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転職コラム”展”職相談室
キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。
“展”職相談室 第69回2009.08.06
パートナーにならないかとの誘いを受けました。
まもなく40歳を迎えますが、プライベートエクイティーの代表パートナーから共同パートナーにならないかとの誘いを受けました。現在は大手投資銀行にてVPとして勤務していますが、戦略コンサルタントの経験、MBAの学位なども有しており、そのような経営戦略と資本政策の両方の経験を有している点を高く評価していただいたようです。「日本を変えるようなファンド運営を経営者として一緒にやらないか」と熱く誘われています。
このご時世、募集をかければ多くの候補者が集まるだろうことは容易に推察できますが、その前に自分に声をかけてくれています。その点もうれしく、年収は現状のままというお話しですが、現職よりもやりがいがありそうですし、やってみようという気持ちが強くあります。 なお、「できるだけ来週中に返事が欲しい。私からの返答が来週以降になるようならサーチファームからの募集もかけるつもり。」と言われています。
基本的には良い返事をしたいと思っているのですが、意思決定においては万難を排したいという思いもあり、私が見過ごしてしまっているかもしれない点、うまくいかないかもしれないリスク、また今後のファンドビジネスの行方などご指摘・ご指南いただきたくご相談申し上げます。
Answer
スカウトを受けた時のご相談の第4弾です。 実は、意外にこのタイプのご相談(パートナーのお誘いの相談)はよくあります。
ブティックタイプのコンサルティングファームのパートナーになって欲しいという誘いや国際的な投資&ファイナンスのアドバイザリーファームを立ち上げたいので、日本支社のパートナーになって欲しいという誘いなどなど。
筆者としては、ぜひ多くの方にパートナーとなっていただきたいと思っています。 パートナーも経営者の一種であり、経営者の大きな役割の一つに雇用の創出があると考えているからです。高度な専門性や知識やしっかりとした実績をお持ちの方であり、それを持って社会に価値をもたらすことができるのであれば、たとえ具体的なプロダクトを持たないコンサルティングビジネスでも、その会社(ファーム)は雇用を生み出すはずですし、それによって社会経済に貢献することになるからです。
一人でも多くの経営者が社会に存在すれば、あるいは育ってくれれば、雇用の創出や経済の発展につながるという単純な考えを筆者は好みます。
よって、回答として、以下の助言をさせていただきたいと思います。
- 貴方が経営者(そのファームのパートナー)になることでその会社を拡大できるかどうか、その答えに真剣に向き合ってみてください。
- そして貴方の経験、知識、スキル、直感を総動員して、ご自分の人生や時間を投資して得られるリターンが何かを判断してください。
リターンは言うまでもなく「やりがい」なのでしょうが、では、そこに存在するリスクは何か? 投資の専門家、プロとして十分に検討されているはずで、見過ごしておられ様なことはないと思いますが、あえて過去に筆者が見聞きしたケースをいくつかお知らせします。
- ファンドそのものが売却され、代表ともども席を失った。
- 共同パートナーになったら有限責任として借金を強要され、連帯保証人となるか退職するかを入社後に迫られた。
- 外国の資本が抜けることが分かっていたのに、黙っていた。日本の共同パートナーとして増資(出資)に付き合わされた。
- 代表パートナーが仕事を取ってくるといっていたのに、顧客のソーシングが狙いであった。顧客リストを書き出したらクビになった。つまるところ、だまされた。
- パートナーとしてそれなりの肩書きを持つ私が役員に名を連ねていれば、増資/ファンドライズがしやすいという狙いであった。ファンドライズに成功したら、その後急に冷たくなった。
- 最初は勢いがあったが、半年が過ぎたころから売上げが上がらなくなった。上がる目処もないので解散。
さて、もう一つファンドビジネスの今後について回答申し上げたいと思うのですが、業界の今後の行方については残念ながら適切な回答を持ち合わせていません。
最も進んでいるアメリカでさえも、VC,PE,PI,などいわゆる広義のプライベートエクイティー/投資ビジネスは新興産業であり、その業態、セグメントがさらにどのように変化してゆくのか、このコーナーで論じる術も情報も持ち合わせていません。
金融業界や投資ビジネスがどうなっていくか予測しようと思うなら、世界情勢そのもの、たとえば世界の政府間機構、資本主義というイデオロギー、資本市場の仕組み、そして人々がこれからの生活で何を求めるかという社会ニーズ全般まで、広く深く考える必要があるように思います。
ただ、労働市場のみに目を向けるなら、産業社会のニーズとしてPE経験者が不要になるということはないと思います。それどころか、需要は高まるでしょう。それは、現代の企業経営(企業財務)においては、企業のサイズや資本政策、あるいは業界の違いにかかわらず、”Debt”と”Equity”の両方に対する知見がますます不可欠になってきているからであり、”Equity”がわかる人材はまだまだ希少だからです。
コンサルタント
インタビュアー/担当キャリアコンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)