転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第106回
2011.10.06

これからMBA留学します。インターンシップの探し方と注意点をおしえてください。

欧州の2年生ビジネススクールにこれから留学します。これまで機械メーカーに勤務し、海外事業開発などに従事していましたが、卒業後は戦略コンサルタントあるいはベンチャー企業などで、グローバルビジネスに携わり、将来的には、グローバルな経営者になりたいと考えています。

来年夏はいずれかの企業でインターンシップをしたいと思いますが、先輩MBAからインターン探しは大変だという話を聞いています。いったい、どのようにしてインターンシップを探せばよいのでしょうか?留学前、留学中にすべきこと、また、注意すべき点がありましたら教えてください。

Answer

さっそくですが、ここではインターンシップの探し方や留意点についてお答えしたいと思います。

他にも弊社サイトのMBAのコーナーにもいろいろな周辺情報、コンテンツを掲載していますのでぜひご参照ください。また、弊社開催のMBA合格者や留学中の方を対象としたキャリアデザインセミナーなどにも参加いただければ、MBAの方の基本的なキャリアデザイン、就職活動のプランなど参考にしていただけると思います。

 

【インターンシップの位置づけと狙い -卒業後のフルタイムの採用へむけて- 】

もともと、イギリスでは1970年代から「サンドウィッチ」、アメリカでは1980年代半ばから「インターンシップ」として、教育機関と産業が人材育成のために協力しようという社会的なニーズを背景に始められました仕組みです。現在では、企業側の採用プロセスという色合いが強く、採用側が学生を見極める場となっていると言えます。
一方、学生側からすると、インターンシップを通じて希望の会社や業界で内定をもらうという狙いに加え、その仕事が本当に思っていたとおりの仕事なのかどうか、自分がその会社や業界でやっていけるのかどうか、実際にその仕事を卒業後やって成果がだせそうなのか、やりがいを感じられるのかなどを理解する機会であり、重要な意義となっています。

だからこそ、「とりあえず複数採用しているコンサルティングファームのインターンに応募」というようなことではなく、しっかりと考えて応募することが重要になります。

 

【応募の際の留意点 -策より誠実さ- 】

海外では、卒業後就職したい第一希望の企業と、そうではない第二希望のインターン先を分けてアプローチするほうが良いという意見も聞かれます。A社が第一希望なら第二希望のB社からインターンをアプローチして、インタビュー慣れしてから、A社にアプローチするという考え方です。さらに、B社でインターンのオファーを貰ったら、A社にはインターンは応募せず、インターンはそのままB社で実施。そこで卒業後のフルタイムの内定・オファーをもらってから、それを担保しつつA社に卒業後のフルタイムに応募。「御社の競合であるB社からオファーを貰ったが、私は御社を優先しているのでぜひ採用してくれ」という売り込みをするという発想に至ります。

この考えにはあまり賛同できませんし、そんなにうまくいかないと思います。
本当に力があれば、A社、B社同時に応募しても、どちらからもオファーが貰えるので、駆け引きする必要がありません。また、日本のインターン事情のように競争が激しい場合や、応募者の力(能力・スキル)が各社の採用基準のボーダーラインである場合には、駆け引きしても見透かされるだけで評価されないということになりかねません。

インターンシップはフルタイムの面接の予行演習ではありませんし、第一希望の会社に自分を売り込むための材料ではないのです。そもそも、卒業後その会社に入社したいという気持ちがなければ、競争にも勝てないでしょう。採用側も、大抵の場合はMBA保有者(=同じ経験をしてきた方々)なので、応募者の心理や行動はお見通しと考えてもらうほうが良いと思います。

第一希望と第二希望の会社の応募の準備に格差をつけていると痛い目にあいます。どちらにも最善の準備を行うこと、真摯に誠意をもって優劣をつけず応募されることが必須です。面談の順番についても、どちらを先にしたほうが有利、不利はありません。結局、へんな策を講じるより、誠実にアプローチした人が評価されるのです。

 

【インターンへの応募とフルタイムへの応募 -チャンスは2回ある?- 】

また、インターンシップに応募してNGとなったり、逆にインターンシップのオファーを断ったりした場合、後に卒業後のフルタイムの仕事に再度応募できるかどうかという質問もよくいただきます。 これはケースバイケースです。NG理由や辞退の理由によってそれぞれ違います。

