転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第194回
2019.04.04

コンサル業界で20年。そろそろ事業会社に移って経営を手掛けたい。

現在44歳、MARCHクラスの大学を卒業してIT・総合系コンサルティングファーム3社で経験を積んできました。4社目となる現職では、総合系コンサルティングファームのディレクター(パートナー/マネージングディレクタークラスの一つ下の職位)を務めています。

これまでずっとコンサルティングファームでキャリアを作ってきたのですが、そろそろコンサルティング業界を離れ、事業会社に転職して経営に関わりたいと思っています。企業経営の知識は十分獲得できたつもりですし、現在1,700万円の年収を、内容によっては1,100万円程度まで下げてもよいと考えています。私にそのチャンスはありますか?

Answer

先に結論を申し上げますと、少なくとも現時点では、そう簡単ではないと思います。大学を卒業されてから20年以上、コンサルティングファームで様々なクライアント企業の経営課題を解決されてきているので、経営に関する知識は十分蓄積されているでしょう。物事を整理して解に到達するやり方も、当然体得されているとお見受けします。

それでも私がクライアント企業から「うちの経営陣を任せられる方を探してほしい」という依頼を受けたときに、あなたがいくら大幅に年収を落とす覚悟をお持ちであっても、私はまず、生の経営や事業の現場を体感されている他の方に声をかけるだろうと思います。

それでは、あなたが事業会社の役員になれる可能性はゼロなのか?と聞かれると、その答えはNOです。もちろん可能性はあります。

コンサルティングファームは将来経営者を目指すための修業の場、通過点といわれることがありますが、数年前に私はある外資系大手戦略ファームのパートナーからこんなお話を伺いました。「うちだって一つの会社なのだから、ここでパートナーとして経営をやってみたいという気概を持つ方に来ていただきたい」と。この言葉は私に深く刺さっており、今でも忘れることはありません。

それに倣うと、あなたも現職でもう一つ役職を上げて、いったんパートナー/マネージングディレクターを目指してみてはいかがでしょうか? パートナーの一人として数年間、担当チームのPL責任、評価者としてのピープルマネジメント、セールス責任という一段階重い責任を背負ってキャリアを作ることは、きっと大きな経験となるでしょう。それをレジュメに書けることで、いきなり役員想定とはいかなくても、一つ手前の執行役員などで事業会社から声がかかる可能性を大いに生み出すと思います。執行役員として入ったならば、数年踏ん張った先に取締役へのチャンスが出てきます。

今のままでも役員として声がかかる可能性はあるとは思います。しかし、より人気のある企業、ダイナミックな事業展開をしている企業(おそらくご自身が思い描いておられるような)の取締役を目指したいのならば、やはり現職でもう一つ職位を上げて、ご自身がその立ち位置になられることを私はお薦めします。

(もちろん、もしあなたのレジュメを見て採用企業やエージェントが役員想定のポジションでスカウトをかけてきた場合には、それこそチャンスありですので、まずは積極的にお話をお聞きになってみてください。)

転職には「適時」という要素が大きくかかわることがあり、時には今このタイミングで一歩踏み出したほうが良い場合もあれば、今回の私の考えのように「急がば回れ」という場合もあります。その見極めはなかなか難しいものですよね。ですから信頼できる第三者、懇意のキャリアコンサルタント等とじっくり相談され、長期的視点や多角的視点を持って、今後のキャリアを選択していただきたいと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

若張 正道

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント/人材紹介事業推進マネジャー

若張 正道

大学卒業後、大手食品商社の営業部門からキャリアをスタート。人材サービスに関心があったことから、2001年、アクシアム入社。新規事業であるMBAをメインとしたネットリクルーティングサービスの立ち上げに参画。無事にローンチを果たし、その後は人材紹介事業推進マネジャー 兼 エグゼクティブ・コンサルタントとして、ハイエンド人材の展望ある転職=「展職」を支援している。