転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第206回
2020.06.04

【特別版】新型コロナウイルス問題下でのキャリア相談・転職マーケット状況

今回はいつものようにご相談者からの質問にお答えするのではなく、新型コロナウイルスが転職マーケットに及ぼしている影響について、転職マーケットに身を置いている小生の所感を綴りたいと思います。

Answer

5月16日(土)、弊社が毎年開催している「海外MBA合格者キャリアデザインセミナー」(その年に海外MBAに合格され、今から渡航される方を対象としたセミナー)を、初めてオンライン配信という形で開催しました。例年であれば、100名を少し超すぐらいの方が集まります。今年は参加申込みの出だしが非常に悪く、さすがにこの情勢下では相当参加者が減ってしまうのかなと個人的に考えていました。

しかし、5月に差し掛かる頃から急にお申込みが増え始め、蓋を開けてみれば130名の申込みで、そのうち120名が当日参加という、むしろ近年稀にみる大盛況となりました。この不況下、かつ世界中どこにいっても安全な場所などないときに、日本から海外に出てチャレンジされる方がこんなにたくさんいるのだと、大変うれしく思い、また大いに勇気をいただいたものです。

さて、緊急事態宣言が全国的に解除されました(※執筆日:5月30日)。小生は2月末から在宅ワークを開始しており、この生活を始めてすでに3ヵ月が経過したことになります。この3ヵ月間、取引先企業・個人のご相談者を含め、どなたとも会わずにすべて電話、メール、Skype、Zoomなどで連絡・相談を行ってきました。

在宅ワーク生活が始まってから、じつは個人の方とのご相談自体は減っていません。新型コロナの流行初期の頃は、勝手に「個人の方は転職活動を控えるだろう」と想像していたのですが、ご相談者とお話をしてみると“現職企業が不景気だから転職をしなければいけない”というような理由に限らず、積極的に活動をしたい、少なくともしっかりと情報収集をしておきたい、自分の市場価値を把握しておきたいと考える人が少なくないことがわかりました。

弊社だけでなく他のエージェントを通じても積極的に転職活動をされており、すでにオファーをもらっている、あるいは最終面接まで進んでいるというお話をご相談者から聞くこともしばしばで、転職活動に本気で取り組んでいらっしゃることが伺えました。

では、そのような積極活動中の方が、この新型コロナ下において皆さん順調に転職を果たすのかというと必ずしもYesではありません。いざオファーが提示される段になったとき、平常時であれば取れるリスクにも躊躇したり、大きなメリットよりも小さなネガティブ要因のほうが大きく映り、最後の一歩を踏み出せなかったり、といったことが起こります。さらには、ご本人が転職に前向きでもご家族からの賛同を得られずに、最後の最後で泣く泣くオファーを断念…ということもあります。実際に過去を振り返っても、リーマンショックや東日本大震災のあとはそういう残念な事例が多かったように思います。

小生は決して転職推奨派ではないのですが、それでもせっかくの良いお話を、不景気が起因する心理的バイアスのために辞退される方を見ると、やはり「大変もったいない」と感じてしまいます。

転職活動を開始するタイミング、あるいは活動中は「そもそも自分は何故このタイミングで転職活動を開始することにしたのか?」「自分は将来何をしたいのか?」を常に意識しておかれるとよいですし、志望度の高い企業からオファーが出たタイミングにおいては、「このオファーは、自分が本当にやりたいと思っているものなのか?」をしっかりと自問自答することが重要です。その上で、やりたいと思っているものであれば『リスクを飲み込む』くらいの思い切った決断も時には必要だと思います。そもそもリスクの伴わない転職など、存在しないのですから。

一方、求人企業側の状況をお伝えすると、流行初期の頃はさほど求人に影響がありませんでした。しかし、3月半ばに差し掛かるタイミングで初めて、クライアント企業から求人ストップの連絡が入りました。その後は立て続けにいくつかの企業から採用活動を見合せるとの連絡が入りましたが、現在(5月30日)はその連鎖が少し落ち着いている状態です。むしろ、いくつかの企業では採用活動を積極化しており、現時点では(少なくとも弊社では)新型コロナ問題が起きる以前と比べて求人数が“激減”ではなく“微減”くらいに留まっています。

ただし、不景気と求人数は当然ながら因果関係があるものです。不景気に突入したからといって企業はすぐにリストラをするわけではなく、できるだけ雇用を守ろうとしますが、不景気が続いて持ちこたえられなくなる数か月~1年後のタイミングでは、今よりも求人数が減っている可能性が高いのではと小生は見ています。(じつは新型コロナの問題が始まる1年以上ほど前から、近い将来、求人の全体数は減りそうだと見ていたのですが。)

その意味では、現在まさに転職活動中、もしくはこの先すぐに転職活動を開始しようと考えている方がオファーを得られたなら、それはいつもよりももっと貴重なオファーとなるかもしれません。オファーを受諾するかしないかの決断は、かなり難易度の高いものになるかもしれません。

不景気だからといってリスクばかりを見るのではなく、オファーテイクしてその企業に入社した後のポジティブな展開など、前向きな要素もぜひ想像してみていただきたいと思います。闇雲にリスクを恐れていては良い機会を逃すこともあります。冒頭お伝えした海外MBAセミナーの件でも感じたことですが、やはりポジティブな気持ちをもってチャレンジすることは、困難な状況でこそ、いっそう大切なのだと感じている今日この頃です。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

若張 正道

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント/人材紹介事業推進マネジャー

若張 正道

大学卒業後、大手食品商社の営業部門からキャリアをスタート。人材サービスに関心があったことから、2001年、アクシアム入社。新規事業であるMBAをメインとしたネットリクルーティングサービスの立ち上げに参画。無事にローンチを果たし、その後は人材紹介事業推進マネジャー 兼 エグゼクティブ・コンサルタントとして、ハイエンド人材の展望ある転職=「展職」を支援している。