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転職コラム”展”職相談室
キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。
“展”職相談室 第44回2008.07.10
現在50歳。なかなか次の転職機会を見つけることが叶いません
長年勤めていた会社を退職することにし、現在、転職活動中の50歳です。ある日系の事業会社にて営業畑を歩み、海外事業部に所属しておりました。ところが会社が海外事業からの撤退を決め、数十名いた社員は退職、あるいは総務部門等へ異動することに。私は今後もこれまでのキャリアを活かした仕事がしたいと考え、転職を決意した次第です。
50歳という年齢から、多少厳しい状況になると予想はしていたものの、考えていた以上に苦戦し、なかなか次の良い機会が見つけられません。私のような年齢での転職を成功させるために、活動のポイントなどはありますでしょうか? 日系企業におりましたが、北米やアジアでの事業所立ち上げ・赴任経験もあり、英語力には自信があります。ぜひご助言をお願いします。
Answer
まず大事なことは、以下の7つの点について考え、整理し、活動プランを作ることです。合理的で効率的な活動プランができれば、展望はひらけると思います。
1)前提:どんな人にも、合致する求人は存在する
「やりたいこと」だけを探すのではなく、「やれること」から探したり、ご自身では気付いていない「やってくれ」という社会や採用側のニーズを理解し、耳を傾けたりすることが大切です。そのような視点で眺めてみれば、世の中には、どんな人に対しても合致する求人があると思います。
なにも直近の経験業種・職種のみが能力を活かせる場とは限りません。誰でも経験業種・職種の仕事内容については理解していますが、未経験業種・職種についてはなかなかイメージがつきにくく、そこでの可能性について考えが及ばないものです。その仕事を実際にしている人から直接話が聞ければいいのですが、現実には、なかなかそのような機会もないでしょう。そんな時こそ、キャリアコンサルタントなどを活用し、ご自分がどのような場で活躍できるのか助言をしてもらい、求人案件の提案を受け、仕事の説明を受けるのが近道です。
(ただ、ほとんどの人材紹介会社やキャリアコンサルタントを標榜する人たちは、候補者の直近の経験業種・職種から案件を判断し提案している、というのが私個人の感触です。履歴書や数時間の面談だけで、ご本人のコンピテンスを導き出してくれるコンサルタントは、残念ながら多くありません。)
ハローワークはもとより民間の人材紹介会社は、既にこの10年で1万社にまで増えました。それらの中からご自身に合った会社を見つけ、数社を使って、労働市場から見た「ご自分の知らない自分」を理解することです。
2)キャリアのグランドデザインを持つ
これまでは、社外でのキャリアについてお考えになったことはあっても、「現実的に自分がマーケットからオファーをもらえるか」という観点でご自身を振り返ったことはなかったと思います。そして、行動に移すこともなかったからこそ、長年同じ会社におられたわけです。(決してそれが悪いという意味ではありません。)
50歳で初めての転職…現実が厳しいことは言うまでもありませんが、どうすれば転職/入社できるかが問題ではなく「どんなキャリア展望を持つか」「何を優先させたいのか」の方が重要で、これを決めなくては案件の探しようもありません。家庭の事情で収入が第一というケースもあれば、やりがいを第一にという人もいるでしょう。3年後、5年後、10年後にどうしていたいのか。これから先の設計=キャリアデザインこそが大切です。
3)視点の工夫
キャリアのグラインドデザインが決まれば、それを前提に案件を探していくことになります。今回のご相談者の場合、ざっくりとしたフィールドとして外資系企業の日本支社、ベンチャー企業、企業再生関連、日系中規模会社の海外進出…などがまず考えられると思いますが、それだけがキャリアデザインの選択肢ではないと思います。「英語が得意で、海外営業をしていた」という部分にフォーカスし、それらの能力と実績を使って、全くの異業界でチャンスを探してもいいわけです。あくまで、ご自身のキャリア展望を大切にしていただきたいのですが、案件を探す際のこのようなアプローチの仕方(工夫)も試していただきたいと思います。
ちなみに、市場開拓をしてきた際のリーダーシップ、部下の育成実績、予算達成のための能力等について、それが企業経営のレベルにまで到達しておられるのか(あるいは事業部レベルなのか、製品群レベルなのか)はキャリアコンサルタントとして知りたいところです。それによっても、もっとチャンスの幅が広がるかもしれません。
4)過去の経験業界・職種にこだわらない
過去を活かすことに固執すると、選択肢が著しく狭まります。業界・職種の枠は、一度取り払って考えてみましょう。1)で述べたように、業界・職種を越えたキャリアの可能性については、なかなか思いつかない人が多く、また、コンサルタントにも発想が少ない場合が往々にしてあります。
