転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第238回
2024.08.01

総合商社で良い経験を積んでいるつもりが、スカウトをもらえないのは、なぜ?

現在40歳、国立大学を卒業後、大手総合商社一筋でここまで来ました。エネルギー関連の営業からスタートし、事業投資・事業開発などを経て28歳から3年間ほど海外へも赴任。38歳からはジョイントベンチャー(JV)の立ち上げを手がけ、そのJVに出向し取締役を務めています。年収は2200万円ほどになりました。

特に転職を強く意識しているわけではありませんが、自分の市場価値を知るために半年ほど前から転職サイトに登録。ですが、1ヵ月に多くて3~4本ほどしかスカウトの声がかかりません。自分としては良い経験を積んできている自負があるのですが、他の転職希望の皆さんもこの程度なのでしょうか? どうすれば、もっとスカウトをもらえるようになるでしょうか?

Answer

順風満帆なキャリアですし、世間一般から見てもエリートコースを歩んでこられていると思います。特に海外経験、JVの経営経験などは、他の方と差別化を図れるとても良いご経験といえます。経験そのものもそうですし、そういうメンバーに選ばれるほど会社から高く評価されている方、とお見受けします。

実際に他の方と比べてスカウト数はどうなのか、という点においては、数そのものだけを見れば確かに多くはありませんね。私自身、キャリアコンサルタント/転職エージェントとして活動していますと、例えば30歳前後の戦略コンサルタント、20代のSaaSセールス、20代のITエンジニアといった属性の人材では、1ヵ月間に受け取るスカウトメールが100通を超える方も決して珍しくはありません。(ちなみに1ヵ月で500通を超える方を目にしたこともあります。)

こういった事象が起こる理由は、上記のような経験を必要とする求人が多くあり、同様にそのような求人にマッチする方も多くいるためで、転職市場のなかで多くの求人と多くの候補者が存在する場所だからなのです。逆にあなたがいらっしゃる場所は、もともと求人数が多くなく、対象となる方も多くはない場所です。それゆえ、ピンポイントで声がかかることになるのです。どんなに優秀な方であっても、そもそもかかるスカウト数が多くない戦場で戦っているといえます。ただそれは、転職の成功において必ずしも不利なことではありません。スカウトは数本しか受け取っていないが、そのうちの1つの求人で見事に転職を果たす、ということが起こる世界でもあります。

もう少しあなたのご経歴・ご経験に焦点を当てますと、私の経験上、40歳まで総合商社一筋でキャリアを積んでこられた方には、スカウトは多くはかからない傾向があるように思います。採用企業の立場から考えられるその理由は、以下のようなものです。

・年収がとても高いため、自社では用意できない。
・エリートとしてのキャリアを歩んでこられているために、自社のようなの知名度の高くない会社・規模では満足してもらえないのではないか。
・泥臭く手足を動かしていただけないのではないか。
・個としての能力、業務スキルがどこまで高いのか未知数である。

などが挙げられます。また、総合商社に限らないお話としては

・40歳になるまで1社のみの経験というのは、柔軟性に欠ける可能性がある。

と懸念を持たれることもしばしばあります。

実際にお会いしてみると、総合商社出身者にはコミュニケーション力や柔軟性の高い方が多く、語学力もあり、事業推進力、交渉力にも長けている優秀な方が多くいらっしゃいます。しかし、採用企業側が勝手にフィルターをかけて見てしまうことは、ままあるように感じます。

あなたがスカウトを多く受け取れるようにするためには

(1)海外駐在、JVでの経験を詳細に記載する。
(特に戦略立案・事業推進・ピープルマネジメント・経営経験・その成果・泥臭い環境に身を置いていたこと、など)
(2)現実的に前向きに検討できるレベルまで「希望年収」を下げてみる。

などが考えられます。

(1)は長すぎてもいけませんが、それでも自分のことをしっかりと売り込もう、理解してもらおうという姿勢で書けばそれは文面に出るものですし、以前のコラムでも書かせていただいたことがありますが、実績を示す際に人数、金額、期間、%など具体的に数字で表せるものは数字で記載していくと、読み手に好印象を与えられます(もちろん開示可能な範囲内で)。

(2)については、ただ希望年収額・希望年収レンジを低くして機械的に記載・選択するだけでなく、自己PRや職務経歴などフリーテキストの欄に補足する形で「入社時の年収にはあまりこだわっておらず、まずは自身が深く関心を持つことができ、成果を出せる職務であると思えればチャレンジする所存です」などと記載してみましょう。そうすることで、採用企業側のフィルターをなくせるかもしれません。要はこちらの年収に対する考え方を、書類段階である程度示しておくということです。

決して「ご自身を安売りする」ことを推奨しているわけではありません。高い希望年収がネックとなってスカウトがかからず、その結果、外の世界にチャレンジできなくなることを防ぎたいという意図です。そうなるよりは、多少譲歩して、世の中にどのような求人があるのかをいったん見てみるのも良いのではないでしょうか。ぜひ一度、上記2つのアクションを試していただければと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

若張 正道

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント/人材紹介事業推進マネジャー

若張 正道

大学卒業後、大手食品商社の営業部門からキャリアをスタート。人材サービスに関心があったことから、2001年、アクシアム入社。新規事業であるMBAをメインとしたネットリクルーティングサービスの立ち上げに参画。無事にローンチを果たし、その後は人材紹介事業推進マネジャー 兼 エグゼクティブ・コンサルタントとして、ハイエンド人材の展望ある転職=「展職」を支援している。