転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第102回
2011.07.02

最終意思決定の段階で迷っているが、直感に従うべきでしょうか?

現在38歳の戦略コンサルティングファームに勤めているものです。現職の前には日系大手企業、外資系大手企業の両方の経験があります。事業会社に転職しようといくつかインタビューを受けたところ、幸いにも外資系大手企業とベンチャー企業からそれぞれオファーをもらいました。ただ、どちらにするか、最終意志決定の段階で迷っています。

外資系大手企業のオファーはセールスのヘッドで、40名程度の部下とPL責任を持つというものです。ベンチャー企業のオファーは経営企画室長で、部下は持たないのですが、社長とともに全社戦略立案を担うことになります。年収は、前者の方が当然高いのですが、後者はストックオプションが付与されるので、年収は全く判断基準にしていません。また、どちらも自分が得意としている領域で、成果を出せる自信はあります。そして、今回お伺いしたいのは、曖昧な自分の「直感」についてです。

私が尊敬する経営者の方に質問してみたところ、「直感に従え」と言われました。自分の心に聞いてみて、「これだ」と思う方が良い、「これは危ない」「何か気になる」という方は選択すべきではないという助言でした。

しかし、前職の外資系企業に転職する時にも、「これだ」と直感がありましたが、結果はうまくいきませんでした。今回も、ベンチャー企業のオファーに対して「これだ」と思っているのですが、一方で自分の直感に従ってまた失敗するのではないかと危惧しており、自分の直感を信じられなくなっています。何かご助言があれば、お願いします。

Answer

極めて重要なご質問をいただき、回答者冥利につきます。

仕事柄、経営者やプロフェッショナルとして成功しておられる方にキャリアについて質問をさせていただくことがよくあります。「どうしてその機会にめぐり合ったか?」、「どうしてその時にその機会を選択したのか?」と伺ってみると、ほとんどの方が「たまたま自分はこうしてきたから」とか、「こうしたかったから、これを取らずこちらをテイクした」と回答される方が多いです。

恐らく逡巡もされたでしょうし、熟考した上での決心だったはずであり、時には痛みを伴うトレードオフもあったはずですが、不思議とその機会は「たまたまだ」とおっしゃいます。

その決心をされた時点では、将来の成功を確信している方もいれば、確信できていない方もいます。ただ、成功者ほど、ご自身の直感を疑うことなく選択し、失敗してもそれを繰り返さないようにして次に活かしていらっしゃるという点が共通しているように思います。
また、失敗してしまった方はその原因を見つけようとします。そして、多くはその原因を見つけることができます。

貴殿は、前回、外資系大手企業に転職した際の失敗の原因はお分かりですか?

失敗の原因がわからない方は成長がありません。学習し成長しないと、同じことを繰り返し、また再度失敗してしまいます。逆に、最終的に成功する方は、原因を見つけそれを繰り返さないようにすることで成長しています。
人間が生きてゆく上では、失敗の原因を正当化することが必要だという学者の方もいますが、正当化できたとしても、同じ失敗を繰り返すことは避けたいところです。

成功談であっても失敗談であっても、どちらも耳を傾けるべきところはありますが、合理的な判断と直感に従う判断のどちらが大事かといえば、筆者は、基本的に直感に従うことをお奨めします。

しかしながら、直感に従って失敗ばかり繰り返す方も多数見てきました。そうした失敗をする方の共通点は、「どちらの選択が成功するか」の判断を自分の直感に頼ろうとしているところだと思われます。当たり前ですが、預言者でもない限り、どちらが成功するかはわからないのです。

一方、上手くいっている人は、「どちらが成功するか」を考えず、「自分がどのようにしたいか」を問いかけてみて、それを自分自身で理解することに意識を集中しています。そもそも、直感と結果は一致するかどうかわからないのです。

つまり、どちらが本心から後悔なく、「やりたい、やり遂げたい」と思うことなのか、他者の声に惑わされることなく決心していただきたいということです。これが貴殿への助言です。

貴殿は直感でベンチャー企業のオファーを「これだ」と思われたとのことですが、それは「どちらが成功しそうか」と考えた結果ではないですか?
そうではなく、「たとえ失敗したとしてもチャレンジしたい事」だと思われているのであれば、今回はベンチャー企業のオファーを選択するとよいでしょう。それは、前回の「直感」とは別ものです。ご自身も経験を積んで変っておられますし、前回失敗した原因もお分かりだと思います。何より、ご自身の心で決める「決心」ですので、結果はご自身の努力で切り開けるのではないでしょうか。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)