転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第163回
2016.09.01

結婚・出産を希望する女性。キャリアプランを考えることは無意味ですか?

大学を卒業後、ある外資系化粧品メーカーに勤務し、5年間リテールセールスを経験している者です。いまは独身ですが、ゆくゆくは仕事を続けながら結婚・出産をして家庭を持ちたいと考えています。今後のキャリアとしては、FMCG関連のマーケティング職を経て、管理職になりたいと思っています。

ですが、ある友人から「こんな時代に10年後のキャリアプランを考えても意味がない。女性は結婚・出産でガラリと状況が変わるので、いくら自分一人で先々のプランを考えたところで無駄だ」という意味のことを言われてしまいました。彼女は仕事を持つ既婚者で人生の先輩でもあるので、その言葉がとても気になっています。その友人は、キャリアと結婚や出産、家庭を持つことが両立しないとまでは言っていないのですが…彼女の言うとおり、結婚・出産を希望する女性が先々のキャリアプランを考えることは、あまり意味がないのでしょうか?

Answer

ご友人の発言は、たしかに気になりますね。じつは最近、男性からも同じようなご相談を受けることがあります。意外ですか? 結婚や出産とキャリアの問題を、女性だけのものとしていない男性は、着実に増えているように感じます。このような問題を、自分とパートナーの両方の課題だと考える男性も多くいらっしゃいますので、まずは少し気を楽に持っていただければと思います。

今回のご質問への回答ですが、ずばり「キャリアプランを考えることは、決して無意味ではない」です。結婚、出産は個人の人生にとって、とても大事なこと。ただ、まだ独身のあなたからみれば、どうなるかわからないという不安要素の方が大きいのかもしれません。しかしこれらの事柄については、あなたご自身が選択し、決定できる部分が大きいですよね。ですからご自分が望む家庭生活、人生をイメージし、それを実現するために「キャリアをどう創っていくか」と考えることは、とても大切だと思います。

逆に今後のキャリアについてどうするか全く考えず、行き当たりばったりで目の前の仕事を選択していると、ライフイベントに伴う状況の変化によっては、将来職を失ってしまうこともあり得ます。さらに言えば、社会の変化が短期間で起こるこれからの時代には、そもそもライフイベント云々に関係なく、時代の変化にアンテナを張りながら先々のキャリアの選択肢を考えておくことが求められます。ご自身の年齢や起こりうるライフイベントを連動させてキャリアプランを考えながら、それに沿って経験や実績を重ねていくこと。それこそがご自身のキャリアを守り、また将来家庭を支える力になるでしょう。

では、もう少し具体的に考えてみましょう。例えば31歳で結婚し、会社を辞めたと仮定します。いったん家庭に入り、出産を経て35歳でまた復帰をしたいと思ったら、どうすればいいでしょうか? 31歳までにビジネス上で何を成し遂げたのか? 結婚後、何かスキルを伸ばしていたか? 35歳から復帰できたとして実際に何をしたいと希望するか? そのためにどんな経験やスキルが必要になる(採用企業から求められている)のか? そもそも希望する企業・職種で35歳が募集対象になっているか? など、先に考えて準備している人とそうでない人とでは、大きな差がつくことは自明の理です。

自分の強みや社会のニーズについて考えることがキャリアプランの基本ですから、そもそも、それを放棄していた人材(女性も男性も)に、採用企業が大切な仕事を任せるはずがありません。

今後役立つマーケティングスキル・知識を獲得するにはどうすればいいか、と常に考えて行動していけば、きっと結婚や出産を経てもキャリアの道は拓くでしょう。実際、多くの女性が確固たるキャリアと家庭の両方を得ています。もちろん、そこに至るには大変な苦労もあるはずです。しかし、いま、ご自身の望む人生の形やキャリアと向き合うことをしなければ、将来その苦労がさらに増大することにもなりかねません。

最後に、その助言を下さったご友人以外にも、結婚あるいは出産を経てキャリアを継続している女性にぜひ相談してみてください。きっと異なる助言も多いと思いますよ。できれば、あなたが現在希望されているマーケティング職や管理職に就き、しっかりとキャリアを構築されている女性とお話しされることをお勧めします。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)