転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第195回
2019.05.09

転職活動中に異動の話が。上司へ退職届を出す最適なタイミングとは?

現在、転職活動中の36歳です。いずれは経営者を目指しているのですが、いまの会社は組織が大きくその可能性がほぼないことや、現職でモチベーションを維持できなくなっていることから、転職を考えています。そんな中、社内で新規事業開発プロジェクトが立ち上がり、そのメンバーとしてやってみないかと上司から打診がありました。上司からは1週間、考える時間をもらっています。

元々は内定をもらってから上司へ退職届を出すつもりでいましたが、今回の異動の話を承諾してしまい、実際プロジェクトがスタートしてから退職を申し出ることは会社に大きな迷惑をかけてしまいます。そのため、まだ内定は手にしていませんが、プロジェクトへの参画が確定する前に退職届を出す方が良いのではと思いはじめています。

面接中の企業には状況を伝え、急ぎ調整をしてもらっています。しかし、最終面接は役員クラスとの予定であり、日程調整等にまだ時間がかかることも予想されます。このような状況では、いつ退職届を出すのがベストなのでしょうか? そのタイミングと、提出の際に留意すべ点についてアドバイスをお願いします。

Answer

基本的には、やはり内定を手にされてから退職届を提出することをお勧めします。
理由は大きく3つあります。

(1)退職を阻止しようとする動きも出てくる
上司の方はプロジェクトへの参加を勧めてきたのですから、きっとあなたに期待を寄せていらっしゃるのでしょう。辞めてほしくないとの思いから、強い引き留めや、場合によっては転職活動を阻止する動きが出てくるかもしれません。(過去にもそのような事例が実際にありました。)

(2)内定がない状況で辞めることにもなりかねない。空白期間を作らないほうがベター
中には採用要件として、キャリアの空白期間がないことを条件にしている企業もあります。今後必ず転職することを想定していらっしゃるなら、採用側の心証を考慮して、できるかぎり空白期間がないようにしておくべきです。

(3)退職届の取り下げには大きな負荷がかかる
転職活動中になんらか状況が変わって活動を休止せざるを得なくなり、提出した退職届を取り下げなければならない事態も起こり得ます。退職届の撤回というのは、想像以上に負荷がかかるもの。そのような事態はできるだけ避けるべきです。

とはいえ、今回のような状況では、上司の方への回答期限までに内定が出ない可能性が十分ありますね。ご自身の中で「転職することはゆるぎない決意」というのでしたら、特に(1)と(2)のリスクを覚悟のうえで退職届を提出してはいかがでしょう。

その際の留意点は(あなたの現在の職務における役割やチーム構成などの状況により細かなご助言は変わってきますが)、直接の上司やその上の役員クラスの方々が納得する、明確な退職理由を退職届と共に提示することです。単なる現職への不満ではなく、あなたが新規事業開発のプロジェクトを辞してでも退職する合理的な理由です。そこで納得感をもってもらえれば、過剰な引き留めも起こらないでしょう。

そして、上記(2)の「できるだけ空白期間を作らないこと」を念頭におき、現在選考が進んでいる会社とのご縁がなかった場合のことも想定して、並行して複数の面接を進めていくことです。退職届を提出して次のキャリアをスタートするまで、活動を戦略的に進めて行くことが重要だと考えます。

また、いずれは経営者を目指していらっしゃるとのことですが、そのためのキャリアデザインを考えて転職活動をしていらっしゃるのか、もう少し詳しくお伺いしたいところです。例えば、いったん今回面接を受けている企業への転職は断念することになりますが、打診されたプロジェクトをやり終えてから改めて転職するという選択肢もあるように思えます。

多面的かつ長期的視点に立ち、ご自身の展望の実現に向けて取り組んでいただくためにも、ぜひ一度キャリコンサルティングを受けていただくことをお勧めします。退職届を出すのは、それからでも遅くはありません。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。