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イベントキャリアフォーラム
女性MBAのサステイナブルなキャリアマネジメント2010.06.24
第一部 基調講演 MBAは女性のキャリア開発になぜ有益か?
日本教育大学院大学/学長 熊平 美香 氏
本日は私の人生を教訓に、MBAのキャリアについて一緒に考えていければと思います。女性のキャリアの変遷
私は、男女雇用機会均等法が施行された1985年にキャリアをスタートしました。その頃は「24歳までに結婚して家に入るもの」「働きながら子供を育てる母親は無責任でひどい親」という風潮でした。しかし現代は働くこと、子育てしながら働き続けることが大いに歓迎される世の中になっています。このお話を最初にしましたのは、「社会は当てにはならない」「社会の通説に付き合っていたら自分の人生が狂う」ということをまず皆さんにお伝えしたかったからです。時間が経てば、社会の常識も変わります。これからのキャリアを考えるにあたり、一番大事なのは「自分の人生をどのように創りたいのか」というビジョンを明確に持つことだと思います。
今日は、私のお話をサンプルとしてお聞き頂き、共感できること、違うと思うことを考え、自分自身を内省する場として使って頂きたいと思います。正解はない訳ですから、自分にとっての正解は何なのかを見つける、そういう風に使って頂きたいと思います。
ビジネススクール留学への決意
大学卒業後、女性の仕事の選択肢がない時代でしたので、熊平製作所という実家の金庫扉を作っている会社に入りました。貿易部で楽しくやっていましたが、皆さんが会社の問題に関する意見をおっしゃるのでそこに非常に惹かれ、色々聞いていくと会社の課題に気づきました。私は「問題を発見して解決するのが趣味」というくらいですので、課題があれば、解決するものだと思い、社員の皆さんに解決策を尋ねましたが、沈黙が流れるだけで、回答は得られませんでした。「解決策を探したい」と思い、ビジネススクールで学ぶことを決意しました。熊平製作所の課題を解決する為にMBAで学びたかったことは3つあります。
- 新規事業参入:正しい参入方法を知りたい、正しい多角化とは何か?
- 投資の意思決定:リスクがゼロになる投資方法とは?
- 経営とリーダーシップの意味
ビジネススクールで学んだこと
- 多角化の考え方:企業の存在意義を鑑みて事業を考えることが重要である
- リスクゼロの意味:科学的にリスクを測定してもリスクはゼロにならない。投資の成功は、意思決定者の確信や覚悟の大きさに繋がっている
- 戦略の一貫性:ビジネススクールで学ぶ事業戦略、マーケティング、ファイナンス、人材・組織マネジメント、全てが一貫性を持つことが成功の鍵である
- MBA思考:環境分析、戦略構築、実行計画、コンティンジェンシー計画を常に意識する思考プロセス
- 自由競争の意味:「自由競争の受益者は消費者である」
クラスメートたちから学んだこと
- パジャマで登校:授業が大変な中でも楽しむことを忘れないアメリカ人の遊び心
- 外国人留学生への支援:弱い人達に対するアメリカ人の優しさ、懐の大きさと社会に対する責任感
- 天安門事件:社会に対して明確に抗議・主張する姿勢
MBA後のキャリア
熊平製作所の存在意義と事業領域を見直すにあたり、ビジネススクールで学んだ通り、環境・競合分析を行い、金庫だけでない、建物全体のトータルセキュリティの会社というビジョンを打ち立てました。その結果、オフィスのセキュリティゲートなど、金庫以外のセキュリティ製品の発展に寄与することができました。95年に熊平製作所を離れることになったのですが、藤田商店の藤田田会長の下で働くチャンスを頂き、TieRackというネクタイとスカーフのお店の日本での立上げ(契約交渉、出店準備、工事の工程管理、商品の陳列)に関するあらゆることをやらせてもらいました。すごく楽しくて仕事に夢中になってしまったのですが、このチャンスがめぐってきたのも、MBAのおかげだと思います。この業界を全く知りませんでしたが、何をどう組み立てればいいかがわかり、苦労もなく楽しくやれました。
仕事に熱中するあまり、その頃ちょうど4歳だった子供の保育園のお迎えも行けなくなり、子供との時間がほとんど取れなくなりました。実業に入るとアイデアがどんどん浮かんできて、それを制御するのは難しい性質なので、色々な方々に相談しましたが、ワークライフバランスを考えて、藤田商店を去り、独立することにしました。