例えば、多数の企業が参加するジョブフェアなどの会場でインターンに応募したとします。その企業のブースを訪問し、レジメを渡して人事の方が簡単に10分程度インタビューしてくれたとしましょう。後日、残念ながらインターンとしてはNGという連絡をもらったが明解な理由は述べられていなかったとすれば、再度フルタイムとして応募することは可能ですし、応募してみないとわかりません。

ただし、インターンシップの選考で適正試験、面接・インタビューを受けた結果にNGだった場合は、その時点で適性なしと判断されていることもありますので、後日フルタイムとして応募しても難しいと言えます。その際、たいていの場合NGの理由を明らかにしてくれませんが、特に投資銀行や戦略コンサルの多くは、インターンでNGならフルタイムでもNGということが多いようです。

ところが事業会社の場合には、人事の判断と部門の判断、あるいはインタビューした人の価値観、あるいは事業会社のその時の戦略や求人の状況によって、インタビュー結果が異なります。またインターンではNGだが、卒業時、マーケティングの具体的な求人ポジションでの採用なら採用を検討、オファーすることができるというケースも多数あります。実際、「インターンシップのオファーはできなかったが、1年後、求人の状況次第ではフルタイムの採用がありえるのでぜひまた応募して欲しい」と言われる方もいます。

もちろん、事業会社でも「人物的に問題あり」「基本的な能力不足、経験不足」などという根本的な理由でNGとなっている場合は、フルタイムであっても、違うポジションであっても再考はいただけないでしょう。

やはり、「インターンであっても、フルタイムに応募するのと同様の準備は不可欠」であると言えます。「インターンがダメでももう一度チャンスがあるだろう」といっていい加減な準備で応募していたのでは、フルタイムの機会まで自分で減らしてしまうことになります。

 

【インターンシップ 受け入れ企業の探し方と応募】

(1)現地と日本の両方で探す

アメリカでは、1980年代からビジネス社会全体がMBA採用やインターン採用を活発に行ってきましたので、日本や欧州にくらべMBAの学生が現地(アメリカ)でのインターンシップの機会を得ることは比較的容易だと言えます。大企業、中小企業、そして何よりも数多くのベンチャー企業がMBAインターンを受け入れていて、その数は4桁にのぼります。
一方、欧州はEUとなってからMBA需要、ビジネススクールの隆盛が始まりましたので、まだアメリカほどインターンシップ受け入れ企業は多くありません。日本となるとさらに少なくなり、定期的に受け入れている企業は、一部の外資系企業など50社程度しかないでしょう。

日本はベンチャー企業が少ないこと、大企業がMBA採用に積極的ではないこと、インターン制度の導入が15年前から始まったばかりで、まだ歴史が浅いことが要因と考えられます。

こんな状況ですから、もし日本国内だけにしぼってインターンシップに応募しようとすると、だいぶ苦労するかもしれません。 日本人で、アメリカ、欧州、日本とすべての地域にMBA留学・就学している方を合算すると、(実際に何名のMBAがいるのか定かではありませんが、)弊社での調査結果(*1)から推測しても数百名程度、おそらく500名以上の学生がいるはずです。一方、日本国内で定期的にMBAをインターンで受け入れる企業は投資銀行、戦略コンサルティングファーム、一部の外資系/日系企業などにかぎられ、合計は50社程度です。各社1名から5名程度インターン生採用すると仮定すると、総数としては50名から250名程度が例年の受け入れ枠数となります。そこに500名以上の人が応募することになり、競争率は2倍から10倍となる計算です。これはかなりの倍率と言えます。日本に限って応募していたのでは、インターンの機会を得られない可能性がかなり高くなってしまうのです。

*1:アクシアムホームページ「MBA留学生数の推移’99-’12」
http://www.axiom.co.jp/mba/tableを参照

そのような背景を踏まえて、留学先の欧州(アメリカでもアジアでも同様)の近くでインターンを探すことと、日本で探すことの両方を想定して活動することをお奨めします。

 

