MENU
- MBA転職・外資系求人(HOME)
- 転職コラム
- ”展”職相談室
- もうすぐMBA卒業。3つのオファーの間で揺れています
転職コラム”展”職相談室
キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。
“展”職相談室 第60回2009.03.18
もうすぐMBA卒業。3つのオファーの間で揺れています
ある海外ビジネススクールに通う34歳です。卒業後の就職へ向け活動を続けてきましたが、3つの選択の間で気持ちが揺れ、決断できないでいます。私は大学卒業後、某消費財メーカーに入社し、商品開発や事業開発の仕事に従事してきました。仕事をする中で、自分の最終目標として「経営を手がけたい」との思いを持つようになり、一念発起。MBA留学をすることにし、現在に至っています。
一つめの選択肢は、海外現地法人採用でのマーケティング職のオファー。業界は前職と同じですが、海外勤務でスキル・経験を積めるのを魅力的に感じています。二つめは、異業種となる某企業からのオファー。通常のポジションではなく、幹部候補人材向けの採用枠です。能力開発のプログラムが充実している点に惹かれています。そして三つめは、実家の事業を継ぐというもの。いわゆる地方の中小企業ですが、経営に関わる最短の選択といえなくもありません。
MBAで学んだことを活かし、今後の自分のキャリアを発展させていくには、どの選択がベストと思われるでしょうか? アドバイスをいただければ幸いです。
Answer
人生をカードゲームに例えるのはとても不遜なことですが、分かりやすくご説明するために、敢えて以下のような例えを用いてご回答させていただきます。
どのようなカードゲームでも、ある1枚のカードが手元にきた際、次の展開を考えてカードを集めたり、取捨選択したりしますよね。カードはいわば学歴や資格、職務経験、キャリアの機会にあたります。ゲームに勝利するためには、有利なカードをどんどんためてゆき、自分の手の内を良くしていくことが必要です。
現在ご相談者の目の前には3種類のカードがあり、1枚だけを選ばないといけないわけですが、そのゲームの”勝ち”は何なのか、そもそも確認しておく必要があります。そして目先の1枚を選ぶことだけではなく、さらに次のカード、その先の手を考える視点が重要です。いま並んでいるいずれのカードにも、キャリアにとっての価値はあるでしょう。3枚とも経営を担えるようになる可能性はありますし、きっとMBAを活かすことができるはずです。だからこそ、どんなゲームで、自分自身の目的は何で、何のためにそのゲームをしているのか…それらを再認識し、それに沿った判断をされるべきです。
「経営を手がけたい」とおっしゃっていますが、これだけではまだ未分化で、キャリアのきちんとした目的になりきれていないと思います。経営者になって、どんな会社でどんな責任をとりたいのか、ぜひ考えを深めてください。
このような前提をご承知いただいた上で、私なりのアドバイスをお伝えします。
1番目の海外現地法人のマーケティング職というカードですが、「経営」という目的にとっては、意外にも海外勤務経験がデメリットになる場合があります。(将来的に日本ではなく海外でキャリア構築していくことを希望されるならもちろん別です。)海外現地法人のマーケティング業務経験者が、次のステップとして外資系企業の日本支社でのマーケティングマネージャー/ディレクターを狙うことは、ままあります。しかし、実際にはNGを出されてしまうことが多いのです。なぜなら外資系企業の日本支社は、日本市場を開拓することがミッションだから。彼らは日本の”外”に明るい人ではなく、日本の”中”に明るい人を求めているからです。
では次のステップとして、日系企業を想定した場合はどうでしょうか? 海外に強い人材が必要で、かつ社外から採用してでもほしいという企業があれば、転身が叶うことになります。ただこの場合には、ご相談者の年齢がネックになるかもしれません。34歳の現時点から少なくとも数年間は海外で勤務し、37~40歳頃に帰国することになりますから、狙うのはいわゆる部長クラスのポジションになるでしょう。ですが、部長クラスあるいは35歳以上の人材を日系企業(特に大手)が外部から採用することは非常に稀です。大企業であればあるほど、社内で容易に適当な人材を見つけられるからです。
国境を越えた経験は、個人にとって大いにプラスになると私も思います。しかしながら「経営」という目的には、1番目のカードは遠回りになることが多いと感じます。企業の求人ニーズとしては「変化の激しい国内市場をしっかり乗り切れる人」が現在求められているように思います。
さて、2番目のカードについて考えてみましょう。「幹部候補人材向けの採用枠」という点が少し気になります。名称だけの幹部候補募集が、残念ながら世の中には多数あります。採用のための詭弁とまでは言いませんが、実態はなきに等しいものもありますので注意してください。(幹部候補製募集という絵札がじつはジョーカーだったという話は後をたちません。)それに、本当のリーダーたる人材は用意してもらった道の上に乗っかって走るのではなく、道などなくてもしっかり社内での可能性を模索し、自ら可能性を広げ、抜擢されるように実績・人脈を作っていくものです。ポイントは「能力開発のプログラム」が用意されていることではなく、まさにその「中身」なのです。
ですからこのプログラムが、ロールモデルにできるビジネスリーダー/CEOをはじめとする経営層の仕事を間近で見て学べるような内容だったり、チャレンジングな経験を積めるような内容だとしたら、大きな価値があるでしょう。特に大きなスケールの組織を経営し、成功に導きたいというゴールを持つのであれば、良い選択だと思われます。
最後に、3番目のカードについてです。20代・30代のMBAが創業していきなり経営者となるケースは決して珍しいものではありません。ご実家に戻られても、MBAでの学びが活きることはありえます。獲得した知識だけではなく、友人の助言で重要な判断の答えが出せるとか、留学中のネットワークを使ってビジネスが上手くいくなど。組織だった学びの場や指導者がなくとも、立派に経営ができるかもしれません。地方の中小企業である家業を継ぎ、自らそれを発展させていくことを目標とする(目標としたい)なら、決断のタイミングともいえます。
冒頭に申し上げましたが、やはりポイントはご自身にとっての”勝ち”とは何なのか、です。自らに問いかけて明らかにし、それに基づいた選択をしていただければと思います。
コンサルタント
インタビュアー/担当キャリアコンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)