コンサルタントになろうと思った時、熊平製作所でビジョンや戦略を立てましたが、人や組織を変えるというところまではやっていなかったということに気づき、「人や組織を変えるとはどういうことか?」に強く関心を持ちました。
自分なりにビジネススクールで教えていることを調べたり、本を読んだりしているうちに出会ったのが、MITのピーター・センゲ先生の考え方を組織に取り入れ、20年かけてGEを大きく変革させたジャック・ウェルチと「学習する組織」でした。「自分が理解したことを皆さんとも共有したい」という思いから、2008年には『チーム・ダーウィン「学習する組織」だけが生き残る』という本を出版しました。
このように子供が4歳まではフルで、4歳から15歳くらいまでは比較的ゆっくりと働き、今は子供が18歳になり手が離れたので、最初に動いていたような働き方に戻りたい、と考えています。
ネクストステップ 大人の教育からこどもの教育へ
私は、「大人の教育から子供の教育に入って行きたい」と思っています。 それは、私がこれまで大人と付き合っていて、2つの大きな問題を発見したからです。- 日本のエリートは正解がひとつではない問題が解けない。 例えば、ケーススタディを使った学習では「あなたならどう考えますか?」と、自分なりの意見をまとめていくのが目的で、その実際のケースでどうしたかというのはあまり重要ではないのですが、日本人は「正解は何ですか?」と必ず詰め寄ってきます。用意された質問をスピーディーに解いて、正解であれば丸をつける。これが勉強だと染み付いているので、答えのない終わり方はすごく気持ちが悪いようです。
- 「あなたはどうしたいですか?」の問いに答えられない。 実社会では、自分で決めて行動し、責任を取ることになりますので、最終的には「自分がどうしたいか?」が、よりどころになります。「あなたはどうしたいですか?」と聞くと、みんなフリーズして心地悪そうです。
日本の教育は、工業化社会を支えるためには非常に優れていて、「組織で行動する」「生産性」「効率」「スピード」「質の高い情報処理能力」をつけてくれます。
しかし、脱工業化時代になり「イノベーションを興す」「前例のないことを考える」という面では、日本の教育は非常に弱い部分もあると思います。変化が激しい時代に未知の問題を解決するには、今の教育だけでは十分ではないと思っています。
日本の子供たちの夢についてもよく言われますが、中国、韓国、台湾、アメリカの子供たちと比べると、日本の子供たちが一番夢を持っていないのが事実です。これはとても残念なことで、何よりも大きな夢を持って欲しいと思います。アップルのスティーブ・ジョブズ、デルのマイケル・デルやグーグルのラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンのような強い信念や夢を持った子供たちが日本から出てきてくれたらいいなと心から思います。
「あなたは何がしたいの?」と聞かれてフリーズするのではなく、すっとんきょうなことを考えていいということを子供たちにもわかってもらいたいと思います。
今、国際紛争、複雑な問題解決の手法を勉強しているのですが、私の直近の夢として、これを教育の場に活かしたいと思っています。日本の教育界は多様なステークホルダーがいて、一枚岩ではなく、それぞれの壁が非常に厚く、分断された機能の中で子供たちが教育を受けていることを昨年知りました。色々な立場の方々が、その立場の違いを乗り越えて、「子供たちのためにどうするべきか?何ができるだろうか?」ということを対話を通じて明らかにできたらいいな、と考えています。
こんなことも、ビジネススクールに行って学び、それが繋がってたどり着いたのだと思います。ビジネススクールで学んだことも非常に大きかったのですが、その後、「学習する組織」に出会い、「学習する組織」のコミュニティの仲間に出会えたという意味で、MBAに行ったことはそれだけに終わらず、そこから始まる旅の出発点になったのだと思います。もしチャンスがあれば、「MBAで学ぶ」という扉を開き、次々とその先にある扉を開いていくと面白い人生が待っているのではないかと思います。
これからのMBAで学ぶこと
