転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第187回
2018.09.06

3つのオファーを手にしたが、決め切れず…さらによいオファーを求めて転職活動を続けるべきか?

転職活動を始めて、現在3社からのオファーを手にしています。すでに転職すること自体は決意しており、会社にも退職意向を伝えるつもりです。ですが3つのオファーそれぞれが魅力的であるものの、正直なところ「これだ!」と自信をもって決断するには至らず、この3社の中で決めるのか、あるいは現職に残り納得がいくオファーをもらうまで、転職活動を続けるべきか迷っています。

私は現在31歳、グローバルで戦えるビジネスリーダーを目指しています。これまでは海外子会社の経営管理と事業開発を任され、欧米を中心に駐在もし、良い経験を積ませてもらいました。帰任してからは事業戦略部門にて日本国内の子会社の経営管理を任され、数字管理には強くなりましたが、まだ海外で事業立ち上げなどを行って飛び回りたい思いが強いです。また現職はプロダクト系の企業ですが、今後の成長を考えると、IT企業で最先端技術もキャッチしたいと思い、転職を決意しました。

いま手にしている3つのオファーは下記のような内容です。
・1つめは、グローバルメーカーのアジアの現地採用。いわゆるバックオフィス業務とM&Aのサポート。
・2つめは、日系の大手IT企業。海外営業担当として、海外赴任し欧米事業の拡大にかかわる。即赴任できるのは魅力。IT業界へ展開するチャンスなので惹かれている。しかし「営業」担当なので、その点が悩む。
・3つめは、日系のITベンチャー。海外事業開発職として、現地でオフィス立ち上げから顧客開拓まで手がけられ、職務内容としては一番魅力的。とはいえ、ベンチャー企業なので継続性の不安と年収を下げてまで経験を取りに行くか悩む。

売り手市場である今だからこそ、納得がいくまで転職活動を続けることが良いのか、あるいは現状の選択肢の中で決めることが良いのか、アドバイスをお願いします。

Answer

複数のオファーを手にされ、本当におめでとうございます。「売り手市場」と言われる昨今、求職者にとっては選択肢が多く優位な状況ではありますが、100%満足し、納得するオファーを手にできることはなかなかありません。売り手市場といえど企業の選考は厳しく、即戦力となる方を採用しようとする企業が多くみられますし、これまでは転職を考えなかった方々も市場に出てきて、魅力的なポジションはどんどん埋まってしまいます。ですから、業界・職種・企業によっては、依然として狭き門という状況です。そのような中で3つものオファーを手にされたのですから、あなたは力のある方なのでしょう。

現状のオファー内容を拝見すると、3件ともに海外の「現地」を起点にグローバルで経験を積む機会になりそうですね。結論から申し上げると、私のリコメンドは今の3つオファーの中で、今後のキャリア構築について真剣に考えることです。売り手市場下とはいえ、いま手にされているオファーに不足しているものをいつまでも探すのではなく、今のオファーで得られること、またそのリスクを受け止める冷静さが必要ではないでしょうか。

私は3つのオファー、どれを選択しても素晴らしいキャリア形成につながると思います。できればお目にかかり、詳しくお話を伺ってからご助言させていただきたいところですが、3つのオファーのPros&Cons(長所・短所)をざっくりではありますが、一緒に考えてみましょう。

(1)現地採用のバックオフィス業務

Pros:管理会計、総務、人事だけではなく、M&A戦略策定や、PMIで経験を積めるチャンスです。(例えば 統合後の会計システムや管理会計の統合、人事制度統合など統合におけるプロジェクトを推進する経験など)。
Cons:このポジションは責任の権限と裁量がどこまで持てるのでしょう? また、M&Aの話が消えてしまうと「バックオフィス」業務を深めていくことになります。

(2)海外営業

Pros:大企業ならではのリソースを活かし、新規/既存市場への新たな開拓と拡大に取り組める醍醐味は
あります。
Cons:本社の意向によりどこまでダイナミックに動けるか、営業担当としての裁量はどのくらいあるのでしょう?

(3)ベンチャーの海外事業開発

Pros:一人で組織立ち上げに関わり、経営と運営を実務で動かしますので、経営に必要な数字管理のみならず、判断力、決断力、交渉力、顧客開拓力などあらゆる点で鍛えられるでしょう。
Cons:年収が下がってのスタートになります。前提として、この企業のデューデリジェンス(株主構成やビジネスDD、友人知人などから情報を得るなど)をしましたか?

以上、ご提示いただいた情報からのみになりますが、Pros&Consを挙げました。実際には確認することはもっとあるはずです。各社のしかるべき責任者(人事/部門/ベンチャー企業なら経営者)から裁量度やキャリアパスなどの点について、しっかりとお話を聞かれることをお薦めします。

また、あなたも感じておられるように、グローバルである程度ご自身の裁量を持ち、事業を立ち上げ、動かすチャンスは3つめのオファーですが、あなたが年収よりもその機会の価値にどれだけ重きをおけるかが決断のポイントになりそうですね。

最後に、あなたはグローバルで戦えるリーダーを目指しておられるとのこと。もっと具体的には、どのようなグローバルリーダーになりたいとお考えなのでしょうか? あなたのコア・スキルは文面から推察すると、現地での営業力と子会社の数値管理などであると思います。転職活動そのものと並行して、ご自身の強みを棚卸しし、何をコア・スキルとしたいのか、今後はどういう職務で強みを重ねていきたいのか等、深堀して考えてみる必要がありそうです。

キャリアの先をイメージするのは難しいですが、各社の話を聞き、理解した上で、3つのオファーを受けた場合の3年~5年後を想像してください。それぞれの場所での、ご自分のあるべき姿をイメージしてみてください。きっとどの企業を選択しても足りないものやリスクはありますが、それを超える「ワクワク感」を感じるものを大事にしていただきたいです。それを基に、「真のグローバルリーダー」となる礎を得られるか、次の選択肢を考えてみてはいかがでしょう。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

大石 順子

株式会社アクシアム 
エグゼクティブ・コンサルタント

大石 順子

大学卒業後、日系消費財メーカーに14年間在籍。その後、マーケティング・コンサルティングファーム、人材育成コンサルティング会社にて、顧客視点のマーケティング(リサーチ&商品開発)、新規事業戦略立案や新商品開発、CS調査・課題解決に携わる。2005年、アクシアムに参画。自らの展望を叶え、現職へ「展職」を果たした。“転々とする転職ではなく展望ある転職=「展職」を”という理念のもと、約10年間、キャリアコンサルタントとしてハイエンド人材のキャリア形成をサポート。キャンディデートひとりひとりの展望を実現すべく、その思いに寄り添った丁寧かつ的確なコンサルティングを提供中。