転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第197回
2019.08.01

結婚・出産・育児…ワークライフバランスのとりやすい会社へ転職したい

大学を卒業後、5年ほど消費財メーカーで、マーケティングを軸にキャリアを作ってきました。近々結婚の予定があり、そう遠くない将来、出産もしたいと考えています。出産後は育児が落ち着いたら復職したい(今と変わらずに働き、キャリアアップしていきたい)と強く希望しています。

ところが現職では、出産・育児で休職することに会社が寛容ではない雰囲気で、出産を機に退職する人が多いため、結婚の前に転職を検討しています。このようなライフプラン・働き方の希望を持っている場合、転職活動にあたってどのような点に気を付けるべきでしょうか?

Answer

私がアクシアムに参画し、キャリアをご支援する仕事に携わりはじめた十数年前から比較すると、女性の転職相談の割合はどんどん多くなってきました。それに比例して、特に最近は結婚・出産・育児などのライフイベントと、キャリア構築の両立に関するご相談・ご質問をいただくこと(女性からのご相談が多いのはもちろんですが、親として主体的に育児に関わりたい男性からのご相談なども)が増えています。

個々のご状況により当然細かなアドバイスは違ってくると思いますが、まずはどなたにも共通していえる注意点を、最近の事例なども交えてお答えしたいと思います。

優秀な人材の新規確保、既存社員の流出防止、企業価値向上を狙うブランディングなどの意味もあり、特に大手企業や上場企業、一部のベンチャーを中心に社員の多様な働き方を支援する制度(法律で定められた産休・育休は当然として、それ以外のものも)が徐々にですが整備されてきました。社内に託児所を設置したり、育休取得後の在宅ワークを推奨したり、男性の育休取得を積極的に推進したりなど。さらに産休・育休取得中の給与を100%保証する企業も出てくるようになりました。女性の社会参画が遅れているといわれる日本ですが、ここ十年で随分変わってきたように感じています。

ただ気を付けなければいけないのは、表向きの制度が整っているだけでなく、それらがしっかりと運用されているか、さらにいえば「社員が率先して活用しているか」「企業が制度を活用することを本当に推奨しているか」を調べることです。

我々のようなエージェントを介して紹介された求人案件であれば、そのエージェントにご自身の希望を率直に伝え、詳細を確認する(エージェントを通じて実態を探ってもらう)ことができます。ご自身で直接応募している/しようとしている案件であれば、様々なチャネルを使って広く情報収集をする必要があります。(その企業に勤める人の声を聴ければ一番ですが、なかなか難しいかもしれません。現実には、社員・元社員による口コミサイト等も含め、インターネット上の情報をできるだけ多く集め、判断することになります。)

情報収集の際には、産休・育休関連の制度の充実度だけでなく、育休後の復職率をぜひ押さえておきましょう。さらに、もっと大きな視点では、管理職の女性比率を公表している企業をチェックするのもお薦めです。長期的に見て女性が活躍しやすいかどうか、一つの判断材料になりえます。

さて、ここで事例を一つご紹介します。Aさんという女性は、もともとそのような制度があまり整っていない企業に勤務されていました。出産前の仕事ぶりは非常に評価されていて、Aさんが結婚・出産したのを機に、会社が制度を急いで整備することになりました。そうして休職。復帰後、パートナーや会社の協力を得ながら重要なポジションを担い、昇進も果たして現在も活躍されています。結果的に、Aさんが後身にその道を切り拓いたという事例です。

専門性やマネジメント経験をなるべく早いタイミングで身に着けておくことは、誰にとってももちろん大切ですが、Aさんはまさに出産前にその2つを獲得されていました。それゆえライフイベントによって必要になった休職がキャリア上も不利にならず、復職後まもなく重要な職務を任せてもらえ、その後の昇進・昇格にマイナスの影響がなかったのですね。

冒頭から触れているとおり、制度の充実、その確認はとても重要です。しかし私は「そこを最重視して転職活動をしましょう」と申しているわけではありません。そこにばかり主眼を置いた転職活動は、どうしても「会社が何をしてくれるか」「何を与えてくれるか」という受け身の姿勢になってしまいがちです。そうではなく、ご自分の強みや特長を活かして『どのように貢献するのか』『その先で、どうなりたいか』という視点=『ご自身のキャリアをどのように作っていくか』という本質的な視点も忘れずに持っていただきたいと思います。

あなたはご出産をされた場合にも、変わらず働き続けてキャリアアップすることを希望されていらっしゃるので、なおのこと職責やその後の展開などに、より重きをおいた転職活動を推奨します。ご自分の思い描く職務に就くことができ、さらに制度面も満たす機会に出会えることを願っています。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

若張 正道

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント/人材紹介事業推進マネジャー

若張 正道

大学卒業後、大手食品商社の営業部門からキャリアをスタート。人材サービスに関心があったことから、2001年、アクシアム入社。新規事業であるMBAをメインとしたネットリクルーティングサービスの立ち上げに参画。無事にローンチを果たし、その後は人材紹介事業推進マネジャー 兼 エグゼクティブ・コンサルタントとして、ハイエンド人材の展望ある転職=「展職」を支援している。