最後に皆さんがこれからMBAでどんなことを学んでいかれるのかについて、触れてみたいと思います。冒頭に、私が89年に学んだ自由競争のお話をしましたが、私は2008年の少し前くらいから、企業が消費者だけに焦点を当てることに何となく違和感を抱くようになっていました。実際に、2009年に金融危機が起こり、色々なことがパラダイムシフトして、私の考えていたことが現実になりました。消費者にとって最良の企業活動をしていたとしても、地球と人類の未来に対して良くないことをしていたら、個人が幸せになれない、というようなことが現実に起こり始めたのだ、と思います。地球や人類の未来に関しては、人口、環境、エネルギーが主要なテーマですが、この問題の解決にビジネスがどう関わっていくのかが今後の大きなテーマになりつつあり、これからビジネススクールにいく方が学ばれることの一つだろうと思います。
もうひとつビジネススクールの位置づけが変わってきていると思う場面に遭遇しました。
ハーバードのPresident Faustが「University as a whole(ひとつの大学)」という概念を打ち出しました。 医療、発展途上国の問題、法律の問題など、みんなの知恵を統合することが求められる時代になっています。ビジネススクールがお金儲けだけでなく何かに貢献ができるとしたら、それぞれのスクールの「知」を統合し、形や仕組みにする、組織化するということだと思います。ビジネススクールがそういう力を持って初めて、他の専門的な知識が広く社会に生かされるのだ、と認識しました。ビジネススクールはこのように変わっていくのだと思います。
「ビジネススクールは行って終わり」ではなく、「行って始まり」です。ビジネスは非常にダイナミックな世界で、時代の変化に合わせて求められる人が変わります。社会に貢献する為に必要な自分たちの力も変わってくるかもしれません。
自分がビジネススクールに行ったときは、日本の会社でM&Aはありませんでしたが、M&Aの先に何があるかをアメリカで学びました。日本は言語のバリアがあり、多くの領域において、日本以外の世界は全て繋がっているのに、日本だけが最先端のリサーチからかなり遅れていて、当面キャッチアップすることができないと思います。MBAで学ぶと、「これからどうなるか」がわからない中、模索しながらひたすら追いかけるのではなく、「次は何があるか」を知ることができます。先を見ることで、順を追って布石が打て、ゆったり暮らせることができます。ビジネススクールに行くことで、新しい世界は間違いなく広がっていくと思います。皆さんにとって未知の世界を経験し、成長しながら自分の人生を創っていける、という意味ではMBAはとてもいい機会になると思います。
第二部 パネルディスカッション 女性MBAのサステイナブルなキャリアマネジメント
Q.なぜMBAに行こうと思ったかお聞かせ下さい。
松尾(MIT 2008年卒):
私は大学卒業後、5年ほど日本の大企業に勤務していましたが、「会社の仕事はこなせるけど、自分は何も出来ない」という劣等感のようなものを持っていました。外に一歩出たら何も出来ないのではないかという不安を打ち消し、自立した人間になりたいと思ったことがMBA取得を決めた最大の理由です。
西川(Stanford 1992年卒):
私は大学を卒業後、男女を区別なく採用をしていたCitibankを選びました。Citiで金融商品の開発をしていましたが、経済の知識が何もなく、「私はベースが何もないな」と感じ、自分のベースを身につけたいと思ったことが留学を決めた理由です。
武井(Columbia 2008年卒):
普通、MBAに行く人はだいたい20代後半から30代前半ですが、私の場合は、30代半ばを過ぎて決意しました。勤務していた会社のオフィスクローズなど様々な要因が重なり、30代半ばで社歴が5社。今後転職を考えた際に良い会社で働けないのではないかと思ったことが、MBA取得の1つの理由です。年齢的には非常に悩みましたが、最後は熊平さんに後押ししてもらい、MBA取得を決意しました。
柴田(UCLA 2001年卒):
日本の大手企業で勤務していましたが、ドメスティックな会社ながらも、海外案件を多く扱い、周りにMBAホルダーがたくさんいる特殊な部署にいました。そんな環境で仕事をする中で、物の考え方、海外パートナーとのコミュニケーションを通じて、「私には足りないことがたくさんあるな」と感じ、留学しようと思いました。会社に留学制度があったこともきっかけになりました。
皆さんが海外での生活を経験してみたいというお気持ちもあったようです。
Q.ビジネススクールに行って何を学びましたか?
