転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第215回
2021.06.03

ITセールス経験しかないが、興味のある「サステナビリティ業務」へ転職できますか?

現在27歳。大学では国際関係学を学び、卒業後、大手IT企業でソリューションセールスとして勤務しています。今後は、もともと興味のあったサステナビリティの分野に進みたいと思い、転職を検討しています。そのような転職はできるものでしょうか?

Answer

日本企業全体として、近年、サステナビリティには力を入れています。「S&Pダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)」という米国ダウ・ジョーンズ社とスイスのSAM(Sustainable Asset Management)が選んだサステナビリティ株式指標があり、2020年に発表されたデータでは、全世界で選ばれた上位323社のうち、日本企業は39社が入っています。これは米国の58社に次ぐ2位の社数であり、健闘しています(日本が2位とは、意外に思う方も多いのでは?)。

ラインアップはやはり日本の老舗大企業が大半なのですが、Zホールディングスや楽天(2020年に初選出)など、比較的新しい産業、若い企業でもグローバルのランキングに選出されていて、大きな変化を感じます。

サステナビリティに限らず、CSRやSDGs関連も同様です。世界的に大きな流れがあり、どの企業も意識した企業経営をしています。ここに力を入れていくことで企業のブランディングやビジネスにつながりますし、良い人材の採用、既存の社員のリテンションにもつながります。もはやこれらを無視して企業経営はできない状況となっています。

そしてその流れから最近、サステナビリティ関連の求人は人気ポジションになりつつあります。以前よりもこの分野を志向している人、この分野の案件を紹介してほしいという問い合わせは間違いなく増えました。

求人を見ると、特に総合系のコンサルティング会社はどこもこの分野の専門チームを持ち、クライアント企業のニーズに応えられるよう組織を整えていて積極的に採用活動をしています。

事業会社でもこの分野の求人はあるのですが、まずほぼ大手企業に限定されており、採用人数は少数、そして求人要件としてもサステナビリティ/CSR/SDGs関連の業務経験を求めていることが多く、なかなか狭き門という印象です。企業としては力を入れている分野ではありますが、既存メンバーが推進しているので外部に求人を出していないということも多くあるように見受けられます。

長くなりましたが、ご質問への回答としては、今のセールスから事業会社のサステナビリティ関連にいきなり行くのはハードルが高そうです。とはいえ、やれることはありそうにも思います。例えば……

◆応募時に志望動機書を求められていない場合でも、現在の世界的な課題と日本企業の課題をつなげて書いてみる(大学で学ばれた国際関係学なども活きるかもしれません)。

◆その機会を得るために、いったん別の職種に転職する。
※遠回りになりますし、その後必ずなれるという保証はないのですが。
(1)親和性のある職種として広報やIRが考えられるので、そちらに転職する。
(2)サステナビリティ/SDGs関連コンサルタントの中には、ビジネスコンサルタント経験を求めているものがありますので、まずビジネスコンサルタントに転職をする。

◆現職企業で、サステナビリティを担当する部署への異動を申し出る。すぐにその機会がなくても1-2年は現職で待ってみる。

個人的な見解となってしまいますが、求職者の方の中ではコンサルティング会社よりも事業会社サイドでサステナビリティ業務に関わりたいという方が多い印象があり、現状、需給バランスはとれていません。新しい分野ですので、まだど真ん中の経験者は市場にさほど多くないのですが、採用企業は経験者を求めていることが多く、求人してもなかなか良い候補者に巡り合えないということが起きています。その結果、今後は市場原理が働き、求めるハードルを下げる企業が出てくるかもしれません。

その時に、「経験そのものはないが、自分事の課題としてしっかりと捉えているし、世界の著名企業が推進するサステナビリティとはどのようなものか、などの知識も蓄えている」など、アピールできるものがあればチャンスをつかめるかもしれません。ご自分なりにしっかりと準備を進め、これだ!という案件が出てきたときに応募し、他の候補者に勝てる状況を作っておくのもよいと思います。

少し長期戦になるかもしれませんが、あなたの状況が許すのであれば、じっくりと進めてみることも検討してみてください。

*参考資料
サステナブル・ビジネス・マガジン『オルタナ』2020年11月24日掲載記事
DJSI「ワールド・インデックス」に国内39社
以下、記事より転記(公表リスト順、●が新たな指定企業)
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本田技研工業、伊藤忠商事、小松製作所、LIXILグループ、三井物産、ナブテスコ、双日、TOTO、凸版印刷、ニコン、積水化学工業、積水ハウス、大和証券グループ本社、野村ホールディングス、味の素、●日清食品ホールディングス、シスメックス、花王、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、東京海上ホールディングス、三菱ケミカルホールディングス、●Zホールディングス、●中外製薬、第一三共、●小野薬品、●日本プロロジスリート投資法人、●ファーストリテイリング、丸井グループ、●楽天、富士通、●NEC、野村総合研究所、NTTデータ、コニカミノルタ、オムロン、●リコー、●横河電機、日本電信電話、ANAホールディングス
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※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

若張 正道

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント/人材紹介事業推進マネジャー

若張 正道

大学卒業後、大手食品商社の営業部門からキャリアをスタート。人材サービスに関心があったことから、2001年、アクシアム入社。新規事業であるMBAをメインとしたネットリクルーティングサービスの立ち上げに参画。無事にローンチを果たし、その後は人材紹介事業推進マネジャー 兼 エグゼクティブ・コンサルタントとして、ハイエンド人材の展望ある転職=「展職」を支援している。