転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第119回
2012.12.06

直接応募と紹介会社経由の応募(スカウト)、どちらが良いですか?

今回、アクシアムから紹介された転職先候補の会社の常務の方は、以前の会社の上司で、今も懇意にしてもらっています。そのため、アクシアムから紹介してもらうか、あるいはその常務さんに直接コンタクトして応募すべきか迷っているのですが、こういう場合、どうすべきでしょうか?

20代の頃の転職とは異なり、今は既に40歳で、マネジメントポジションを想定してご紹介をいただいているだけに、何事も慎重に進めたいと思いご相談しております。

Answer

基本的には、過去の直接の上司で今も懇意にしているのであれば、直接応募されるのが良いでしょう。ただし、人事は繊細であり、何事も応対辞令が大事になってきます。いろいろなケースが過去にもありましたので、それらを参考にして決めていただければ幸いです。アクシアム経由で紹介させていただき採用となればアクシアムの利益となりますが、決して利益を出したいから申し上げているわけではないことを、予め申し上げておきます。他意なく、本心から回答します。

実際にあった過去のケースです。AからDまで4つのパターンをご紹介しておきます。

  • ケースA

    ある会社の社長から以下のような依頼がありました。「大学の後輩が直接応募したいと私に言ってきた。優秀なやつなので採用したいが、私から人事を通すと社長が恣意的に採用したということになるってしまいそれは本意ではないし、実際に私から人事に通せば、私への配慮もあって、審査も甘くなり採用してしまうだろう。私の直下で採用するわけではないので、正規のルートを通して審査してやりたい。そのほうが彼のためでもある。

    そこで私が良く知っているアクシアムを通して、紹介、推薦してもらうように彼にアクシアムを薦めてある。アクシアムで審査して、現在当社が募集しているポジションにNGなら、率直に彼にNGとなる理由とともに説明してやってほしい。可能性があるのであれば、推薦してやってくれ。審査に通るかどうかは彼の能力次第である。正規の審査を通過してきたならば、正当に私が判断して採用してやりたい。」その後、弊社経由で紹介を行い、正式に採用されました。

  • ケースB

    尊敬していた昔の上司が役員をしている会社に、その元上司を頼りレジュメを託して応募したところ、元上司のインタビューの前のマネージャークラスの方とのインタビューの結果、NGとなった。後で、その会社にいる別の知り合いに聞いてみたところ、私が懇意にしていたと思っていただけで、実際にはその元上司からは評価されていなかった。形式的なインタビューが行われただけであった。結果的にはその会社に行かなくて良かったが、何か心の中に、ぽっかり穴が開いてしまった。

  • ケースC

    昔の上司がいる会社に、アクシアム経由で紹介してもらったが、インタビュー段階で元の上司にコンタクトし、バックアップしてもらうことができた。残念ながら上司の部門ではなく、別の部門での採用となったが、昔の上司も大変喜んでくれた。

  • ケースD

    昔の上司経由でオファーをいただくことができたが、結果的にその他の会社に入社することになり、その上司には大変な迷惑をかけてしまった。軽く考えていたが、その上司からはぜひ入社してくれと頼まれていたが、かなり無理をさせてしまったし、最後は顔に泥を塗ってしまった。結果的にその昔の上司とは関係性が悪くなってしまった。応募する限りはその会社にお世話になるぐらいの腹積もりをもっておくべきだった。

 

いかがですか?

直接応募、知り合い経由の応募、さらにどのサーチ会社を選ぶかによっても結果が異なります。サーチ会社と紹介先企業の間のパイプラインの強弱もありますし、知り合いの社内での地位や状況なども、採否に関係してきます。加えて他の候補者も出来る限り縁故を使ってきます。しかしながら、縁故は、それが効果的な場合もあればマイナスになることもあり、非常に複雑です。

従い、お勧めのプランとしては、以下のものです。

昔の上司の方へご連絡いただき、

「アクシアムと言う会社からXと言うポジションで紹介を受けていて応募しようと思うが、その前にご相談したほうが良いと思い、連絡をいれさせていただきました。その会社経由で採用となればコストがかかることになるし、そうかといって貴方(上司)にお願いすると恣意性のある採用をしたということでご迷惑となることも考えられます。

また、複数企業に応募している段階で、まだオファーをいただけたとしても入社を決心しているわけではないので、万が一、オファーのお断りをするのも申し訳ないように思っています。アクシアム経由で応募する際にも、貴方が既知であることを述べさせていただいた上で、ご紹介してもらおうと思いますが、いかがでしょうか?サーチ会社も事前に相談することを奨励してくれましたし、また相談の上で、直接応募になった場合は、紹介を断念すると言ってくれています。あくまでの貴方のご助言、ご意向にそって進めたいと思います。」

と、状況を伝えて、ご依頼とご助言を仰ぐ形です。

あくまでも慎重に、元上司との人間関係を継続させることを最優先にされると良いでしょう。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)