松尾:
今思い返してみると、授業の内容というよりかは、「ひとりでSurviveできる」という確信を持てるようになったと思います。日本では思いつかないようなことに遭遇し、それを受けて自分はどうしたいかを決め、2年間何とか生き延びる。それが一番得られたことです。自分の人生を設計することの自由さを身につけたことも大きな学びだったと思います。
西川:
卒業直後に勤務したCitibankのNYでの仕事、その後コンサルティング会社に転職した時はビジネススクール(以下BS)で勉強した知識を仕事に活かせました。ベンチャー企業の雇われ社長をやっている今も、非常に役立っています。BSで色々学んだお陰で、日々経営で起こることで、「こんなこと聞いたことない」というものはありません。社長業はリスクが大きくて怖い部分はありますが、「これはBSでちょっと習ったな」と言うことがあると、心のよりどころになります。
武井:
松尾さんと同じように自分がより自由になれたことは大きいと思います。もうひとつは、相対的に日本を見るという新しい視点を得たこともあります。3つ目には、世界における「経営」という観点で見たとき、BSという共通の文化の中で暮らし、共通の言語を手に入れたことです。BSで学ぶということは、グローバル化が進みスピード経営が求められる今の時代に必要な経営の共通の文化を学ぶことだと思います。MBAがあると学校が違っても、国が違っても同じ文化・言語で話せる。それだけで物事が進むスピードがとても速くなります。
柴田:
今までの皆さんのお話に共感できることが非常に多いです。BSに来ている人達、特にアメリカ人は、「キャリアを自分で考えて、自分で選んで創っていく」という考え方を当然のように持っています。私は「大企業に戻って自分のキャリアはどうなるのだろう?」と思った時に、自分で選び取っていける環境ではないと思い、派遣元を退職し、転職することを決意しました。自分のキャリアを創る上で、コアになるとても重要な考え方、姿勢を得られたのは非常に大きいと思います。自分は当たり前と思っていても、他の国の人から見ればそれは常識ではない。多様な文化や価値観を受け入れられる柔軟性を身につけたというのも大きな学びでした。
Q.MBAを仕事にどう活かしていますか?MBAを取得した後、仕事がどう変わりましたか?
松尾:
今はコンサルタントをしていますが、テクニカルな面では分析をする時のスキル、フレームワークを使うことなど習ったことがそのまま役に立っています。語学やコミュニケーションという面では、海外関連のプロジェクトがあると声がかかるという点で役に立っています。
西川:
今の会社の経営で言うと、MBAで習った通りにやると儲かります。「利益を上げるにはどうすればいいのか」と悩んで9年半やっていますが、立ち戻って考えると、BSで当たり前のことを学んだのだなと思います。お客さんのニーズを聞く、セグメンテーションをするなど、当たり前のことをきちんと実行すると、結果がでます。利益を上げられない会社は存在してはいけないと思いますが、やるべきことをきっちりやっていれば、利益は上がります。結果を出す為にもビジネススクールは役に立つと思います。
武井:
コンサルティング会社に就職できたのはMBAのお陰だと思います。来月から別の会社に転職するのですが、そこにいけるのもMBAのお陰だと思います。
柴田:
MBAを取得してから、投資銀行でも、デュポンの財務でもMBAで学んだことを活かせました。今の会社ではファイナンスからは離れて、経営者の近くでオペレーションサイドの統括のマネジメントをしていますが、ファイナンスだけではなくて、オペレーションの部分でも、効率化、改善するためのフレームワークも活かせています。BSで引き出しがいくつも出来たので、その都度、活かせないかなと考えています。あとは人的なネットワークが生きている部分があると思います。
Q.ビジネススクールに行って何を学びましたか?
松尾:
今思い返してみると、授業の内容というよりかは、「ひとりでSurviveできる」という確信を持てるようになったと思います。日本では思いつかないようなことに遭遇し、それを受けて自分はどうしたいかを決め、2年間何とか生き延びる。それが一番得られたことです。自分の人生を設計することの自由さを身につけたことも大きな学びだったと思います。
西川:
卒業直後に勤務したCitibankのNYでの仕事、その後コンサルティング会社に転職した時はビジネススクール(以下BS)で勉強した知識を仕事に活かせました。ベンチャー企業の雇われ社長をやっている今も、非常に役立っています。BSで色々学んだお陰で、日々経営で起こることで、「こんなこと聞いたことない」というものはありません。社長業はリスクが大きくて怖い部分はありますが、「これはBSでちょっと習ったな」と言うことがあると、心のよりどころになります。
武井:
松尾さんと同じように自分がより自由になれたことは大きいと思います。もうひとつは、相対的に日本を見るという新しい視点を得たこともあります。3つ目には、世界における「経営」という観点で見たとき、BSという共通の文化の中で暮らし、共通の言語を手に入れたことです。BSで学ぶということは、グローバル化が進みスピード経営が求められる今の時代に必要な経営の共通の文化を学ぶことだと思います。MBAがあると学校が違っても、国が違っても同じ文化・言語で話せる。それだけで物事が進むスピードがとても速くなります。
柴田:
今までの皆さんのお話に共感できることが非常に多いです。BSに来ている人達、特にアメリカ人は、「キャリアを自分で考えて、自分で選んで創っていく」という考え方を当然のように持っています。私は「大企業に戻って自分のキャリアはどうなるのだろう?」と思った時に、自分で選び取っていける環境ではないと思い、派遣元を退職し、転職することを決意しました。自分のキャリアを創る上で、コアになるとても重要な考え方、姿勢を得られたのは非常に大きいと思います。自分は当たり前と思っていても、他の国の人から見ればそれは常識ではない。多様な文化や価値観を受け入れられる柔軟性を身につけたというのも大きな学びでした。
Q.今後のキャリアについてどのように考えていますか?
