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転職コラム”展”職相談室
キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。
“展”職相談室 第242回2024.12.05
【特別版】『良い求人があれば動く』やり方は、キャリアの成功につながるか?
今回は、いつものようにご相談者からの個別の質問にお答えする形式ではなく、アクシアム代表・渡邊光章の特別コラムをお届けします。
Answer
昨今、企業の採用活動において、インターネット上の様々なポータルサービスを通じた直接スカウトの利用が日常となるなど、随分と改革が進んできました。そこで求職者(個人)も、VUCA時代、アジャイルな時代、JOB型時代、急激な想定外の変化が起こる時代に対応した転職活動を行う必要が出てきました。古い転職活動方法のままでは効果的に動けず、希望どおりのキャリアでオファー獲得ができなくなりはじめています。
キャリアコンサルティングの場で、「積極的に転職活動をしているわけではないが、良い案件があれば話を聞いてみたい」という方がよくいらっしゃいます。転職を前提としなくとも、ご自身のキャリアについて考えを深めていただくこと、そのディスカッション・パートナーとして我々を活用いただくことはぜひ推奨したいのですが、そのような方々にかぎってお話を続けていくと、コンサルティング時間の最後に「じつは、転職も視野にいれているのですが」と言われます。
「良い求人を見かけたから応募する」「希望に合う条件の求人だから応募する」というやり方は、いわばメンバーシップ制時代の古い方法論であり、今後ますます進むJOB型社会では、転職後のキャリアを成功させることは難しくなっていると感じます。
では、時代に即した新しい活動方法とは、どんなものなのでしょうか?
これから為すべき新たな活動方法のキモは、すばり“プロセス改善”であると私は考えます。
日々の仕事をしつつ、限られた時間の中で転職活動を効率的に行い、ベストなオファー条件を獲得して最善のキャリア機会を見つけ出す方法について、私なりの考えをお伝えしたいと思います。
まず、旧タイプの転職活動と、これからあるべき新タイプの転職活動を、プロセスの違いから解説します。
◆旧タイプ(メンバーシップ制時代)の転職活動
・企業研究をし、応募先の選定を行い、応募
(企業説明会からの応募、求人への応募、スカウトへの往信、いずれも同様)
・書類選考通過
・複数回の面接
・内定(口頭と書面)
・入社意思決定、企業へ意思表示
◆新タイプ(JOB型時代)の転職活動
・企業説明会への参加orスカウトへの往信orキャリアコンサルタントとの相談
・応募先を戦略的に選定(キャリアデザインに合わせた選定/詳しい企業研究はまだ不要)
・数社へ応募
※日頃スカウトの声が良くかかるタイプの人材は3~5社でOK
※スカウトの声があまりなく、なかなか面接が入らないタイプの人材はできるだけ多く(数十社)
※キャリア戦略やキャリアデザインが定まっていない人も、幅広に、複数応募を推奨
・書類選考通過
・面接に進んだ企業のみ、深堀研究/面接対策に集中し、面接中は3~5社の活動にとどめる
・内定(口頭)、条件すり合わせ、書面で正式オファー提示
・オファー面談に最も注力(時間をかけて、重要な人生の決定を行う)
・入社意思決定、企業へ意思表示
旧タイプの活動は、応募前の限られた情報だけで人生設計をしているようにも思えます。一方、新タイプは、実際に当該企業で働く方たちと面接の場を通じて対峙しつつ、しっかり企業やポジション、報酬制度やその企業でのキャリア機会を研究するというものです。それらを深いレベルで知ることで、多面的に今後のキャリアについてDue Diligenceすることができます。
旧タイプの問題点は、面接に進めないかもしれない企業の研究に時間をかけ、情報過多で願望だけが高まり、時間がどんどん過ぎてしまう恐れがあることです。また、面接対策に時間がかけられずオファーに至らない、応募前の企業研究で抱いた思い込みを元にオファーに飛びつき「こんなはずではなかった」と後悔する、などのケースも実際に何度も目にしてきました。
転職とは、あくまで応募先企業に属することが目的ではなく、新しいJOBをしっかり理解し、これからの職業人生の意思決定をすることです。ですから応募前の企業研究にばかり時間をかけるのでなく、面接に進んだ後や、オファーを得られた段階でこそ、時間を効果的にかけるべきだと思います。それから、多数の選考が同時に進むことによって貴重な時間が失われないように、正式な審査が始まったら、並行して進める企業数は3~5社程度にコントロールすることも肝要です。
