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転職コラム”展”職相談室
キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。
“展”職相談室 第182回2018.04.05
転職活動を始めたものの…採用通知を前に踏ん切りがつきません。
ある日系製造業に勤める者です。会社は数千億円規模の上場会社で、課長職として働いているのですが、業績の低迷が続く中でこのままではいけないと転職活動を始めました。同じ会社に20年勤務してきた私には大変な活動でしたが、なんとか同じ日系製造業の某企業から採用通知を受け取ることができました。
転職先となる会社は創業家が社長を務める非上場企業で、数百億円の事業規模です。現状よりは小さい会社になりますが、事業統括を任される部長職のオファーをいただいています。報酬も現状よりもプラスになり、やりがいはありそうだと感じています。ただ…転職が未経験であることもあり、いざ実際に採用通知を目にすると、急に色々な心配が胸をよぎるようになってしまいました。
一番心配なことは、転職先の会社がオーナー経営という点ですが、転職すればきっと想定していなかったことが起こるでしょうし、様々なリスクがあると思うとどうしても決心がつきません。どうすれば覚悟をきめ、一歩を踏み出せるでしょうか?
Answer
覚悟の「覚」が意味することは、目が覚めることや迷いがなくなること。そして覚悟の「悟」が意味することは、自分と自分をとりまく世界に起きていることを理解し、現実を受け入れることだと私は解釈しています。
転職においては、自分の選択によって世界(現実)が変わります。そしてそれらはすべて、自分に責任があります。転職後に起きるであろうことをあれこれ想像しても完全に予想することはできませんが、それでもきっと、それらはその選択に起因することになります。あなたの場合、転職後に起こることの結果を恐れておられるというより、それらがご自分の選択、ご自分の責任に起因してしまうことを何より恐れているのではないですか? 今までの人生で覚悟されたこと、つまりご自分で選択したご経験はいくつありますか? その選択に後悔はありますか? 現職に残る/転職する…どちらも人生の選択であり、じつはそのどちらにも覚悟は必要です。
現在の会社に入社された20年前、覚悟があったのであれば、それを全うするのも選択です。しかし今、残る覚悟も転職する覚悟も持てないのであれば、あなたの将来にとって、それが最も後悔の残ることではないでしょうか。
覚悟をきめて、自分の仕事に前向きに取り組むこと。選択をしたなら、その選択が正しいと信じて突き進むこと。それが一番大切だと思います。想定できるリスクをご自分で調べ、考え、またご友人や専門家などの意見を聞き、考え抜いてみてください。考え抜いてもなお覚悟ができないのであれば、次は自分の力を信じられるか、ご自身の心に問うてみてください。もしかしたら、あなただけがご自分の力を信じていないのかもしれません。
過去のご相談者の中に、こんな方がおられました。ご自分の力を正しく評価・理解しておられず、「決められないから、やっぱり現職に残る」という選択をされました。残念ながらこの方は、現職にてご自身が思ったようなキャリアを歩むことはできず、大きな後悔を抱えながら定年をむかえられようとしています。
「オーナー経営」、つまりオーナー一族のワンマン経営が行われているかもしれない、という点を懸念されているようですが、まさにそこは想定して“覚悟”をもって転職しなくてはなりません。覚悟の上での転職であれば、その会社やご自身のために、立場をかけてでも改善・進言をすることができるでしょう。つまるところ、定年までの雇用の安定を最大の目的としたいのであれば、それはまた別の選択肢・キャリアデザインになります。
そうではなく、もし管理職・経営者を目指してキャリアアップすることを展望とするのであれば、外的変化要因に左右されず、リスクを乗り越えられる人材にならねばなりません。キャリア構築もビジネスも同じで、リスクを乗り越えて進める人が成功者となるのです。
「何のために、大変な葛藤をして“覚悟”をするのか」という点がご自身の中で明快になるなら、自分を信じて進むべきです。前述のとおり、残るも進むも覚悟は必要。であれば、一歩を踏み出すべきというのが私の助言です。ご自分が明快な目的をもって選んだ道で全力を尽くしたのであれば、その結果を受け入れる“覚悟”は、その時おのずと生まれているはずです。
コンサルタント
インタビュアー/担当キャリアコンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)