松尾:
今の会社で2年半経ちましたが、今のところ次が明確に見えている訳ではありません。今の会社で結果を出すべきことがあるので、その目処がついた時に考えると思います。私はそれぞれの会社で「自分はこれを得たい。こういう結果を出したい」というのは必ず持つことにしていますが、それをきちんと達成できた段階で、色んなお話を頂ける人間になりたいと思っています。
武井:
短期的にここ5年くらいは、「この人に任せてみたいな」と色んな人に思ってもらえる人になりたいと思っています。また、「自分が如何にやりたいことを楽しくやっていけるか」を追求することも大事だと思っています。自分のことをよく知り、どういう環境にいて、どういう方向に成長したいかを自分で決め、時間がかかったとしても成長していける、それをきっちりやっていく5年にしたいです。
西川:
私はこれまで、「お客さんのため、誰かのためにバリューを出したい」ということを基準に働いてきた気がします。今、スーパーナースという看護師さんの派遣・紹介の会社にいるのですが、ここに来たのも、「患者さんがハッピーになるためには、看護師さんが生き生きと働いていないといけない。いい仕事を看護師さんに紹介することは人のためになる」という思いで10年やってきました。医療・介護はまだ経営やビジネスマインドが未発展で、わかる方が本当に少ないです。もっと多くの人に医療・介護に入って頂きたいのですが、躊躇する人が多いのが現状です。でもこれを何とかしないと、本当にまずい。MBAとして利益の上がる仕組みを作り、みんなが入っていける市場にしたいという強い思いがあり、それをライフワークとしてやっていきたいと思っています。会社はどこでも気にせず、小さいことでもいいから、もっと実績を出して、何かバリューを出し、その輪を広げていきたいと思います。
柴田:
現在コンサルティングファームにいますが、もう少し働きながら勉強をして、長期的には自分の道を探し、将来は何か自分でもう少し小さな規模でやりたいなと思っています。
子育てをしながらどのように社長業を続けているのですか?
西川:
逆に社長の方が子育てしやすいです。コンサル時代に出産して、それまでは「24時間働けますか」という状態でしたが、子供が熱を出したり、保育所のお迎えがあったり、保育園の会議がある時にお客さんとの会議が入ったりなど、保育園の方に「仕事のほうが子供より大事なのですか?」と怒られたりしたこともありました。社長になると「この日はこの時間に帰る」と自分の時間をコントロールできます。ワークライフバランスを求める方は社長になることをお薦めします。
私は外資系で勤務した後、MBAを取得し、日本企業で働いています。日本企業ではMBAのスキルをなかなか活かしづらく、MBA的なやり方を嫌う傾向が強いと思います。日本企業がMBAホルダーを活かしきれる文化にし、またMBAが日本企業で働きたいと思えるようにしていくためにはどうしたらよいでしょうか?
