転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第86回
2010.05.27

半年間求職活動を続けていますが、なかなか内定をもらえません。

外資を中心に、セールス・マーケティングの分野で経験を積んできています。 ただ、最初の会社では正社員として勤務しましたが、それ以降の8年間は派遣社員としての勤務となっています。いわゆるセールスのプロフェッショナル職で、派遣元(雇用契約のある会社)からプロジェクトベースで派遣される形で、複数の派遣先企業でセールスやセールスマネジャーとして経験を積みました。

しかしながら昨今の不況で、派遣先がないということで解雇になりました。私のみならず、同僚も同様に派遣先がないということで解雇となっているので、状況からして解雇は致し方ないと思っています。気持ちを切り替えて就職活動に取り組んでいるのですがかなり苦戦していて、半年以上活動を続けるも、就職が決まりません。正社員が希望でありますが、もう再度派遣社員ということでもかまわないと思っています。どうすればいいでしょうか?

Answer

お目にかかってご相談してみないとこの質問だけでは見えてこないのですが、今一度、以下の5点を確認の上、活動を見直されることをお薦めします。(セールス&マーケティングに精通していらっしゃるようなのでお分かりかと思いますが、まさにご自身のマーケティング活動の見直しをするのです。)

 

【プライス/年収】

半年探して決まっていらっしゃらない現実を考えると、希望年収を今の7掛けにして探してみることをお薦めします。これは、貴方のプライドあるいは財布にとっては厳しいお話となるかもしれません。ただ、プライスはやはり売れ方に大きな影響を持ちますので、市況により上がることも下がることもあるのだと割り切って、希望年収を一旦引き下げてみてはいかがでしょうか。

 

【チャネル】

採用企業への直接応募はもちろんですが、ハローワーク、そしてサーチ会社についてももっと積極的に活用してみてはいかがでしょう。厳選しつつも、最低10社程度は登録してゆくことをお薦めします。 そして、2週間に一度のタイミングで、サーチ会社、直接応募先、ハローワークにリマインドしてゆき、進展がないか、新しい求人がないかをこまめに確認します。 10箇所に登録したとして、毎日一か所どこか確認してゆけばおおよそ2週間で一巡しますね。そのローテーションをある意味機械的に回していき、これはというお話が出た際にはぐっと力を入れるというのが効率的です。

 

【プロモーション、販促活動】

履歴書と職務経歴書について、見直してみましょう。 買い手(採用側)が求めている単語が記入されているか、会いたいと思わせる内容になっているかなど、今一度見直しをしたほうがよいかもしれません。勝手な思い込みで自分の売り込みをするのではなく、買い手が求めているものを持っていることを示さないと、何百と応募しても面談に進まず、無駄に終わってしまいます。ぜひ、会いたいと思わせる工夫をしてみてください。

同時に、口頭によるプリゼン、すなわち面談・面接対策も重要です。 書類選考を通過し面談に進んだとしたら、その貴重な機会を最大限生かすべく、できる限りの準備をしましょう。急きょ明日来てくれと言わるかもしれませんが、徹夜してでも準備します。相手の会社情報、求人内容、業界情報や競合他社情報、有価証券情報、決算情報、イベント情報、社長の講演記録などなど、入手できるすべての情報を事前確認しておくべきです。昨今は、インターネットで検索すれば、すぐに見つかるはずですから、手間を惜しまず行います。そのうえで、上手に自分を売り込めば、道は開けます。

 

【自分(商品)の見直し/バリューの再設定】

貴方が持っている本当の価値、バリューは何なのか、他の方と比べた優位性は何なのかを見直し、売り込むべきポイントを今一度明確にしてみてください。自分で思っている自分の価値と、他人から見た価値は異なることがしばしばです。

これは、自分で考えているばかりでは分かりません。他者に相談し、他者評価に耳を傾けましょう。優秀なサーチコンサルタントやキャリアコンサルタントは、この点をしっかり客観的に見抜いてくれます。あるいは、厳しい目で見て指摘してくれるメンターがいれば、その方の意見を聞きだすことが有効です。

仲の良い友人などは落ち込む貴方を確かに励ましてくれるかもしれませんが、耳あたりのよい話しかしてくれない方のところに行ってはいけません。ご自分が強みと思っていることがそうではないなどといわれるのは、正直受け入れがたいことかもしれません。ただ、それに耳を傾け、本当に貴方が力を発揮できるところはどこかをはっきり言ってくれる方の意見を聞いてみてください。きっと、これまでとは違う成果が表れるはずです。

なお、採用側から聞かされるNG理由は当てに出来ません。社交辞令も多く含まれますので、真に受けないほうがいいでしょう。その言葉に隠された真実を探し、何が原因なのか見つめなおしてみましょう。

 

【そして、気概】

「正社員でも派遣でもどちらでも構わないので、採用してください。」と一万回、陳情しても良い結果にはつながらないでしょう。逆に、「正社員と派遣どっちでもいいということ自体、違いを認識していない。」とマイナスの評価を受けてしまうのが落ちです。

このようないらだちや不安、そして「なんでもいいから」というようなマイナスな感情と態度は、状況を悪くしてしまいます。隠したつもりでも相手に伝わり、魅力的でない人材に見られてしまいがちです。 何よりも前向きな気持ちで、「正社員としてのチャンスをいただければ、必ずそれに見合った成果を上げます」という気概を持ち、活動に臨んでください。あとは、上記4点を踏まえて、面談・面接でもそれを合理的にプレゼンするだけです。

ただ、それには正社員と派遣社員の差をしっかりと認識しておくことも必要です。

特に正社員が派遣社員をどう思っているか、その感情の理解が必要です。一般的には、派遣社員は正社員と異なり、サービス残業もないし、相性の悪い上司に苦労することもなく、気楽にできる仕事と思われています。実際にはそんなに気楽なものではないことは理解できますが、「いままでお気楽な派遣だったのに、今更、10年も苦労してやってきた俺たち正社員と同じ立場で入ろうなど虫が良すぎるし、そもそも無理に決まっている」という感情が少なからずあるだろうことは、しっかりと認識しておくべきです。

とくに面接官・インタビュアーが35歳前後である限り、これは避けられないと思ったほうが良いでしょう。 (もう少しマネジメント経験豊富な45才程度の方が面談に出てきてくれればいいのですが、初回の面接・面談はたいてい40歳未満の若手が出てきます。)

ですから、正社員になりたいという希望を伝えるだけでは不十分なのです。正社員でやれるスキルや考え方を提示し、採用側を納得させなければ、この壁は突破できません。 どのような説明をするかをここで書いてしまうと皆さん同じ答えになってしまうのでいたしませんが、貴方個人なりの理由をしっかり考えて準備しましょう。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)