転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第87回
2010.06.24

口頭オファーの後、リファレンスを2名要求されたが転職経験もなく、上司に頼めず困っている。

日本企業に勤める36歳です。ある外資系企業に応募し、3回のインタビューが終了。最終的には日本支社長からもぜひ採用したいと誘われ、人事からも条件提示内容の説明を受けました。年収は現在よりも20%以上のアップ、仕事内容や将来性についても自分の期待以上のものが提示されましたが、先方の人事部長から「正式なオファーの発行のために、リファレンスを最低2名、できれば3名提出して欲しい。」と要求されました。しかし、転職活動は会社に伏せているので上司にも頼めず、転職経験もないため前職の上司というのも存在せず、頼む方がいなくて困っています。

気持ちとしてはもう99%転職を決めていると言えるのですが、一方で正式なオファーを貰ってから転職するかどうかの意思決定しようと思っていて、整理がついていないところもあります。現時点で転職の意向を会社に伝えてしまい、現職の上司に頼むという方法もあるのかもしれませんが、結果としてやはり転職しないことになるかも知れませんし、それにもどうしても踏み切れません。 一体、どうすればいいでしょうか?

大学新卒時に現職に入社するときには、両親に保証人となってもらった記憶もあるのですが、保証人を立てるということで、リファレンスに代えていただくことはできないでしょうか?

Answer

まず、リファレンスの意味を理解していただいた上で、解決策を立てる必要があります。

日本の古いタイプの会社がしばしば入社時に要求する「保証人(身元保証人)」と採用時の「リファレンス」とは、目的や意味がまったく異なります。「保証人」は、被雇用者の身元確認の意味と、採用した方が万一、入社後に横領などの問題を起こした場合、会社が被った損害について被雇用者の代わりに保証人が賠償することを約束する「身元保証契約」の意味とがあります。 古い慣習であり、近年は要求されることも少なくなっていますが、日系企業では大手企業においても身元保証人を求められるケースがあるようです。

一方、「リファレンス」は、身元確認の意味合い以上にビジネス上の評価を確認したいという意味合いが大きく、万が一、過去に不祥事などを起こしていたことや、実は社内で評価が悪かったことなど、候補者が自己申請しないはずのインタビューだけでは確認できないような事柄をできる限り確認し、そのような候補者を知らずに採用してしまうというようなリスクを避けることが目的です。損害賠償の保証の目的はありません。あくまでも雇用側として採用リスクを軽減するために行われるものであり、身元保証とは意味が違います。

よって、親族はビジネス上の能力を評価できる立場にないため、リファレンスの代わりに保証人を立てるということでは「リファレンス」に代わるものとならず、同じ理由で、大学の恩師に依頼しても意味がありません。

ちなみに「リファレンス」は、外資系企業において要求されることは珍しいことではなく、一般的には経営陣、役員、部長クラス、役員専属秘書、あるいは戦略上重要なポジションなど、マネジャークラス以上の責任の大きい職につく場合に求められます。ただ、中にはスタッフレベルにも全て要求するという場合もありますし、逆に、役員クラスや支社長でも要求しない会社もありますので、必要となるかどうかはケースバイケースと言えます。人材流動が活発なアメリカなどでは、20代の方でも常に上司にレフリーを頼めるような関係性を作っています。また、上司も個人的に部下の転職の際にレフリーになることに対して抵抗を持っていないことが多いです。最近では日系企業の企業再生の役員求人などにおいて必要となるケースが増えています。

従って、貴方が、今後キャリアをマネジャー、さらにはマネジメントまで進めて行きたいと考えておられるのであれば、特に外資系企業への転職時には求められることが多いので、2名以上のリファレンスを依頼すればすぐに貰えるように、常日頃から人間関係を築いておいたほうが良いでしょう。

 

さて、ここまででリファレンスについては理解を深めていただけたと思いますが、今回のケースではどのように対処すれば良いか、具体的にお答えしていきましょう。

すでに最終インタビューなども終わっているということですので、準備に何週間もかけるようなこともできないと思います。できる限り迅速に進める必要がありますので、次のようにしてみてはどうでしょう。

  • まず、先方の人事部に、「現職の会社、上司には現時点で転職することを申し出ているわけではないので、絶対に依頼できない。」ということを明快に説明し、了解してもらってください。

  • 次に、代わりに考えられる選択肢として以下のものを挙げて、上司の代わりとのレフリーとして承認してもらいます。
    1. 得意先社長、役員、部長など
    2. コンサルタント等、外部(社外)の方で業務を一緒に行った人
    3. 仕入れ先側、ベンダー側などの上級職
      ※今回のケースでは適用できませんが、転職経験のある方であれば、前職の上司に依頼することが一般的です。
  • 上記の承認がとれても、実際には連絡がつかない場合もあると思います。あるいは3名を揃える努力をしたが難しいという状況もありえます。その様な時は、さらに対象となる方を広げるか、2名(あるいは1名)で了承してもらうかのどちらか、またはその両方を先方の人事部にお願いし承認してもらうよう努めます。 対象を広げる時は、「現職で、転職することを打ち明けても秘密を厳守してくれる先輩、同僚」や「大学の恩師」となると思いますが、最後の手段ですね。 こうなると、状況を率直に話し、誠心誠意お願いするしかありませんが、素直にお話されればその誠意は伝わると思います。

最後に、リファレンスの取り方は主な方法として、1. 推薦状などの文章を提出してもらう、2. 採用企業側が直接レフリーに電話等でヒアリングする、3. 紹介のエージェントがレフリーにヒアリングして採用企業に報告する などがあります。口頭でヒアリングをする際の内容は、ケースバイケースです。簡単な場合には、特筆すべき能力や人柄、長所や短所、コミュニケーションのとり方などを聞かれます。さらに込み入ったことを聞く場合には、不祥事などを起こしたことはないか、採用に障害となるようなことは何かないか、推薦できる人物であるかなどを聞かれます。

通常、リファレンスチェックの結果オファーが取り消しになるということは滅多にありませんが、評価のチェックをするわけですから、内容によってはオファーをもらえないということも当然あり得ます。 想定される質問内容など注意が必要です。キャリアコンサルタントと相談されている方は、そのあたりのことを細かく確認しておかれることをお薦めします。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)