武井:
加速しながら成長している世界に対し日本はこの十年成長が止まっています。どんどんMBAホルダーのような世界を知る人が現場に行かないと、日本のスピードが上がらず、日本という国の価値がますます低下するのではという危機感を感じています。ただ、MBAホルダーをやみくもに出せばいいわけではなく、MBA的な価値観、利益追求主義だけでは、企業は大きくならないことを理解し、かつMBAが何かをわかっている人が経営の意思決定にある程度入っていないとMBAは活きないと思います。ただ、私の見ている限りでは、そういう会社が少しずつ増えてきているようにも思います。今は外資系に勤めていますが次に転職するのであれば、できれば日本の会社で日本の為に働きたいと希望しています。
西川:
私も今それをとてもよく考えています。小さくてもいいので、MBAホルダーが実績を出して、MBAが役立つことを証明すればいいと思います。成果が出ないと経営者は納得しないですので、少しずつでも実績を出すことが、将来、日本企業でMBAが生き生きと活躍できる場に繋がるのではないかと思います。
武井:
MBAを持っていると主張している人にMBAとして期待されている動き方をしていない人もいると感じています。一つの悪い例は、一つの成功例よりも、はるかにインパクトがありますので、MBAへの信頼がすぐなくなってしまう。MBAを取得したなら、自覚を持って「女性MBAは素晴らしい」というレピュテーションを日本で確立させるためにみんなが頑張ることが大切だと思います。
松尾:
韓国のサムスンは、社長直下に韓国人でないMBAばかりを集めた社内コンサルチームを作り、グローバル戦略をたてるなど、とても成果をあげています。日本人は権威がある人が何かをやり始めると変わったりするので、成功例を誰か真似してくれないかなという期待があります。女性の活用とMBAの活用は似ているような気がして、大多数になって始めて成果がわかるような気がします。サムスンの例はとても素晴らしく、これが成功したら、日本の大企業もそういうチームを作るというような感じで広まるといいなと思っています。
柴田:
私はあきらめているところがあって、「自分が働きやすい場所=外資系」ということでずっと外資にいるのですが、日本の会社がMBAの活用を十分に考えずにMBA派遣をし、派遣された人達が経営層にいてもやっぱり変わらないという現象があります。最近は全体のMBAホルダーの母数も増え、日本の企業への出戻りが増え、出戻りに門戸を開き始めたという部分で変わっていくのかなと思います。
熊平:
私は企業変革を見てきていますが、日本の組織を「学習する組織」にするべきだと思っています。「自分の経験を超えた見方ができないことが学習のバリアになっている」というのは「学習する組織」の概念です。私たちは、何でも自分の経験に基づいて判断しますが、実は自分の経験自体が非常に狭い世界です。「学習する組織」になるためには、MBAをよくないと思う人がいたら、「その人が何でそう思うか?」を対話し、お互いが分かりあえていなかった部分を発見することが大切になります。MBAとNon-MBAを区別すること自体が本当は残念なことで、これは日本の企業が多様性に対応できない一例だと思います。異質なものを理解しようとせず、その前にシャッターを閉じる。そこから学びはなく、組織に良い人材がいても、その才能を使いきれていない部分があると思います。
Q:この夏から2年間MBAにいき、31歳で卒業します。今後の人生を考えた時に出産や結婚をしたいのですが、MBAを取得し、社会で頑張ろうという時と出産したい時期とが重なり、少し不安があります。もしアドバイスがあればお聞きしたいです。
西川:
私はちょうどコンサルタントとして面白い時期に出産し、嫌な扱いを受けることもありました。しかし、出産した女性に対してだけでなく、厳しい目を持つ人はどこにでもいますので、耐えるしかない部分はありますが、MBAを持っているとなんとなく自分でやっていけるという自信はつくので、それを糧にやっていけば、絶対に乗り越えられると思います。いざとなったら起業して社長になれば時間は自分の好きにつかえるので、ぜひ医療介護で起業してください。
松尾:
同級生でBS在学中に出産した人がたくさんいます。学生なので、何日か休みを取って出産して、ある日からベビーカーを引いて学校に来る。学校は仕事ではないので、授業のマネージも自分で出来ます。もし既に結婚していて産める状況であれば、もちろん旦那さんの理解が必要ですが、在学中に出産するのはいいと思います。これは働く女性の一番の悩みだと思いますが、起業するとか、卒業して2年くらいはコンサルとかIBとかで死ぬほど働いた後、ワークライフバランスのあるところに転職して産むという例は多いように思います。それがベストだと思いませんが、それが日本に多い例だと思います。
柴田:
投資銀行時代の同期のMBAホルダーが結婚・出産して産休を取ったのですが、長時間労働ができず、退職し、1年くらい子育てに専念し、転職先を見つけた人がいます。キャリアを中断することに不安はあると思いますが、それまでに積み上げてきた経験があれば、1年割り切って中断して子育てに集中してもチャンスはあるのかなと思っています。
熊平:
その質問には、いつも、考えてもどうにもならない部分があるので、戦略的に準備することをお勧めしています。自分の経験から言うと、出産する状況になれば何とかなるものだと思います。その理由はまず体力があったこと。これは鍵になる点で、体力は必要です。次にマルチタスクをこなせる力は役に立ちます。家庭のことを細部にまで気を配り、色んなことを考えなければいけません。最後に人のマネジメントです。「私の一番大事な宝物を誰に預け、私がいない間に私の意図通りに動いてもらう状況を如何につくるか」というマネジメントは重要です。私はノートをまめにやり取りし、綿密に記録をとって頂きました。これはビジネスのマネジメントに繋がりますが、いざと言う時に動けるので準備をしておくことが大事だと思います。
Q.私は大手の総合商社で3年働いています。MBA取得を考えていますが、3年ではまだ出来ていない自分に気づき、留学しても自分で貢献できることがあるのか不安に思います。3年の経験でも役に立つのでしょうか?
