転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第45回
2008.07.24

初めての転職。希望年収の提示タイミング、交渉の注意点とは?

大学卒業後ある日系の事業会社に入社し、法人営業を2年、マーケティング部門を3年経験してきました。現在の会社に大きな不満はないものの、マーケティング分野でさらにキャリアアップしていきたいことと、今は活かせていない英語力を使える仕事をしたいと考え、転職活動を始めました。

いくつかの企業に応募し面接が始まったのですが、初めての転職でもあり、希望条件を先方に伝えるタイミング・方法等に不安を感じています。特に年収について、どのように自分の希望を提示していけば上手くいくでしょうか? ぜひアドバイスをお願いします。

Answer

希望年収の交渉の仕方は、アクシアムのコンサルタントの、いわば企業秘密です。公表するわけにはいきません…と言ってしまえば元も子もありませんので、今回は部分的ご披露させていただきます。

【基本ポイント】

最初の面談で自ら「○○○○円を希望する」とアピールする方はほとんどおられないと思いますが、希望条件については、まずはこちらからは言及せず、採用企業側から尋ねられれば以下のようなスタンスで誠実に対応するのが良いように思います。

対応する場合には、現職の年収について会社の制度とともに具体的に説明し、現在のご自身の状況を伝えることが大切です。源泉徴収などに基づき、年収・基本給・ボーナスなどといった項目できちんと説明しましょう。もし同時に他社との面談も進んでおり、オファーが出てきた場合には、その業界と報酬制度、年収提示額などを随時通知することをお勧めします。また、年収の具体的希望額について尋ねられたら「御社規定の金額はどのくらいですか? そちらをお伺いし、検討したいと思います」という意図の答えを、まずはするのが良いと思います。

【提示額の決定要素】

採用企業側が出してくる年収の提示額は、複数の要素がからみあって確定しています。過去の数字、採用候補者が伝えてくる生活維持のための理由、他社提示など市場の提示額など実に様々ですが、私がこれまでのコンサルタント経験の中で、年収の提示額に影響していると思われる要素を、以下に思いつく限り列挙してみます。

まず、業界、資本系(日系/外資系)、会社規模(大企業/中小企業/ベンチャー)、職種・職位(ポジションの難易度)、その会社の制度、会社の状況(オーナー企業である、再生中である等)。それから対立候補者の有無、複数採用かどうか、最終面談者が誰か(人事部門の方か、採用部門の方か、役員か)、候補者に対する期待値など。

また、面談が進んでいく中で「会長に気に入られた」「株主が変わった」「戦略変更があった」などの理由で、当初よりアップサイドに変わった事例もありました。

【条件交渉をする際の傾向】

条件(特に年収)交渉について、企業にはいくつかのパターンが見られます。知っておいていただきたいその特徴・傾向について、以下にお伝えします。

  • 日系大手パターン
  • 既に会社の制度として持っている”年齢給”の影響が大きく、年収について交渉をしても、それほど大きな変化は期待できません。
  • 外資系パターン
  • 希望条件にも色々あると思いますが「現金部分」の最大化が可能です。つまり、現在価値の最大化が狙えるといえます。しかしながら、交渉を下手にすると破談もあるので注意が必要です。
  • ベンチャーパターン
  • 「現金部分」だけでなく、「オプション部分」の交渉ができる場合もあります。将来価値を最大化する、という視点で交渉することが候補者にとって必要であり、また最終的に有益だと思います。
  • 専門職集団パターン
  • ポジションによって年収レイヤーが明確に決まっています。ですから規定を開示してもらえれば、交渉をそれほどしなくても候補者にとって納得感があるでしょう。ただし、個人オーナーの事務所の場合などは事情が異なります。社内でも大きく賃金格差があり、アップダウンが激しいことが多いようです。その裏を返せば、年収は交渉次第ともいえます。

いかがでしょうか。希望条件の提示・交渉のポイントについて、ごく一部をお伝えしましたが、候補者が自ら行うには難しい部分も多くあると思います。その意味でも、ぜひ我々のようなキャリアコンサルタント(それも、きちんと信頼関係を築けるコンサルタント)を上手に利用し、ぜひ有意義な”展職”を実現していただきたいと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。