売り手側から買い手側へ、見えるもの(財)から見えないもの(サービス)へ、大から小へ、小から大へ。これまで経験してきたことと同じ発想で売上に貢献できそうな業界はないか? 同じビジネスモデルで利益が出始めている業界・企業はないか? インターネット・ビジネスに置き換えたらどうか?…などなど。様々な発想をし、過去の業界・職種で培った能力を活かすことは考えつつも、表面的な業界・職種にこだわり過ぎないマインドが必要です。
5)収益計画をたてる
60歳以降の人生のために必要な資産を計算し、60歳までの収支計画をたて、生活の維持に必要な年収のボトムを計算しておきましょう。転職について最後の判断を下す際、その年収額が最低限の条件となります。
50歳からは、たいていの人の場合、大きなリスクを取ることができません。50歳までなら、色々なリスクを取って大きなリターンを目指すことも、経験の獲得を優先させることも可能であり、またその価値があると思います。しかし50歳以降は、このような収支計画をたて、最低限の条件を明らかにしておくことが重要でしょう。そうすれば、実際に転職する際、最終の意思決定で判断がつきやすいと思われます。
6)求人情報の見極め方・探し方
求人情報に記載されているタイトルや年収で、必ずしも案件を探す必要はありません。もちろん、最後には大事な決定要因になるので考慮すべきなのですが、その中身を吟味する必要があります。つまり、額面どおりの募集しか本当にないのか(採用ニーズがないのか)など。企業側に、以下のような状況があることも知っておいてください。
面談担当者が人事業務のアウトソーサーや外部コンサルタントの場合、無論、設計どおりの採用しかしてくれません。しかしながらシニア人材の採用の現場では、人事部長や部門長よりもさらに上の役員・社長・株主などに面談できる機会も多々あり、会うことができれば募集時点と全く異なる好条件に変わることがあります。セールススタッフの予定で選考の始まった人が、最終面談で社長と株主に会い、COOに抜擢採用されたケースが過去にありました。人材の質を見抜く力を持ち、会社の今後の目論見について本当に考えているレベルの経営者・株主は、その候補者をどう活用するか戦略的に判断し、予定していなかった使い方を思いつき、決断する場合があります。
また、一般に公開されている求人情報を探すだけが求職活動ではありません。ここまでの項をお読みいただき、ご自身について考えを深めてくださった方であれば、求人情報を探すこと=キャリアを見つけることにならないと気付かれるはずです。
年収が600万円以下のスタッフ求人であれば、機密性もないのでWebでも新聞・雑誌等でも多く開示されています。600万円から800万円の求人になると、なかなか見つからなくなってきます。また「マネージャー職」という単語で探すと、これも少なくなってきます。それは、日本の組織には(大企業も中小企業も)おおむね社内に年収600~800万円といったレンジのマネージャーが多く在留しており、あらためて外から採用する必要がないからです。
さらに、年収が800万円以上のキャリア機会を探すとなると、公には求人をしていない会社にもアタックをかけるくらいの気概がなければなりません。「自分なら、社内の人にはない力を提供することで御社を成長させられる」という目論見も必要です。実際、そのような目論見を持ち、社内で充足していると言われることを覚悟で自分からアプローチをして、キャリアを見つけ出した人がおられました。外資系企業に日本参入を呼び掛けて、その日本代表になった人もいます。
もちろん、ハローワークへ登録し、マネージャー以上で一般開示されていない求人案件を受託している(それだけの実績を持ち、求人企業から信頼されている)人材紹介会社などへ相談に行くことは必須でしょう。繰り返しになりますが、数社以上の人材紹介会社へ相談に行き、チャンネルを広げておくことをお勧めします。年収が1500万円以上のエクゼクティブレベル/経営者レベルの案件を探したいということであれば、さらに上の実績を持ち企業からの信頼を得ているサーチファームを活用しなければなりません。しかしながら、そのようなタイプのサーチファームは、まだまだ日本では少ないと思います。既に公にある求人情報だけを探すなら、直接応募でも人材紹介会社でも同じような案件になります。それらを希望しないのであれば、自分でも行動する。そのような覚悟と意気込みが重要でしょう。(実際、就職を希望する約50社の企業の社長にアプローチし、5社の面談を獲得した人もいます。)
ただ、人材紹介会社も万能薬にはなりません。キャリアの相談はできても、求人者(企業側)のニーズに合致していなければ案件の紹介はできません。例えば、求人ニーズに50%合致している人の場合、人材紹介会社は「50%は合致しています」と企業に推薦することができるだけです。もちろん面談のための助言や、面談準備のサポートをすることはできます。しかし「80%以上合致している人材のみを潜在候補者とみなしてほしい」と企業から言われていれば、求人内容(あるいは案件の存在そのもの)を個人に通知することができません。一般公募との違いはそこにあります。アクシアムでは、75%程度ニーズに合致している方について、その方の強み等を別の角度から補足し、80%以上とみなしてもらうよう企業へ交渉するようなことはよく行います。ですが、それでも全ての方に案件を開示できない苦悩があります。蛇足ですが、求人が多数あっても、その求人に合致した人材が少ないというのが本音です。
7)もっとも大事なのは、元気でいること
