転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第189回
2018.11.01

総合商社から初めての転職。キャリアチェンジを希望しているが、注意すべきポイントは?

現在35歳。大学卒業後、新卒から総合商社でエネルギー関連の事業投資を行っています。今後のキャリアを考えたとき、現在の会社ではあと20年同じような業務を行うことが想定されるため、前向きに仕事に取り組むことができず、転職を考えています。せっかくなのでキャリアチェンジをして、一からキャリアを作りたいと希望しています。初めての転職活動になるのですが、気をつけておいたほうがいい点があれば教えてください。

Answer

ご相談者のように、「あと20年同じことの繰り返し。10年後の自分が斜め前の席に、20年後の自分がその斜め前の席にいるように感じて前向きになれない」、と転職の相談にいらっしゃる方は少なくありません。転職の際にはキャリアチェンジをご希望されているとのことですが、その際に気をつけておかなければいけないのは、「採用側がどう感じるか」と「キャリアチェンジをして何を得ようとご自身が思っているのか」という点です。

総合商社で事業投資に携わっておられるとのこと、年収もかなり高いものと推察します。プロモーションされているのであれば、部下の管理もされているでしょう。現職で評価もされていると思います。ただ、これまでとこれからは違います。業界・職種、その両方を変えるキャリアチェンジをする場合、一般的には未経験と言われます。いくら大企業で評価をされていたとしても、です。

視点を変え、採用側の立場になって考えてみましょう。未経験の方を採用した場合、研修を行って育成し、一人前になってもらうまでは戦力としては考えづらく、コストもかかります。また、ご自身もこれまでとは勝手が違うことが多いため、ストレスを感じるかもしれません。もちろん、未経験とはいえ、初日から実績を出せる方もいらっしゃり、皆さんに当てはまるわけではないのですが、このような状況になることは想像できると思います。

採用側は、人材育成のコストを念頭に置きつつ採用を決めるわけですが、その間の給与に関してはいかがでしょうか? 戦力になりきれない間も、現職と同等(日本の労働社会においては高年収と言えるであろう程度)を求める方を採用したいと思うでしょうか?

それから給与面だけではなく、タイトルについても考えてみましょう。ご相談者がまだ部下を持った経験がないとしたら、ピープルマネジメントを未経験の方に、たとえ規模が小さい企業でも部下の付くポジションを任せるでしょうか? 部下となる方がどう思うかを考えればお分かりいただけると思います。

「転職をすると年収が下がる」という記事を目にしたことがあります。「転職=キャリアチェンジ」なのだとしたら、事実としてそうかもしれません。ただ、例えば職能を活かして業界を変える、現職でのご経験を活かせるポジションでベンチャー企業に行く、などであれば、話は変わってきます。業界や企業によっては今より高い年収を提示されることはもちろんあります。昨今の流れでは、スタートアップやベンチャー企業でも報酬面でそこまで引けを取らないオファーが出ることも多くなりました。

ただ報酬に関することは、どうしても企業によって違ってくるものですし、なかなか面接の場では率直なところを聞きにくい点ですよね。採用側が「ここまでのオファーをしてでも採用したい」と感じるかどうか、採用企業とのコミュニケーションに熟達したキャリアコンサルタントとご相談の上、転職を進めていただくことをお勧めします。

また「なぜキャリアチェンジをしたいと思ったのか」「キャリアチェンジをして何を成し遂げようと思っているのか」、これが曖昧だと、そもそもオファーに至ることが少なくなります。せっかく年収を下げてまで転職したのに、かえってやりがいを感じられなくなってしまうこともあります。ご相談者のご年齢ですと、ご家族がいらっしゃるかもしれませんし、将来のことを考え始める時期なのではないでしょうか。現職で評価されているのであれば、なおさら転職をする、キャリアチェンジをする意味を考える必要があります。

転職は合格、不合格ではありません。今ももちろん重要ですが、5年後・10年後の目論見がお互いに合致しているかを採用企業は見ています。採用側としてもただ入社してもらうのではなく、できれば長期に活躍していただきたいと思っていますので、入り口だけではなく、その方が本当に何をやりたくて転職活動をしているのかを知りたいのです。それを自社で叶えられるのか、ハッピーに仕事をしてもらえるのかを考えます。キャリアチェンジをして何をやりたいと思っているのか、やはりキャリアコンサルタントとしっかり相談をして、悔いのない転職活動をしていただければと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

伊藤 嘉浩

株式会社アクシアム 
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント

伊藤 嘉浩

2008年、アクシアムに参画。エグゼクティブ・コンサルタントとして、経営者やプロフェッショナル人材、MBA、若手・次世代ビジネスリーダーまで、幅広い年齢層へのコンサルティング、キャリア開発、紹介実績あり。アクシアム参画前は、商社にてアパレルブランドの輸入販売や海外事業開発を手掛け、新規事業の立ち上げと事業の黒字化を達成。事業計画策定、商品企画、マーケティング、リテールマネジメント、組織開発、生産管理などの経験を持つ。海外事業開発をはじめとする“実業経験を持つキャリアコンサルタント”として、個人のグローバルなキャリア、イノベーティブなキャリアの実現を使命とする。

日本キャリア開発協会認定 キャリアディベロップメントアドバイザー(CDA)