に頼ったマネジメントではなく、他にはない様々な「仕組み」で集客し、効率化し、利益を出しますという点ですね。ですから今後もいかに独自の良い仕組みを開発していけるかが重要になってくると思います。
現在、温泉旅館の再生を7件手がけておられますが、将来的にはどのくらいの事業規模を目指しておられるのでしょうか?
ゴールドマンサックスというのは世界中に投資をしている投資家ですので、彼らにとっては件数より金額が大事です。恐らく、規模としては30件~50件を3年くらいの間に一気にまとめて投資したいというのが彼らの目的でしょう。日本の温泉旅館というのは、ある程度のポテンシャルを持っているという概念で投資をしていますから、ある程度の規模までは投資をしておきたいという意向ですね。
私たちも、温泉旅館におけるマネジメント・ノウハウを確立することはヘヴィーなのですが、何とかスケールメリットを活かすことによって効率化し、全体としての付加価値を上げていきたいと思います。
参加者の声
終了後、参加者の皆さんにアンケートをお書きいただきました。その中から、セミナーの感想(一部)をご紹介いたします。
- 「リゾート再生」を手がけることで何を目指しておられるのか、よくわかりました。
- 経営者の生の声を近くで聴ける、貴重なセミナーでした。とても勉強になりました。
- 少人数で、参加前に考えていた質問もすることができ、満足です。
- もっと時間が長ければ、さらに良かったと思います。
アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。いただいたご意見・ご感想は、今後のイベント運営に活用させていただきます。
講演者/パネリスト 略歴
代表取締役社長 星野佳路(ほしの よしはる)
1983年、慶應義塾大学経済学部卒業。
1986年、米国コーネル大学大学院卒業。
ホテル運営会社、外資系銀行を経て1991年、実家である星野温泉旅館を継ぎ、1995年「株式会社星野リゾート」へと社名変更。
2001年に山梨県小淵沢の「リゾナーレ」の営業権を取得し、3年目には黒字化を果たしている。アルツ磐梯(福島県)においても3年目での黒字化に成功、現在はアルファリゾート・トマム(北海道)の再生を手がけている。
2005年7月には「星のや 軽井沢」を開業。白銀屋(石川県・山代温泉)、湯の宿いづみ荘(静岡県・伊東温泉)といった温泉旅館の再生にも新たな力を注いでいる。
星野リゾートHP
http://www.hoshinoresort.com
お問い合わせ
本イベントについてのお問い合わせは、下記連絡先までお願いいたします。
株式会社アクシアム イベント事務局
Email:event@axiom.co.jp