転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第35回
2008.02.21

起業した後、再度、企業へ転職することは可能ですか?

現在、海外ビジネススクールにMBA留学中の者です。卒業後は、自ら起業したいとの思いを持っています。事業を興し、拡大・成功させていくことを勿論目標としていますが、数年後に、何らか企業へ転職することもオプションのひとつとして持っておきたいと考えています。

現在30歳。前職はある日系大手メーカーで営業と経営企画部に携わっていました。このような経歴で、再度企業へ転職できる可能性はありますか? また可能な場合、どのような選択肢が考えられますか?

Answer

起業を考えておられるだけなのか、既に「決心」されたのか、ご質問内容からは明確に読みとれませんが、「決心」はまだされていないという理解でお答えします。

まず創業前には、失敗しても後悔のない「決心」が大切です。計算の上で判断しただけでは不足で、逆に「決心」しているだけでも不足といえます。成功のためには、想定範囲外のリスクが起こりえることを認識し、たとえそれが起ってもやりとげる強い意志を、創業前の時点で肝に落とし込んでおくことが重要です。(就職と創業は異なるものですが、就職にだって同じぐらいの覚悟がいるともいえます。)

さて、肝心のご質問への回答です。起業された後の再就職には”年齢”が一番の基準値になると思います。35歳未満で再度就職(マーケットイン)することは、比較的容易でしょう。率直に申し上げてしまうと、35歳以降は難しくなってきます。

10年前の日本では、アメリカなどとは異なり、たとえ年齢が若くとも起業後の再就職などできませんでした。ですが、最近は35歳未満であれば可能になったとお考えください。外資系商社、外資系事業会社などでは、30代でベンチャー企業のCOOを務めていた人をマネージャーやディレクターとして採用した例があります。米系大手企業の日本支社でも、ベンチャー出身のMBAホルダーの方を多数見受けるようになりました。

日本の大手企業は、30代の人材も採用するようになってきたといわれていますが、実力給を取り入れる企業が増えたとはいえ、以前として年功序列の給与体系や昇進制度は色濃く根付いています。ベンチャーでの価値観がかえってチームワークを乱してしまうことも多く、合致しないことが多いように感じます。日系大手企業に関しては、あまりチャンスがないと考えたほうが現実的かもしれません。

これまでの職務経歴+MBA+これからのベンチャーでのキャリア資産、どこならこの3つを活かすことができるのか? それがポイントでしょう。

概ね、上記に挙げたような外資系大手企業、コンサルティングファーム、事業再生などを手がける企業、他のベンチャー企業が選択肢となり、日本の大手企業とは決別することになると思います。(日系大手企業のセグメントは、約2,100社程度であり、それ以外のセグメントの企業の方が実際には圧倒的に多いですからご安心ください。)

ベンチャーを起業された後、再度マーケットインの可能性を残したいというのであれば、34歳あたりまでにご自身の事業を軌道に乗せることです。そこまでの猶予期間内で目途がついていなければ、潔く撤退。あるいは一時撤退。そうしてマーケットインされるのが良いのではないでしょうか。

34歳の時点でまだふん切りがついていないか、もう少し頑張れば成果が出るというのなら、さらにリスクをとってベンチャーを続けるという選択もできます。

個人的には起業に賛成ですが、どのような事業を考えておられるのかは回答の材料に入っていませんので、その点はお任せしますが、成功してぜひ、求人・雇用を生み出す経営者になってください。

もし失敗しても、そこからの学び/失敗の理由がしっかり分かっていれば大丈夫だと思います。戦略的な判断ミスはなかったか、経営者として最善を尽くしたか、体力・気力は残っているのか、ねじはしっかり巻きなおされたか…などがご自身できちんと把握できていれば、その後の道も何とかなるものだと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)