転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第222回
2022.05.12

私費でMBA就学中。女性の場合、今後のキャリア形成上、就職で気を付ける点はありますか?

MBA取得を目指し、現在、私費でビジネススクールに就学中です。卒業後の就職(フルタイム)に向けて準備をしていきたいと思っていますが、女性の就職の際に気をつける点はありますか?

まもなくライフステージが変わる予定があり、男性と比較して不利な点があるのか、企業の選び方や面接でどこまで話した方が良いのか、その後のキャリアの作り方に影響があるのかなど気になっています。ご助言をいただけると幸いです。

Answer

新卒MBA人材がフルタイムでの就職活動をされる際、「女性だから」支障があったというお話は、これまで私がご相談をしてきた方々からは伺ったことはありません。職務内容・ポジション・タイトルや待遇面で、女性/男性での差はないと認識しています。

長らく古い体質のままだと言われてきた、いわゆる日系大手企業・歴史ある企業でも、現在は働き方改革に積極的に取り組んでいます。Job型人事制度の導入や、福利厚生の充実などを推し進めており、例えば男性の育児休暇取得を強く推奨する企業も見受けられるようになってきました。

また、出産・育児による社員の離職を防ぎ、希望に応じて男女とも仕事と育児を両立できることを目的に、「育児・介護休業法」が2021年に大きく改正され、今年度(2022年4月)から運用がスタートしました。「出産時育児休業制度」が創設され、男性の育児休業取得を後押しする施策も段階的に施行されます。「育児休業の分割取得」や「夫婦間での交代取得」も可能となるため、育児休業を取得しやすくするための環境整備などがこれまで以上に進むでしょう。

※厚生労働省HPより 
「育児・介護休業法が改正されました ~令和4年4月1日から段階的に施行~」

話が少しずれてしまいましたので、元に戻しご回答します。MBA取得(留学・オンライン就学等)のために離職期間があったとしても、卒業時のフルタイムの就職活動で「女性だから不利」ということはありません。ただ、ライフステージの変化、例えば、結婚・妊娠・出産・育児・介護などのライフイベントでステージが変わると、その影響を大きく受けるのはやはり女性であると思います。

実際に就職活動をされる際には、キャリア形成とご家庭との両立を目指すという視点をしっかり持ち、検討する必要があります。企業を研究する時やオファーを手にした時、あるいは意思決定する時に、留意いただきたい点を以下にお伝えします。

(1)ライフステージの変化が予定されている場合は、面接時に率直に話す
既にライフステージが変わることがわかっていましたら、面接の時点で率直に採用企業に伝えましょう。その変化があっても仕事への取り組み意欲があり、今後のキャリアデザインについてもしっかり考えていることを語れるよう準備しましょう。ご自身のキャリアとご家庭の両立を目指す意思があることを伝えれば、理解いただけると思います。ご相談者にどのようなライフステージの変化があるのかわかりませんが、過去に以下のような方もいらっしゃいました。
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<Aさんのケース>
選考中に妊娠が判明しましたが、そのことを採用企業に伝え、見事内定を手にしました。そして企業と相談して入社のタイミングを変えました。
<Bさんのケース>
出産を数か月後に控えていましたが、採用企業と話し合い、入社してすぐに産休に入り、産休明けから勤務を開始しました。
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もちろん、その方(候補者)と企業/業務内容にもよりますのですべての方に当てはまるとは言えませんが、状況を開示した上で選考が進むようであれば、企業側はあなたの採用を前向きに考えているはずです。そしてオファーが出た場合には、疑問点・心配な点等について色々と相談してみてもよいと思います。

(2)働きやすい環境か? どのような制度があるのか? 実際に活用されているのか?
社員の働き方改革や人事制度改革など、一人ひとりが能力を発揮できる「well being」な環境作り・環境整備に取り組む企業は増えています。具体的に、育児や介護と仕事の両立をサポートするどのような制度があるのか、時短やリモートワーク勤務の実情、性差や役職に関わらず休暇を取得している事例などを確認しましょう。就職する企業を決める時の大事な要素の1つとして、諸制度の充実やその運用実態をしっかりと確認することをお勧めします。

(3)MBA新卒/MBAホルダーが活躍している企業か? MBA新卒向けのポジションを有する企業か?
私費で就学されているとのことですが、金銭・時間を投資して、目的をもってMBAで1年ないし2年間学んでこられたと思います。それらを存分に活かし、今後のキャリアを伸ばしていただくという視点では、MBA新卒/MBAホルダーが活躍している企業や、MBA新卒向けのポジションを有する企業も選択肢として考えてみてはいかがでしょう。

MBA人材が活躍している企業は、言い換えればMBAを積極的に採用している企業であり、MBAの理解(知識だけではなくリーダーシップや考え方等)が深い企業であるといえます。MBA新卒への期待も明確なので、「これまでの経歴×MBA」を活かせる可能性が高いです。そして、グローバル展開をしている企業や、早くから働き方改革・ダイバーシティ等に注力してきた企業も傾向として多く、ライフステージが変わっても活躍できる環境である可能性も高い印象です。

・MBA人材を積極採用している企業か? 積極採用の場合、それらの人材がどのような職務で活躍しているのか?
・自校のアルムナイ(卒業生)がどのような企業に入社し、どのように活躍されているのか?

なども調べて、可能であればMBAの諸先輩方にお話を聞いてみるのも参考になります。

今回ご助言した3点は、ライフステージとキャリアのバランスを考えるという視点で、女性にかぎらず男性にも参考にしていただけましたら幸いです。

<追記>
女性MBAホルダーの方で、もしフルタイム活動中に「(男性と比べて)こんな違いがあった」「こんなことに困った」というご経験があればお教えください。別の機会にまとめてみたいと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。