転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第126回
2013.08.01

新卒向けキャリアパス:アクシアムからの提案

今、大学院で理系の修士課程に在籍中です。このまま制御工学などの博士課程に進むか、グローバルなビジネスができる人間になろうか、NPOで海外にいこうか、英語力をつけるために語学学校に留学しようか等と考えていたところ、父から「アクシアムで相談してもらえ」と言われました。HPを見ると、アクシアムは職歴のある社会人へのコンサルティングと職業紹介をされているとのことですが、学生の私にメールでもいいので、何かヒントをもらえないでしょうか。

Answer

アクシアムの事をご存知の経営者の方や、コンサルタントの方がご親族においでで、今回の方と同じくそのご子息の学生の方からご相談を受ける事はよくあります。これから社会に出るみなさんに少しでも参考になればと思いますが、一番大事な助言は「単なるデータとなるような人材にはならないでほしい」ということです。

大学や学部、学位、資格、年齢に加え、社会に出たら、会社や役職や年収など、いろいろな情報が個人に属する情報としてついてきます。社会や会社組織で、5年に一度程のサイクルで大きな変化やハプニングが起こる時代において、社会にも会社組織にも依存できないことは言うまでもありません。

さらに、ICTでビジネスが変わり、ソーシャルメディアが広がってきた今の社会では、より個人が大量の個人データの中で埋もれてしまうため、大量のデータの中から検索して見つけてもらうにはどうすればよいのか、そんなことも考えなければならない時代が到来しています。

それでは、そんな時代を迎え、個人として、いきいきとした人生、職業経歴を積むにはどうすればよいのかについて、大きな視点と具体的な助言に分けてお答します。

【大きな視点から】


労働市場における資産となれるか?
成熟資本主義の中で、人的資本となれるか?
それとも、どちらにもなれないか?


私達は今、次の時代に向かって価値観・社会構造・技術等を変えていく転換期にいます。この流れのなかで、ヒューマンリソースマネジメント(人的資源管理)やヒューマンキャピタルマネジメント(人的資本管理)といった経営理念が企業経営に求められています。同時に、個人にも次の時代に向かって自分のキャリアをデザインし、マネジメントしていく時代が到来しています。

「自分の人生」という限られた時間の可能性・重要性を見つめてください。今までの、 親・友人・社会などの評価や金銭的報酬のみを価値基準とする人生設計がつまらなく見えてきませんか?

確かに自分の使命や展望を見出し、目標・目的を掲げて自分だけのキャリアを創ることは難しいことです。しかし、そのぶん自分の展望が実現した時、多くの人に喜びを提供できた時には自分だけの喜びを得るよりも、さらに大きな喜びにつながります。

みんな「会社や社会の財産・人財」「労働市場の商品」などという論議だけでは、疑問を感じるでしょう。本当の意味でキャリアメイクに成功する、ということは人生の最後に自分の歩んできた道(Career path)に満足できるということです。おじいさんおばあさんになっても「楽しかったな、やりたいことをやってきたな、それが今の自分を作りあげたんだな」と思えるような人生を送りたいと思いませんか?人生をやり直すこと、自分をごまかすことは出来ません。そのためにも若いうちから自分に(お金だけでなく時間や努力も)投資しましょう。今しか出来ないこと、自分に本当に必要なこと、やりたいことを見つけてやってみることをお勧めします。

20世紀の日本をとりまく「日本的・官僚主義的 人事部」が生み出してきた「キャリアトラック」「組織と社会の疲労」は個人に充分なキャリア形成を許しませんでした。それが以下のような問題を生み出してきたのです。

  1. 大学に入学する時の間違い
  2. 就職の時の間違い
  3. 転職の時の間違い

国や会社に依存し、常識をバイブルに会社人間が社会を支えた時代。実は今まで日本で「キャリア」と呼ばれてきたものは「キャリアアトラック」(すでに用意された道)であり、「選んだ」と錯覚している道はキャリアトラックに乗るための「選ばれよう」という心理に支配された道ではなかったでしょうか。小さい頃から、「がんばってね」という声に囲まれた結果「”頑張った”の基準は?」→「”頑張ったね”といわれる先例を見習う」が大事になってしまい、「何がしたいのか」が言えなかったのです。 確かにこんな環境の中でも興味をもって没頭できる「何か」を持てた人もいます。しかし、ほとんどの人が、この問題点に気付くのは、「会社人間の一員」になってしまった後で、なかなか一人の独立した人間としての人生設計ができません。