(2)留学前のアクション

夏の渡航前(留学前)に、定期的にMBAフルタイムの採用やインターン採用を行っている(数少ない)企業をリストアップし、インターン募集について問い合わせを行い、募集要項をしっかり聞き出しましょう。留学先の先輩MBAなどがいれば、先輩訪問を行い、意見交換なども行っておきましょう。先輩からの助言は参考になると思います。
そしてインターン募集の正式なプロセスが始まればそれにあわせ応募しましょう。学校指定がある企業などについてもそれで判明するので、自分の留学先が指定校ならそのまま応募すればいいと思いますし、指定校に入っていないことがわかれば、(採用となる可能性はほとんどないので)そうそうに応募先リストからその企業をはずしましょう。最近は、夏の間に、企業説明会、レセプションなどが開催されますので、そのような情報を同期MBAや先輩、留学準備校、アクシアムのジョブフェアなどで入手し、参加しましょう。

また海外に出発してしまってからでは動きにくいので、下記も参考に、日本にいるうちにできる限りの情報は収集しておくことをお勧めします。

 

(3)留学後の具体的なアクション

次のようなアクションプランを実行してはいかがでしょうか。

A) 先輩、教授をアタック

海外のMBAであれば、先輩や教授経由でインターンを探すのはよくある手段です。過去にもこの方法でチャンスを得た人がいます。欧州、米国MBAはこのケースが非常によく見受けられます。国内MBAの場合は先輩が少なく、教授もインターン先企業のネットワークが少ないかもしれませんが、アタックしてみる価値はあります。

B) 定期採用の企業に打診

正社員としてMBAを定期募集している企業に、インターン募集の有無を問い合わせてみましょう。

C) 定期採用以外の企業にもアタック

過去に採用実績のある企業へアタックをしてみましょう。企業から大学院へ直接募集に来なくても、アプローチする価値はあると思います。ベンチャー企業などは、自分からインターンを申し出たりフルタイムの応募を申し出たりすれば、インタビューしてくれる可能性は高いと言えます。 欧州ビジネススクールなら、米国の戦略コンサルや投資銀行、米国ビジネススクールなら欧州の戦略コンサルや投資銀行などにアプローチするという方法があります。会社からリクルーターをビジネススクールに送らないことも多く、自分から積極的にアプローチしていきましょう。

D) インターン紹介団体

日本では*2ETICというインターンの斡旋をしてくれるNPOがあります。NPO団体やベンチャー企業でのインターンシップのチャンスが得られる場合があります。 新卒、第二新卒といった職歴がない方々は、特にこのインターン経験を通じ、キャリアに対する価値観を形成したり、職能を得たり、ネットワークが広がったり…プラスになることが多いと言えます。まさに自ら正社員(キャリア)となれる機会を作り出すことができるチャンスですので、積極的にトライしましょう。 欧州やアメリカでもインターンシップ紹介団体がありますが、これらの多くは、学生側がお金を払うという商業ベースのものなので、注意してください。インターンといっても、事務職や体験型というだけで、MBA向けのビジネススキルや見識を向上させるようなものではなく、逆に、そのような経験をしていることが、フルタイムの審査の際に、マイナスになるようなインターンもあります。たとえば、リゾートの受付とか、通訳とか、日本企業の現地法人の事務処理とか、バイト程度の経験はマイナスどころか厳禁です。
*2:ETIC :http://www.etic.or.jp/

E) インターン受け入れ実績企業リストの活用

2009年の調査ですが、過去受け入れた実績のある企業を参考にアタックしてみましょう。
http://www.axiom.co.jp/mba/internship/

F) 社会貢献活動

インターンとは少し異なるかもしれませんが、NPO、社会貢献、UN(国際連合)などの非営利団体での、インターンシップも盛んになってきました。アフリカや発展途上国で、マイクロビジネスに挑戦するとか、財務支援、事業開発、などの経験を積むことは、大きな意味でプラスになると思います。残念ながら日本の大手企業ではこの経験をかならずしも加点はしてくれませんが、海外の企業は評価してくれます。新しい流れといえますので、プロボノやNPOでの経験が、ビジネススキルの向上やしっかりとした価値観の醸成に繋がるものであることは確かなので筆者は賛成の立場をとります。

 

以上が、インターンシップの探し方とその注意点になります。 前述のとおり、インターンシップは極めて重要です。実りあるインターンシップとなることをお祈りしております。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)