1ヵ月・3ヵ月・半年…今後、転職活動を進めていっても、これと思える案件が見つからないかもしれません。何度も書類選考で落とされ、面談に至らない状況も経験されるでしょう。周囲の様々な人に「それではダメだよ」などと言われるかもしれません。それでも面談では、明るく回答する。愚痴らない。暗くなっていたら採用はされません。へこたれたり、モチベーションを下げたりしないで、明るく振舞える自己管理が必要です。
また、なぜそれだけの時間がかかって案件がないのか、しっかり自己分析することも大事です。まずは3ヵ月程度探して見つからなかったら、グランドデザインや案件の探し方に問題がある場合も多いので、すぐに見直し、修正することをお勧めします。
とにかく前向きに、元気でいること。当たり前のことですが、これか案外大きな成功の秘訣だと思います。
最後に、過去の成功者のケースをご紹介したいと思います。
ある百貨店の法務担当者だった50歳の方は、英語力、海外事業開発のための契約・法務に関するスキルと経験をお持ちでした。しかしながら1年以上も求職期間が長引いている状態。上記綴ってきたようなアドバイスを差し上げ、まずは元気に、楽しく、クリエイティブなキャリア開発を考えてみましょうとお話ししたのですが、その時点で具体的な案件は残念ながら弊社にありませんでした。
ところがご相談の翌週、その方にぴったりの案件を偶然にも受託することができました。ご本人の展望にも合致し、能力を活かせる外資系企業の店舗開発部長の仕事です。その方の前職の年収は約1000万円。1年以上の求職活動で、年収500万円程度の非正社員の案件しか見つけられず、一旦その仕事に就かれていたのですが、その外資系企業は驚いたことに1000万円程度の年収を提示してくれました。日本の会社であれば、現職が500万円なら600万円程度でいいだろうと判断してもおかしくない状況です。しかし、その企業は1000万円という額を最初から提示してくれたのです。
ご本人も私も驚き、その年収の高さの理由を先方へ聞いてみました。採用担当である人事責任者の方の回答は「このようなスペックの方は、希少価値があります。ご当人にとってなかなか案件がないということは、探す側からみても、同質の人が少ないということです。弊社は採用が目的ではなく、彼に成果を出していただくことが目的で、彼ならそれを達成してくれると思えました。もし1年後、その責任を果たしてもらえたとして、弊社は業界でも大手なので、きっとヘッドハンティングがかかるでしょう。その時に500万円の報酬しか出していなければ引き抜きにかかり、また採用コストが生じ、時間も浪費し、事業の進行に遅滞がでます。その損失は500万円程度の話ではありません。責任に合わせた市場の適正プライスだと思います。もちろん期待の表れでもありますが、正しく評価していることをご本人にもお伝えください」とのことでした。これをご本人にお伝えするといたく感激され、入社後には何人分も働き、大きな貢献を果たされたことはいうまでもありません。
また、こんなケースもありました。
海外生産拠点の副社長まで経験した、ある石油会社の元工場長の方がおられました。専門性は深くありませんが会計の知識や英語力があり、人柄も素晴らしい方だったのですが、やはり2年間も職がない状況でした。(以前なら大手企業の部長クラスだった方なら、知人や仕事関係の知己から、次のキャリアを探すことも可能でしたが、今は難しくなっています。まして会社がアウトプレースメントでお金を払ってくれたとしても、退職者の次の就職先がないという時代です。)
そんな状況の中、弊社にご相談に来られ「化学の知識を使い、世の人のために働きたい」とう原点に立ち返ってキャリアデザインを策定し、探し方を相談していきました。その方の場合も、残念ながら弊社に合致する案件がなかったのですが、ご自分で、ある米国企業に問い合わせをされ、日本に参入を企画中の環境監査コンサルティングの事業を探し出し、タイミングよく、そこへ採用されました。採用側も、偶然そのような有力候補者から問い合わせがあったので、驚いておられたとのことでした。
前述のとおり、広く公募されている求人は、年収が600万円以下のものが中心です。シニア人材の方が望む「マネージャー」「経営」あるいは「コンサルタント」という領域の案件は、一般の求人募集の市場にはあまり存在しません。逆に企業の潜在的な求人ニーズを戦略的に探り当て、他の候補者が気づかない間に直接アタックするほどの覚悟、知恵、行動が必要になってくることをご承知おきください。
一方、発想を逆転させれば、600万円以下の案件なら、日本にはまだまだ多数存在することになります。シニア人材の多くが”それらを望まない”という選択をしているだけで、案件が全くないのではありません。そう考えると、少し気楽にはなりませんか? また上記の例のように、戦略的に探せば年収がそれなりに高くやりがいのある案件が、一部の人材紹介会社には存在しますし、直接コンタクトによってそれらを生み出すこともできます。
弊社アクシアムでもキャリア展開の発想のアドバイスはできても、実際にフィットする案件がない場合が多くあります。今回のご相談者の場合は、ご質問内容からの推察になりますが、かなり案件数があるように思います。ぜひ7つの点についてお考えいただき、明るく前向きに活動をしていただきたいと思います。