転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第73回
2009.10.22

官庁派遣で海外留学したが、民間企業にはどのように転職するのが良いか?

官庁からの派遣で、昨年東部のボストンのトップビジネススクールにてMBAを取得し、帰国しました。帰国後1年が経過し年末で30歳になりますが、同期のMBAの活躍ぶりをみていると、民間企業に転職したいと思うようになりました。 民間企業に転職するためにはどのようにしたらよいでしょうか?

Answer

質問からは所属官庁も留学先も、また5年後や10年後の目標・展望も分からないのでイメージを持ちにくいのですが、まずは、「どのように転職するのが良いか?」よりも先に、「何のために民間企業に転職するのか?」を考えていただきたいと思います。MBAの同期の活躍が動機付けとなったというだけでは、利潤追求・利益創出を活動目的とする民間企業(営利団体)に転職したいと考える動機としては本質的に希薄である、と言わざるをえません。

動機が希薄なまま民間に移籍したら、また希薄な理由で転職を繰り返してしまいます。

そもそも、官庁に入省された動機は何であったか思い出してください。その動機なり目的はもう達成されたのでしょうか?あるいは、何らかその思いが変わることがあったのでしょうか?それも含め、「何のために民間企業に転職するのか?」が一番重要なポイントであると心得てほしいと思います。

さて、過去さまざまな省庁や政府系機関の方の転職相談、転職支援を行ってきましたが、ざっと思いつくだけでも下記の官庁の方がいました。最初に挙げた5箇所の方は他の省庁に比べて圧倒的に転職された先輩が多く、MBA取得後に戦略コンサルや投資銀行などに転職する方が多く見受けられます。ただ、一般事業会社に転職される方は少ないような印象を持ちます。

一方、この5つの官庁・団体以外の方は、転職者の前例はあるもののそれほど多数ということはありませんし、稀と言うほうがむしろ適切かもしれません。MBA留学の機会など外部との交流や刺激を受ける機会が少ないということでもないように思われますが、その理由は定かでありません。今度、官庁にいらっしゃる方からのご相談があったときには聞いてみようと思います。

なお、官庁や管轄によっては、民間企業を監督する立場などから転職先業界についての制約もあるはずなので、事前に充分に調べてください。

【比較的転職相談・転職実績が多い官庁・団体】

  • 経済産業省
  • 財務省
  • 金融庁
  • 国土交通省
  • 日本貿易振興機構

【比較的転職相談・転職実績が少ない官庁・団体】

  • 外務省
  • 総務省
  • 農林水産省
  • 厚生労働省
  • 環境省
  • 郵政省
  • 科学技術庁
  • 国税庁
  • 防衛庁
  • 中小企業金融公庫

また、昨年あたりからすでに官庁からの天下り禁止などの話もでてきて、20代、30代、飛んで50代の方の相談が増えていることもお伝えしたいと思います。ただ、これも理由は不明ながら35歳から45歳あたりの方からは、なぜかご相談は多くありません。その年齢層の方は、一番重要な仕事を任され、やりがいを感じているなど、公務員・官僚としてのキャリアを貫くと決めている方が多いのかもしれませんね。ただ、先日の政権交代により、今後は全般的に相談が増えてくるものと思われます。

さらにここでもうひとつ、年齢について触れておきます。

官庁にいる方がもし民間企業に転職したいと思うのであれば、省庁や管轄の如何を問わず、なるべく早く動くことです。ご年齢は若ければ若いほど良いでしょう。
なぜなら、「官」と「民」では必要となるスキルセットがまったく異なり、ご年齢があるレベルを超えてしまうといくら転職したくても、受け入れ側が「今からでは対応できないだろう」という判断をしてしまうからです。

言わずもがなですが、「官」と「民」の最大の違いは、利潤追求、利益を生み出す経済行為を行っているかどうかにあります。Profit Sector も Non-Profit Sector も大なり小なり社会に寄与しているはずですが、やはり、Profit Sector として利益追求をしているかどうかのところに大きな境目があると言えます。

Non-Profit Sector の方も論理的思考、分析力、調整力、企画力、管理力、頭脳、人柄、忍耐力、リーダーシップなどなど基本的な強みはお持ちでしょうが、Profit Sector では、もっと別の利潤追求に関係するスキルやスタンスが不可欠となります。この点、民間企業に転職したければ、一からリセットするつもりが必要です。そのためにも若いうちに行動を起こすことが望まれるのです。

まとめると、まず、「何のために民間企業に転職するのか?」を真剣に考えること。そして、なるべく若いうちに行動を起こすこと。この二つを今回のご質問への回答とさせていただきます。

蛇足ながら、これまでにほとんどなかった「官庁の中途採用」も始まりましたので、社会活性化という面で今後のさらなる人材流動化に期待したいと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)