松尾:
行きたいと一番と気持ちが高ぶっている時に行くのがいいと思います。5年経っても失敗することはありますし、「100%自分が出来る」と思う瞬間を待っているとタイミング逃してしまいます。経験が3年でも何か貢献できることは絶対あると思います。
柴田:
海外からの留学生やアメリカ人は職歴が3年とか短い人のほうが圧倒的に多く、それほど多くの実務経験を積んでいるわけではないので、そこを気にしなくてもいいと思います。自分のやりたいことをぶつけて、ビジネススクールに受かればそれはチャレンジしていいと言うことですので、躊躇せずにチャレンジして頂きたいと思います。
武井:
遅くても行かないよりはずっと良かったですが、できれば若い方がいいと思います。若い方が吸収も出来ます。素直で柔軟な思考力は、若い方がやはり高いと思うので、なるべく早くMBAを取るのはいいことだと思います。
Q. 30半ばでMBAを取って就職した場合は、前職の業界と同じ業界に絞られてしまうのですか?それとも違う業界での可能性もあるのでしょうか?
武井:
MBA取得時は新卒と捕らえるので、いくつであっても基本的に他業種も含めたさまざまな企業の門戸が開かれると思います。また学生は時間があるので、在学中に行きたい企業へのコネクション作りも出来ます。30半ばでMBAを取り、他業種へ転職する利点は、他業種に挑戦した後、次の転職を考える際に、その前に積み上げた経験が生かせることだと思います。
柴田:
実務経験が長い中途採用の場合、「2年3年は勉強のつもりでいいよ」というのは有り得ない訳で、しっかりアウトプットを出さなければなりませんが、過去の経験の中で、「ここは自分ですぐに貢献できる」と言う部分が少しでもあれば、業界を変えることは可能ではないかと思います。
西川:
私もスーパーナースに来る前は金融で、コンサル時代も金融相手だったのですがで、なぜスーパーナースに誘われたかと言うと、MBAを持っていて、女性で少しは経営を知っているだろうと思われたからです。経営は業界を問わないと思っていますので、やるべきことができれば、年齢は関係なく、異業界に行っても通じるものだと思っています。
参加者の声
フォーラム終了後、ご参加いただきました皆様からいただきましたご感想、ご意見の一部をご紹介いたします。アンケートにご協力をいただきました皆様、誠にありがとうございました。- パネルディスカッションが活発で面白かったです。これからの留学が楽しみになりました。
- 「どういう人間で何を欲しているのかを知るのが成長」というような生き方、価値観にふれるコメントに多く触れることができて、とても良かったです。ありがとうございます。
- 女性MBAに特化したお話を聞ける貴重な機会となりました。
- 女性MBAのロールモデルとなる方々のお話を聞け、大変有意義な機会をありがとうございます。私の職場にはMBAホルダーや女性のキャリアに対しての理解がなく、キャリア形成において何をすべきかということで迷いがありましたが、少し突破口を見出せたような気がいたします。
- 大変有意義なイベントをありがとうございました。 自分自身は国内ビジネススクールに在学してますが、もう少し時間があれば質問したかったが、また機会があれば参加させていただきます。
- MBAホルダーの話を聞く機会はあったが、女性MBAの話を聞く機会はなかったので、参考になった。 またモチベーションも上がった。MBAに対する意欲が萎えていたので本当に良かったです。
- 色々なキャリア・業界の方のお話をお聞きできて、とても勉強になりましたし、楽しかったです。 今、国内MBA取得中ではありますが、海外も視野が広がり良いなと思いました。
- 前向きな方が多く非常に面白かったです。私も勉強したくなりました。
- 具体的な発信に感心。
- タイトルの「sustainable career management」に対して、もう少し深堀りして欲しい気がしました。
- アメリカのMBAホルダーだけでなく、他の国のホルダーの人もいらっしゃったらMBAライフの話にバリエーションが出てよかったのではと思います。
- とても為になるお話をおうかがいでき、参考になりました。ありがとうございます。
- 女性だけのMBAセミナーは初めてだったので、非常に良かった。
- 以前、留学検討し始めた時よりも受検目的が明確になり、共感する部分が多く、参考になった。
- 受検や準備についてもう少し話を聞きたかった。
- Pre MBAの参加者が多かったためか、Pre MBAの関係の質問が多かったが、Post MBA 1~3年間のキャリア(MBAの生かし方)についてももう少し対象を広げたパネルディスカッションを今後希望します。
- 皆さんのお話を伺って、自分が潜在的に「したい」と思っていたが、形として認識できていなかった将来の目的が浮かんだ。(今後したい事がわかりました!!)