つぎに、また別の角度から、これからとるべき転職活動の方法を考えてみたいと思います。
もしキャリアアップや、今後のキャリアの可能性を広げたいと考えるなら、私は「自分の希望に合う1社のみに応募する」のではなく、「複数社に同時に応募する」ことをお勧めします。その理由は以下の3つです。
(1)求人にはタイミングがある
「希望に合う求人」「興味がある求人」が、いつもオープン(募集中)であるとはかぎりません。自分の希望を満たす企業を探すことに時間をかけ、いざ応募してみようと気持ちが高まったときには既にポジションはクローズしていた、ということも起こりえます。そうならないためにも、もし「気になる」「もう少し話を聞いてみたい」と思われたら、正式な選考ではなく、「カジュアル面談(求人の理解を深めるためのカジュアルな意見交換)からのスタート」を希望して、応募されてはいかがでしょう(キャリアコンサルタントを介している場合には、コンサルタントからカジュアル面談の交渉もしてもらえます)。
お互いのニーズ(あなたがやりたいこと/企業がやってほしいこと)のすり合わせや企業の状況についての意見交換など、有意義な面談になるのではと思います。カジュアル面談で話を聞いた後、正式な選考へ進むか判断すればよいのです。
(2)採用企業からの新たな提案で、思わぬ展開へ進む可能性がある
じつは意外とこのパターンが多く、カジュアル面談や採用面接中、あるいはその後に「別ポジション/別チーム/別組織でご活躍いただけるのでは」と、当初のポジションと異なる提案が企業側から出されることがしばしばあります。また、面接の中でまだ社外に発表していない新しい戦略や試みを教えてくれることがあり、そのための採用であることを知ることも珍しくありません。これらは、応募というアクションをとらなければ知りえなかった情報です。
このように、ご自分では思いもよらなかった職務職責やタイトルで選考が展開し、最終的にオファー(大きなキャリアチャンス)を手にした方が多数いらっしゃいます。転職活動は、ご自身が思う「やれること」「やりたいこと」以上に、「やれる領域」や「やれる職責」があることに気づける良い機会でもあるのです。
(3)採用側は複数の候補者を比較検討している
当たり前ですが、興味を持った企業・ポジションで選考が進んだ場合でも、オファーが出るとはかぎりません。採用企業も複数の候補者を比較検討していますので、他の候補者が優先されて選考に時間がかかることや、選考中に有力候補が出てきたため、途中で選考がストップすることも実際に起こります。その場合、1社だけの応募であると、今回の転職活動が無駄に終わってしまうことになります。
また、最近(ここ2~3年)の傾向として、特にスカウト市場は一般公募市場と異なり「スピード」が最優先となっています。候補者側としては、スピーディーに選考を開始しつつも、応募後はじっくり時間をかけて面接を行い、しっかり将来の展望を合わせてくれる採用企業こそを、ご自身のキャリアとして選択したいものです。ただ、募集開始から採用決定まで、CEO求人では2週間、CxO求人では10日程度であり、あっというまに席が埋まってしまうのが現実です。それだけ優秀な人材が流動する時代になったということでしょう。
アジャイル時代には、最善と思えるキャリア・求人にはつねにスカウト対象となるような、優秀で実績ある候補者が複数存在します。特にミドル/トップマネジメントの求人には同レベルの競合候補者がひしめきあうだけに、候補者の個人的事情にかかわらず、マッチングのポイントとして「タイミング」と「スピード」が想像以上に重要な因子になっています。適材適所以上に「適時」が重視される傾向が強まっていると感じます。
それから、最近の成長企業、業績を向上させている企業の採用活動を見ると、「自社だけに応募してくれている候補者を重視する」というよりも、「複数企業からスカウトがかかる優秀な候補者には、複数オファーを得たうえで最後にしっかり自社でのキャリアを選んでもらいたい。そのような候補者が望ましい」とする傾向があります。自社に所属したいという応募者よりも、自社のパーパスと自らのパーパスが最も合致する応募者こそが、入社後に長期に貢献してくれると理解しているからでしょう。
以上が、私が「複数社に同時に応募する」ことをお勧めする理由なのですが、いかがでしょうか。ぜひ時代に即した新しい転職活動方法を取り入れていただき、キャリアを大きく飛躍させていただければ幸いです。
コンサルタント
インタビュアー/担当キャリアコンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)