転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第210回
2020.11.05

MBA社費留学ながら、転職活動でオファーが。復職と転職で揺れている

社費でMBA留学をし、まもなく卒業を迎える者です。留学生活を送るうちに、卒業後は転職したいと考えるようになり、他社より志望する職種でオファーをいただきました。ところが、ちょうど同じタイミングで派遣元企業の人事から、希望していた部署への配属が決まったとの連絡がありました。留学前から異動願いを出していたものの長らく叶わず、MBA卒業後は元の部署へ戻ることが前提と聞いていましたので、「何故このタイミングで?」と複雑な気持ちです。

オファーをいただいたのは、ある中堅企業の新規事業開発職。その責任者として事業の企画から立ち上げ、運営をするポジションです。グローバルに事業を展開していくので、ボーダレスに動けるところ、裁量を持って取り組めそうな点に非常に魅力を感じています。

一方、復職した場合、新たな事業創出の窓口として、外部を含め様々な業務を部門長と共に動かす役割になります。大企業で新たな事業を創ることに関われるのは率直に言って魅力があります。落ち着いて考えてみると、「ここで数年間経験を積んだのち、中小規模の企業で事業開発責任者として動くというキャリアもあるのでは?」と思うようになり、復職するべきか、転職するべきかで揺らいでいます。

仮に退職する場合、希望の部署へ配属してくれた会社には、感謝と同時に申し訳ない気持ちがあります。転職先となる企業は、業界が異なるものの、事業創出に携わる点では同じようなポジションのため、どのように切り出したらよいものかもわかりません。また、退職の意思表示はいつ頃がよいのかなど、退職する場合のアドバイスをいただければ助かります。

ちなみに、家族は私が納得のいく道を選んでいいと言ってくれています。留学資金の返済計画については算段をつけていますので、それが転職のネックにはなりません。

Answer

ご相談者の複雑なお気持ち、お察しいたします。社費留学生の方には、MBA留学で得た知識・スキルを活かせるか、まずは会社に帰任して卒業時の配属先でキャリアを見極めることをご助言していますが、既に大変魅力的なオファーを手にされているとのこと。悩ましいところですね。

(特にここ数年、社費生の方でも、卒業時に新たなキャリアをスタートさせて活躍される方が増えています。またキャリアマーケットはというと、採用スピードが加速。魅力的なポジションが埋まる速度が速まっているように感じます。)

ご相談は下記の2点と受け取りました。

(1)復職か転職か

どちらも事業を生み出すポジションのようですね。詳細はわかりませんが、判断のポイントは復職した場合の職責が、「事業企画と立ち上げ」なのか「事業企画・立ち上げ・運営」まで実施できるのか、ということかと思います。

前者ですと「立ち上げまでで終わり、数字責任を持ち運営をするのは別の部署」ということですから、立ち上げる力はつきますが、数字責任を持ち実行する経験・力は養えそうにありません。オファー企業のポジションは、新規事業の立ち上げと運営を任されるポジションですので、「ジェネラルマネージャー(GM)」としての経験を積めそうです。

ご相談内容から推察するに、あなたはいずれ「事業を動かすジェネラルマネージャー(GM)」を目指していらっしゃるようにお見受けします。およそ38歳~40歳までにどのような仕事をしていたいのか、プランがあればそれに近づける機会はどちらか、そしてオファー企業/現職企業で、「大きな実績=トラックレコード」をつくれそうな機会はどちらか、という比較で考えてみることも1つの方法です。

オファーレターにはまだサインをされていないようですが、回答期限までに時間があるのであれば、復職後に携わる業務や「何故このタイミングで?」と疑問に思われたことを、率直に現職企業に確認してはいかがでしょうか?

転職も復職も大事な意思決定です。どちらを選んでも悔いがないようにするため、限られた時間の中ですが、できる限り情報を集めしっかりと考えて決断をしてください。

(2)退職する場合/退職の意思表示を伝えるタイミングは?

最終的な結論が「他社のオファーを受ける」であれば、早めにオファーレターにサインをして提出しましょう。退職申し出のタイミングは、サインをして転職先の企業側がサイン済オファーレターを受領したのを確認してからがベストです。確認後、なるべく早く現職企業へ退職の意思をお伝えすることをお薦めします。

既に復職後の配置が決まったところでの退職申し出になりますので、他の異動にも影響が出るでしょう。社内の組織体制も関わってきますので、できる限り早めにお伝えする方が良いと思います。

 <退職の切り出し方>
できれば対面で退職意思を伝えられるとよいのですが、恐らく海外にいらっしゃるでしょうから、オンラインミーティング等でお伝えすることになるのではと思います。まず、希望部署へ配属してくれたことへのお礼を述べ、今の気持ち、退職の意思が固まったこと、その理由をお話しすることです。

申し訳ないと感じるお気持ちもわかりますが、あなたの人生(キャリア)はあなたが決めることです。他社だからこそ得られる成長と機会、そしてリスクも覚悟の上であることを誠心誠意話せば、きっとご理解いただけるでしょう。

とは言え、社費でMBA派遣されるあなたは優秀な方と思います。企業としても優秀な人材を失うことになるので、強い引き留めがあることも覚悟してください。後悔のないキャリア選択をするためには、不退転の強い気持ちを持つことです。あなたの考え、強い意志、覚悟を丁寧に、そして根気よく話し合うことで、現職企業も納得してくれるはずです。最終的には応援してくれることでしょう。

また、どんなに迫られても退職するまでは、転職先の社名は明かさない方が良いと考えます。横やりが入らないとも限りません。誠意を持ちつつ、慎重に進めることも大事です。新天地で新たなキャリアをスタートした時、御礼を込めて挨拶状でお伝えしてください。

復職するにしても、転職するにしても、どちらを選択しても悔いのない決断をしていただきたいです。詳細な状況がわからないこともあり、抽象的なご助言となりましたが参考になれば幸いです。もう少し踏み込んだご助言は、個別でさせていただきたいと思います。ぜひ遠慮なくご連絡ください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。