転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第71回
2009.09.10

結婚や出産について、キャリアを創っていく上でどのように考えるべきか、基本的なところを教えてください。

現在29歳、女性です。MBAを取得し、いよいよ戦略コンサルティングファームに勤務することが決まりました。プロフェッショナルな仕事につけたことで一層奮起し、当面三年程度は仕事に専念しようと思いますが、同時に結婚や出産という課題については、実はこれからもっと真剣に考えるべきとも思っています。何を考えるべきか、教えてください。

Answer

女性のキャリア開発については、アクシアムは創業時からいろいろな取り組みを行い、キャリア相談、キャリア紹介を通じてそれを実践してきました。試みとしては、2001年に、時代に先駆けて「女性のためのキャリアフォーラム」なども開催いたしました。このフォーラムはとても示唆に富んだもので、私の普段のキャリア相談の現場にも多いに参考になるものでした。

フォーラムでは、当時ビジネスの最前線で活躍されている複数の女性の方々にご協力いただきました。日本の大手証券会社で初の女性取締役になった方や、国際女性ビジネス会議の主催者としても起業家そして経営者としても尊敬すべき佐々木かをりさん、フォーラム参加時には上場企業の社員であられましたがその後創業された小室淑恵さん、そして当時は戦略コンサルティング会社から外資系企業に転じて役員をされていて、今回衆議院議員となられた江端貴子さんなど、当時からビジネスシーンをリードされていた女性の方々から、このフォーラムを通じてご意見を頂くことができました。共通して結婚、出産、を経験されながら、第一線でも活躍されていらっしゃるのは周知のとおりです。

江端貴子さんのプロフィール

佐々木かをりさんの株式会社イー・ウーマン

小室淑恵さんの株式会社ワーク・ライフバランス

なお、ワーク・ライフバランスについては、社名もそのままの、株式会社ワーク・ライフバランスの代表、小室淑恵氏に尋ねるのがベストでしょう。小室氏自ら、インターン、卒業、就職、結婚、転職、創業、出産、経営と、35歳までにすべてを経験してこられた経験を持ち、ご自身が実践されてきたご経験の中からの助言や示唆をいただけるものとおもいます。組織の中でキャリアを歩む女性の新しいタイプの女性の一つのモデルになることでしょう。

さて、本題に入ります。

ラテン系の方で、相手が見つかってから考えるという方もおられるので、それはそれでよろしいのですが、ご質問いただいた方は、今からしっかり考えておきたいということなので、過去のキャリア相談の実例などをもとにご回答させていただきます。なお、専任主婦になりたいという方のキャリアの相談をしたことがないので、あくまでもビジネス上のキャリアを継続したいと考えておられる女性ということを前提にお話いたしますこと、ご了承ください。

1) 結婚

結婚においては、伴侶となる男性ならびにそのご家族のキャリア観を見極めておく必要があります。仕事を続けることへの理解がある程度あることのみならず、応援してくれるのかどうか?伴侶はOKでも、その家族が実は全く異なる価値観をもっていて、キャリアを継続することに反対しているというケースなど、よくある話です。特に、伴侶の母親の価値観、姿勢は要注意です。

伴侶の母親も仕事を続けることにポジティブなら、子育てを手伝ってくれて、仕事に専念させてもらえるということもありますが、逆にネガティブだと、ことあれば愚痴を言われて揉め事ということもあります。結婚前にその点をチェックすることは重要です。 また伴侶のみならずご自身の転勤など、勤務地が離れて1年、2年別居というケースや、コンサルティングファームなど、頻繁な出張はもとより遠方企業(顧客)に数ヶ月常駐となり、実質別居状態ということも起こりえます。そこまで想定して、理解を得ておくことが望ましいと考えます。物理的に離れてしまい心も離れるという問題はキャリア相談の範疇外なので回答をもちあわせませんが、それもキャリアの上ではリスクです。

これからの社会では、キャリアの価値観の相違から離婚するというケースも増えてくるでしょうが、致し方なしと思われます。そうならないよう、なるべく事前に価値観の確認や合意形成をしておきましょう。

2) 出産・育児

出産については、これは少子化傾向の日本では、国をあげた課題となっています。有識者や政治家、大企業経営者などの財界人も皆、その点には充分に気づき、認識しています。大きな流れは「出産・育児の全面的な支援」にあり、より出産や育児をしながらキャリアを作れるようになっていくだろうと思われるものの、現実的には職場や会社単位で個別事情が異なります。

