転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第239回
2024.09.19

外資系でキャリアを重ねた40歳。HQがある環境を求め日系企業のオファーを複数得たが…。

これまで外資系企業を中心に経験を積んできた40歳です。セールスのマネージャーを経て、新規事業のローンチからマネタイズの仕組みを作り、その実績をかわれて事業再生責任者として現職へ転職しました。現在3年目をむかえ、なんとか担当事業の回復の兆しが見えてきたところです。

先日、日系企業のポジションでいくつかスカウトをいただいたので試しに面接を受けてみたところ、有難いことに数社からオファーをいただきました。歴史ある大手企業の新規事業開発マネージャー、スタートアップ企業の事業開発責任者など、それぞれ魅力的です。

現職では評価をしてもらっていますし、それなりに年収も高く、人間関係にも不満はありません。ただ、これまで外資系企業でキャリアを重ねてきたので、HQ(ヘッドクォーター)が日本にある日系企業で仕事をしてみたいという思いもあります。一方、現職で立て直した事業の結果が見えてきたところなので、最後までやりきりたい気持ちもあり迷っています。

また、じつは現職で6社目、転職すると7社目となります。もし転職することとなった場合、経験社数が多くなり同時に年齢も上がりますので、さらに今後のキャリアの選択は厳しくなると認識しています。そのような状況のなか、このまま現職に留まるほうがよいのか、あるいは転職すべきなのか、ご助言をいただきたくお願いします。

Answer

現職で6社目とのこと、平均すると1社3年程度で転職をしていることになりますね。社数から判断すると、短期間で転職を繰り返しているようにも見えます。腰を落ち着けて取り組めるのか、また良い条件があればすぐに転職をしてしまうのではないか、などご懸念のとおり採用側としては気になるところでしょう。

とはいえ、あなたのご経歴はより魅力的であると判断され、企業からスカウトの声が複数かかったのだと思います。そしてオファーが出たのですから、実績や実務経験、お人柄などが総合的に高く評価されたということでしょう。現時点でも「自社に来て、やって欲しい」という声を複数社からいただけたのですから、さらに語れる実績を得られれば、今後も「やって欲しい」と申し出てくれる企業はあるはずです。(もちろん、経歴や実績とあわせて、転職回数や年齢を気にする企業も現実にはありますので、すべての企業に当てはまることではありませんが。)

40歳という節目の年齢で、この先は事業責任者としてご自分で戦略を立て、ヒト・モノ(サービス)・カネについて意思決定をして事業をリードしたいと日系企業への展開をお考えになったのであれば、オファーが出た企業へ転職するのはチャンスといえます。そのチャンスの先で失敗しないためにも、ご質問の中に出てきた2社それぞれについて、気になる点を挙げてみました。細かいオファー内容や企業の詳細が不明ですので、一般的かつ推察を含めておりますこと、ご了承ください。

◆歴史ある大手企業
新規事業開発マネージャーとのことですが、当該企業(経営者)のその事業への本気度はどの程度ですか? また、どのような組織・チーム体制ですか? 恐らく部下なしのプレイングマネージャーとしてスタートすると推察しますが、実際の裁量はどのくらいありますか? 意思決定のステップはどのようになっていますか?

経営層や役員が立てた戦略を実現するための「仕組み作り」と「プロジェクトマネジメント」だけでは、ご自身が意図されているキャリアの方向と異なるのではと危惧します。裁量の範囲、意思決定のステップやスピード感も、外資系とは異なると思いますので事前にしっかりと確認してみてください。
 
◆スタートアップ企業
現在のステージがわかりませんが、その事業や経営者(ファンドの投資先であれば、そのファンド)にしっかりコミットできますか? 求められている職務・職責を具体的にイメージできていますか? ほかの業務への対応等、業務範囲が広がる可能性も考えられます。そして、一緒に働く人たちをリスペクトできますか?

現職で苦労して手掛けた事業の建て直しに成果が出始めたということなので、それをやり遂げるのも「キャリア資産」が一つ増えることになります。あなたの中で現職を「やり切った」と言えるまでの時間軸を想定してみて、現在のオファーで得られる経験の深さ・広さと比較検討して、ご判断されるとよいと思います。

40歳を過ぎての転職は、スキルや能力、実績、判断力だけではなく、人や組織をリードできるリーダーシップ力、一緒に働きたいと思える人柄、人間力といったものの「総合力」がより重視されます。経験社数が多い点はそれを事実として受け止めつつ、それよりも「できること」と「それらをどのように成し遂げたのか」について、成功だけでなく失敗も含めて語れることが大事です。失敗の理由を分析し、何を学んだかを把握できていれば、何歳になっても次の挑戦に活かせます。

転職はタイミングと「縁」でもあります。後悔のない判断をしていただくためにも、ぜひ一度キャリアコンサルタントに詳しく相談されることをお勧めします。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。