- パネルディスカッションで特に感じたが、MBAホルダー用と今後取りに行く人とを分けたフォーラムもご検討いただきたいです。
- MBA卒業後、就職し今に至ります。今回みなさんのキャリアを構築し続けているお話をうかがい、勇気をいただきました。
- MBAホルダーの方のお仕事のモチベーション、喜怒哀楽の源などを知れたように思います。「行ってみないと!」のお言葉が強く心に残りました。
- 現在35才なので、武井さんのお話に大変勇気をもらいました。
- 結婚や出産時にどのように対応されたか、という具体的な話が参考になりました。
- ’89~’08と幅広い年齢層の方の経験を聞けてとても良かったです。真剣にMBAを考えてみようと思いました。
- モチベーションが高まる良いフォーラムでした。
- 女性・MBAという、それだけではなく、熊平さんをはじめ、パネラーの方々のお人柄がすごく素敵で、自身のロールモデルとなる方にお会いできたという感触を受けました。このような機会を設けてくださり、どうもありがとうございました!!
- 熊平さんの講演も、パネルディスカッションのお話も、とてもためになりました。働く女性として勇気と元気をいただけた気がします。私も年齢的には難しい年齢かも知れませんが、前向きにMBAを考えたいと思います。
頂戴いたしましたご意見は、今後のフォーラム企画運営へ活用させていただきます。ご参加いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。
開催概要
- 日時: 2010年5月22日(土)13:30~16:30(開場13:00)
- 会場: 六本木アカデミーヒルズ「スカイスタジオ」(森タワー49階)
- 最寄駅: 東京メトロ日比谷線「六本木」駅より徒歩3分/都営大江戸線「六本木」駅より徒歩6分
参加費: 無料 - 定員: 120名
- 主催: 株式会社アクシアム
- 協力: ウーマンMBA
講演者/パネリスト 略歴
日本教育大学院大学/学長/HBS 1989
- 株式会社熊平製作所(金融機関金庫設備のシェア60%を有する企業)にて、経営企画室を設立、企業ビジョンの構築および企業変革に従事する
- ITセキュリティ(バイオメトリックスによる本人確認)技術開発のセンターを米国(サンフランシスコ) に設立し技術開発のマネジメントを行う
- 株式会社藤田商店にて、藤田会長のもとタイラックショップ(本社イギリス:世界27カ国の空港や駅に出店しているネクタイ・スカーフショップ)を日本で立ち上げる
- 1800万人の会員をもつTSUTAYAの親会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の取締役として、中期経営計画の策定を行う
- 2006年より、9カ国にネットワークを持つSynet Groupの一員となり、グローバルに組織開発、人材開発コンサルティング及びリーダーシップ開発プログラムの提供を行っている。研修プログラムは世界各国で多言語での対応が可能である。
- 「学習する組織」理論にもとづく、組織変革を行う
- 青山学院大学法学部卒業 (1985年)、ハーバード大学大学院MBA (1989年)
- 日本教育大学院大学 学長
- 財団法人クマヒラセキュリティ財団 専務理事
- 株式会社エイテッククマヒラ 代表
- 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科 講師
- 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科 評議委員会委員
- 社団法人日本英語交流連盟 理事
- デジタル・フォレンジック研究会 監事
- 株式会社 栄光 顧問
- 株式会社 セルム 顧問
- 株式会社 U.S.エデュケーション・ネットワーク 顧問
- 米国APT認定MBTIトレーナー
- PPS International認定エグゼクティブ・コーチ
- 雑誌 TNINK!2002年№2 リーダーシップを磨くための4つのステップ
- チーム・ダーウィン―「学習する組織」だけが生き残る 英治出版
- 情報セキュリティ文化賞 受賞 (2004年度)
株式会社ジャパン・カンターリサーチ/カンター・エクスプレス事業部マネージング・ディレクター/UCLA 2001
マッキンゼー・アンド・カンパニー/アソシエイト/Columbia 2008
株式会社スーパーナース/代表取締役 代表執行役員社長/Stanford 1992
A.T.カーニー株式会社/アソシエイト/M.I.T. 2008
お問い合わせ
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株式会社アクシアム イベント事務局
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