その会社に出産経験があり、その後職場復帰した女性の先輩がいらっしゃれば、先駆者が前例を作ってくれているという点で支援制度などもできているでしょうから問題はあまりないのですが、先駆者がいない会社に入る場合や、先駆者いたもののその後退職され、現在はいなくなっている場合は気をつけましょう。

以前も、ある女性が「出産後2年の育児期間(ブランク)を経て、復帰された女性がいる」という話を聞き、おそらく出産や育児休暇にも理解があり、支援システムも整っているのだろうと勝手に推察して某コンサルティング会社に入社したのですが、いざ自分が出産をと考えた時には、パートナーも当時の方と代わってしまい、「景気が悪いこの時代に、そんな2年もの育児休暇は認められないし、休暇後の復帰を約束などできない」という方針に変わってしまっていたというケースがありました。 景気のよかった(先輩の)時代は良かったとも言えますし、あるいはパートナーの個人的価値観によって変わりうるものとも言えますが、「今、どうなのか?」が大事なポイントであり注意すべきポイントであります。 もちろん、法で定められた休暇日数は取れてしかるべきですが、それ以上どこまで望めるかは、個別にしっかりと確認してください。

ちなみに、コンサルティング会社はメーカーなどの事業会社に比べ、一般的には産休や育児休暇を比較的長くとっても復職しやすい傾向にあります。これは、戦略コンサルタントでもITコンサルタントでも、「プロフェッショナルとしての専門性」が求められる仕事であり、その点において優秀と認められさえすれば、数年ブランクがあっても変わりなく仕事ができると見込めるからです。また、会社自体が「同様のスキルを持った人材の集まり」であり、常に同様の人材ニーズを持っているからでもあります。

それに比して一般の事業会社の場合、「組織内で様々な異なる役割を分担している」ことが大半であり、休暇中はほかの方がその職務を代わることになりますので、復帰したいと思った時に同じポジションが空いているということはあまり期待できず、ポジションを再度設定する必要があるためにその職務設定に苦労するということになります。

なお、一部の外資系企業では、産休や育児休暇明けに同じポジションに復職させることを約束してくれるところもあります。その際は、同期間中はわざわざ外部の契約社員を採用し、その契約社員にも、「正社員が産休を取っている間の期間契約であり、同社員が復職した後は、契約は切れます。その後の契約延長や正社員への登用はない見込みです。」と正当に説明しているという会社もあります。

いずれにしても、制度のみならず経営陣やパートナーの価値観を事前によく理解しておくことが大事です。 ジュニアなポジションでの採用の場合、社長や役員面談があるとも限らず、上司となる部長や人事部長面談で採用が決まってしまうことがありますが、その場合は、人事部長に制度の有無のみならず、現実的な運用のされ方や実態をよくヒアリングしておくことが大事です。

また、小さなベンチャー企業や外資の日本支社などで産休や育児休暇についての制度・規定がない会社の場合は、ダイレクトに社長に聞いてみることです。ベンチャーなどでは制度が無いのは当然ながら、案外、貢献してくれた女性には制度の有無にかかわらず出産休暇、育児休暇や復職の便宜を図ってくれることがあります。 成長していれば、追加的なポジションは常にあり、優秀な人材が不足しがちであることが理由と言えます。 ただ、ベンチャーであるが故、復職しようにも会社がなくなっていたというケースもあります。

3) 年齢

出産のための適齢というのはお医者さん、専門の方の意見を聞いていただくしかありませんが、キャリア上は、28歳から35歳あたりにしっかりとした実績をつくることが望ましいものです。その点、同時期に出産をすることが多いだろうことを考えますと、男性にくらべ女性は明らかにハンディがあるといえます。これは、残念ながら明白な事実です。 この点は何か国として対策を講じる必要があるかもしれず、政治家の方や政府に期待をしたいところでありますが、政策や制度云々ではなく、現時点で個人としてできることを考えるなら、前述の小室さんなどが奨励している「産休期間こそ未来への投資となる学習期間にあてる」などの対策も有効に思われます。例えば出産とMBA取得に同時に励んでいる妊婦さん学生が、日本人女性でもおられます。

なお、この20年程度で医療技術も格段に進歩し、30代後半でもだいぶ安心して出産ができるようにはなりましたが、それでもなお、30代がキャリア上とても重要な時期であることを考えますと、30代の女性は人生で重要な、あるいは悩ましい選択をせまられる場面が多いと思います。短絡的に考えず、3年間程度ずつの中長期のプランでイメージをもつことが大事でしょう。

 

なかなか一概には言えないところも多く、また個別事情にもよりますので、ぜひお気軽にキャリアコンサルタントにご相談ください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)