転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第113回
2012.06.07

欧州での勤務を続けたいのですが、会社から帰国を命じられてしまいました。

現在42歳、バブル崩壊以後の1992年に大学を卒業。今年で社会人になってちょうど20年が経ちました。そもそも海外育ちなので英語力はバイリンガルレベルだと思います。20代から海外勤務を経験し、30代に企業派遣生として米国MBA留学の経験もあります。今までのキャリアは順調で、現在は欧州にて副社長職として500名程度の販売支社の実質的なCFOとして勤務しています。

できればこのまま欧州で仕事を続けたいのですが、急に会社から帰国を命じられ、帰国までは2か月しか猶予がありません。会社は認めてくれないため、転職を考えざるを得なくなってしまいました。今までまったく転職するつもりがなく準備も調査もしていなかったのですが、どうすればいいのでしょうか?

Answer

財務、会計、人事、総務、経営管理、コントロールのすべての仕事が英語で遂行可能であり、且つ、欧州や米国で数年以上にわたって、外国人の部下や同僚とまったく問題なく仕事をしてこられたという前提でお答えします。

日本企業では辞令が最優先されるため、勤務地、職務内容については辞令を遵守せざるを得ず、帰国をしなければいけない状況になることは十分に予見可能だったはずなのではないでしょうか。厳しい言い方になってしまいますが、ご自分の人生をコントロールしていなかったということであり、本気で欧州での勤務を続けたかったのであれば、今までにしっかりと準備をすべきだったと思います。少なくとも半年程度は余裕をもって、それなりの準備、調査、活動はしておきたかったところです。もしも、帰国を拒否し、欧州で次のキャリアを見つけたいと思うのであれば、普通なら3ヶ月~半年程度かかるような活動を今からすぐに行い、引き継ぎ等も考慮すると、後1か月以内で見つけない限り、辞令に従って帰国するか、離職してフリーとなって探すかから選択するしかありません。現地で次のキャリアを探す方法については後述しますが、その前に、辞令に従う場合と、離職して探す場合について考えてみましょう。

辞令に従い、帰国をしてから転職を考えるのであれば、今から活動を開始し、帰国した後も引き続き、欧州現地企業と面談継続することもできますし、日本企業に一度就職してその会社で改めて欧州勤務が可能な企業を探すことも出来ると思いますが、すぐに欧州に横滑りで勤務できるというケースは、あまり期待できません。ただ、離職してフリーになって探すよりはリスクは低く、お勧めです。次に現地でフリーになって就職活動する場合ですが、以前ほどではないにせよ、オファーを得るだけでも大変なので、往々にして好ましくないキャリアながら焦って選ばざるを得ないことも多く、不本意ながら長続きせず、結果的には短期でまたフリーになってしまうようなケースが数多く見られる傾向にあります。

さて、現地で次のキャリアを探す方法についてですが、以下に過去、現地法人に勤務しながら、次のキャリアを見つけることができた人達のパターンを列挙しますのでご参考になさってください。他にも方法はあるかもしれませんが、筆者が聞いたことのあるパターンを挙げておきます。

  1. 現地での友人知人経由にて
  2. 大学やMBA現地同窓生会にて
  3. 日本人ビジネスマンのソサイエティーの中で調べる
  4. 取引相手などビジネス上の関係から
  5. 現地サーチファーム数社に登録、相談してv対日投資、進出などを考えている企業に直接応募した
  6. 大学、大学院の教授に相談した
  7. UNなど世界的なパブリックセクター
  8. NPO
  9. 起業

また、次のキャリアをお考えになる場合に、業務のすべてを英語で遂行でき、外国人の同僚や部下との業務に問題がないというスキルや実績面での問題はなくても、現実問題として就労VISAや永住権の有無、年収を下げられるのかどうか、などについても考慮していく必要がありますのでご留意ください。そして、本当に欧州で今後10年、さらに20年と長期に勤務したいのであれば、今までのように「欧州に勤務したい。」だけではなく、もっとしっかりとした個人としてのキャリア設計、人生の計画がなければ難しいと思います。副社長、実質的なCFOとしてご活躍になられてきた貴殿であれば、このようなことはないと思いたいのですが、今まで欧州で勤務をするという希望がかなっていたのは、ご自身でキャリアを創ってきた、コントロールしてきたのではなく、たまたま会社が派遣してくれていただけ、幸運だっただけということもあり得るからです。会社から派遣された海外勤務は、時として、国際競争を勝ち上がってきた、マーケットに自分をさらしてきたというような、競争力をそなえた個人としてのキャリアを創ってきたとは言い切れないこともあるということです。実際に就職活動をしてみると、ご自身のキャリアが自分で創ってきたものなのか、それとも単なる幸運だっただけなのかご理解いただけるのではないでしょうか。

結論として、転職活動をすぐに開始し、長期的にみても最善と思われる次のステップが1か月以内に見つけることができれば、それが最も好ましいが、もし見つけられなければ、辞令に従って日本に帰国し、転職活動を継続することをお勧めします。くれぐれもフリーになるなど、焦った選択は避けたいものです。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)