転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第72回
2009.10.01

英語が使える仕事を紹介して欲しい

29歳、男性です。日本の大学を卒業後、商社で小売、消費財関連のビジネスを担当した後、私費で海外大学院に留学し国際関係論修士号を取得しました。卒業後は英語が使える仕事をしたいと思い、探しています。勤務地は海外でも構いません。どのような仕事がありますか?

Answer

英語が使える仕事をしたいというご相談は、あいかわらず多くあります。
英語に限らず語学力を生かす仕事には、語学そのものが専門性となる教育・教師(語学)、通訳・翻訳というタイプの仕事と、語学力も求められるものの語学力以外のスキルや知識などの専門性が必要となる仕事の2種類があります。

まず考えなくてはならないのは、このどちらのタイプをキャリアとして志向するかということです。「英語ができる」ということと「英語でできる」ということは、大きく違います。
英語(語学力)を専門性としてキャリアを築くのか、あるいはマーケティングやセールスなり、財務や経理なり、ほかのキャリアにおける専門性を持ち英語はあくまでもコミュニケーションツールとしてキャリアを考えるのかが重要です。

さて、英語力(語学力)を生かす仕事の探し方ですが、通常、外資の日本支社での仕事か、もしくは日系企業の海外支社(事業)や国際部などの仕事をご自分で探すか、あるいはサーチ会社に紹介してもらうということになります。

ここでサーチ会社について触れておきますと、ほとんどのサーチ会社は地域や国に根ざしていますので、東京のサーチ会社でロンドンの仕事を探すことも、NYのサーチ会社で東京の仕事を探すことも難しいと言わざるをえません。ほとんど徒労におわる作業です。また、規制により(少なくとも日本では)国境を超えた職業紹介には認可が必要となりますので、そもそもその認可を持っている人材紹介会社でないと海外現地採用の職業は紹介してもらえないことを覚えておいてください。

従い、英語のみならず語学重視の仕事を探す人は、どうしても、語学=ロケーションという発想になりがちです。

ここで、語学=ジョブロケーションをキャリアの最優先事項にあげて考えてしまうと、業界、職種にかかわらず、35歳以降に苦労されるということを申し上げておきたいと思います。それは、前述の「英語ができる」ものの「英語でできる」という専門性が(語学以外に)身についていないという状況になりがちだからです。ご自分の専門性が語学以外で持てなければ、将来失速してしまいます。

英語力以外の専門性の獲得、しっかりとした力を証明できる経験や実績、そして自信を身につけることが何よりも大切なポイントです。しっかりとした専門性が身につくなら、人気のある仕事でもない仕事でも、年収が高い仕事でも低い仕事でも、ベンチャーでも大企業でも、はたまたNPOでもまったく構いません。

会計、財務、人事、経営、事業開発、セールス、マーケティング、広報、監査、M&A、法務、生産、開発、販売などなどいろいろありますが、およそビジネスで専門性のある領域であればいずれでも構いませんので、しっかりとした知識や専門性を身につけ、英語(と日本語の両方)でビジネス遂行できるようになることを最優先の目標とされると良いと思います。

「35歳以降にその専門領域の仕事を英語で行う職に就きたい」と思うなら、場合によっては、今回は英語を使わない仕事に就いてもよいかもしれません。英語を使うこと以上に、「身に付けたい専門領域をしっかり定めて(母国語でも)それを磨くことを最優先とする」くらいの覚悟で臨んだ方が、結果的に目標に近づきやすいでしょう。
(もちろん、その仕事を英語で行う職に就けるのであれば尚更好ましいのはいうまでもありませんが。)

なお、ご質問いただいた方が「語学以外の専門性を身につけられる就職」に成功するかどうかは、「留学で何を学んだか」以上に「留学前の商社での5年間の実務経験を専門性としてどの程度採用側にアピールし、評価してもらえるか」にかかっています。大学院では国際関係論を専攻されていたということですから、この点もMBAを取得された方とは少し異なると言わざるを得ないでしょう。

前職から職域(職種)を変えるのであれば、尚更慎重に考えるべきです。
22歳の大学(学部)新卒と同じ発想でではなく、29歳までの経歴と学歴を無駄にしないように考えていくことが望まれます。

是非、個別コンサルティングにてご相談いただき、専門性や将来のゴールついてしっかりとお考えください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)