現在、学生と社会の間には大きな壁があります。物理的な壁ではなく、バウンダリー(境界線)と呼ばれる社会の意識・慣習です。

次の時代に必要な価値観、キャリア観、思想は社会に出る前の若者=みなさんが一番感じていることでしょう。みなさんは既に自他双方の利益・満足拡大への意欲や地球環境への問題意識、ネット利用の日常化などの次の時代に向かう新しい価値観を構築しはじめています。

日本での最近のインターンシップ(企業研修)浸透の背景にも、学生の主体的な活動があります。飛び級などの制度も導入され、社会人大学生・大学院生の増加など、日本の高等教育のあり方も急速に変わってきており、まさに転換期にあるのです。

こうしたタイミングだからこそ、学生が新しい価値観を作っていけるのだと思いませんか?

概念的なキャリアを現実社会で実践するには、自分自身が、お金以上に大切な「人生という資本への投資家/資本家」として大学・大学院在学中に時間と能力を投資し、社会に出る前に「自分という資本を拡大するのだ」という自覚を持って活動しましょう。

私達は消費者として「学生生活」という名のモラトリアム(社会的義務の遂行の猶予期間)や、学歴を買うために進学するのではありません。努力と能力の資本投下の後に学歴という資産が得られるのです。しかし資産は目減りします。社会に出て4~5年もすれば、この資産価値は無くなってしまいます。今までのように学歴が定年までの財産というわけにはいきません。消費者として学生生活を送ってしまうと、会社選びやキャリア選びも消費者の立場に立ってしまいがちです。そこに問題があるのだと思います。

「学校卒業後、30歳までに学歴・金銭的報酬以外の新たな資産が獲得できるか?」が問われる時代がやってきたのです。さらに35歳までに資産を使って、成果を出せることを証明していく必要もあります。人生の時間は有限なので、若い時の時間を大事に使いましょう。

35歳までは他人も自分に投資をしてくれますが、35歳以上では他人は投資をしてくれません。

人間に対する投資というのは、3種類あり、1つ目は教育を与えてくれること、2つ目は機会を与えて成長させてくれること。3つ目はノウハウを与えてくれることです。どれもお金がかかる場合もあれば、お金はかからないこともあります。

人生の資本家、人生の経営者、社会の生産者として意志決定に成功した人だけが、 これからのポスト資本主義の中で、充実した人生を歩む時代がやってきます。予期せぬ出来事が起ったり、自分だけではどうにもならない現実をつきつけられたりする機会も多いでしょう。急激で厳しい外的変化にも強い、そんなキャリアをみなさんに創っていただきたいですね。


【具体的な助言】

大学、大学院の間に何をすればいいのか、何をやっても為になると言う人もいますし、いろいろな成功者や大人が様々な助言をしてくれると思いますが、アクシアム流にお答えします。

  • インターンシップの機会を探して経験する
  • 英語を修得する(TOEFLが好ましい)
  • できるだけ読書
  • 友人と遊ぶ 世界や日本がどうなるのか議論できる友達をつくる
  • 海外旅行をする
  • 趣味に走る
  • 何かに専念する(スポーツでも武道でも文化活動でもかまいません)
  • 自分を3分でまとめてアピールして覚えてもらえるようにする

やりたいことが見つからなくても、これらのことを、一つでも本気でやっていれば、やりたいことが見つかるはずです。28歳まで間違った選択をしていても構いません。でもいつまでもやりたいことも見つからず、やれることもなくという状態では、将来自分が困ります。

「とりあえず博士号をとろう」とうのはよくある選択ですが、選択しているように見えて、「とりあえず」というのは、本質的な問いを後回しにしてしまうだけで、選択していないことになります。博士号をとるべきか、とらざるべきか、とるならば何のために取るのか、しっかり考え抜きましょう。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)