転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第31回
2007.12.06

新卒時に金融・コンサルへの就職叶わず。再トライの最良の方法は?

ある外資系大手IT企業に勤務している25歳です。大学時代、経済学部に在籍していたのですが、授業を通じてファイナンス(特にM&Aや事業再生など)分野に非常に興味を持ち、企業の成長を助ける仕事がしたいと思うようになりました。しかし、新卒時には金融機関やコンサルティングファームへの就職が叶わず、もうひとつの希望であった「グローバル」という観点で会社を選択し、現在に至っています。

今の会社ではプロジェクトマネージャーとして、様々なシステムの構築による業務改善の仕事をしています。大変やりがいある仕事ではあるのですが、やはり金融分野へ再トライしたい気持ちがあることと、現状ではITのスキル・知識しか身につかないのではという危惧があることから、転職を考えています。

第二新卒者として、金融機関やコーポレイトファイナンス職へ転職するチャンスはあるでしょうか? また、海外のビジネススクールへ留学し、もう一度きちんとファイナンスを学んでからアプローチした方がよいでしょうか?(留学経験があるため、英語力には自信を持っています。)ぜひアドバイスをお願いします。

Answer

まず、大学を卒業された時点で金融業界・コンサルティング業界に就職できなかった理由についてご自分でどう考えておられるのか、伺ってみたいところです。どちらの業界でも採用に当たっては、有名大学(上位校)の卒業であるだけではなく、一般常識・ロジカルシンキング・コミュニケーション力・タフさなどを要求されます。つまり、学歴のみならず職業人としての基本的な素養・潜在力を高いレベルで求められる世界といえます。

そのような観点から、まず何が足りなかったのかを真摯に振り返ってみることが必要でしょう。また、なぜ金融なのか、金融の何をしたいのか、なぜコンサルタントなのか、コンサルタントとして何をしたいのか……など、現実的な志望動機は大学時代と現在で変化しましたか? もしほとんど変わっていない(深まっていない)のであれば、問題である気がします。

過去の希望(願望)に未だにとらわれているだけであるなら、それはビジネスパーソンとしての将来の展望とはいえません。単に業界に挑戦したいという志望動機は、採用側からすれば一番評価の低いものになってしまいますのでご注意ください。

さて、本題です。金融機関やコーポレイトファイナンス職にキャリアを展開したいが、ITスキルとIT関連のプロジェクトマネジメントの経験しかない。第二新卒としてチャレンジ可能か? というご質問ですが、日本の金融機関であれば、第二新卒としてぎりぎり採用の可能性はあります。ただし、あくまで総合職としてであり、配属先までは担保してもらえないでしょう。また、外資系企業の場合は実務経験がほぼ必須の条件になりますので、ご相談者の場合は業務管理やシステム部門への採用はあるでしょうが、コーポレイトファイナンス職へは、よほどのことがなければ難しいといえます。

では「よほどのこと」というのは、何でしょうか。

第一は、ご自身でも選択肢に挙げておられるとおり、有名ビジネススクールに留学してMBAを取得することです。キャリアに対する価値観を高め、現実的に金融業界の中で何をしたいのかをしっかり定め、徹底的に考える力・分析するスキル・知識を習得されれば、転職実現の可能性は高まります。コンサルティング業界も同様で、経営のアジェンダについて広く議論し考える力がつけば、その可能性は高まります。

第二は、独学でも職場でもいいので、とにかくコーポレイトファイナンスの知識・スキルを徹底的に習得することです。公認会計士の勉強をする、資格を取る、財務会計を学ぶ、財務経理の仕事に転職する、監査法人の財務分析やドバイザリーの仕事に就く、など方法はいくらでもあります。まずは早くコーポレイトファイナンスに関する知識あるいは経験を身につけ、その先の転身に備えるということです。

少なくとも「第二新卒なのだから会社で教えてください」というような意識を持っている限り、厳しい言い方になりますが、これからの競争社会・格差社会では未成熟な30代の予備群、未成熟な経営者願望予備群にしかなり得ません。

第三は、前述したように日本の金融機関に総合職として転職し、配属が希望のものになるように折衝してみることです。商社の企業財務部門の第二新卒枠も狙えるかもしれません。ただし、何度も繰り返しますが、配属先に関しては一種の賭けとなります。

第四は、現在所属されている社内で、コーポレイトファイナンスを手がけている部署に転籍したいと強く働きかけていくことです。事業会社であってもM&Aや事業再生などを行うわけであり、もしかすると、これが希望を叶える一番の近道かもしれません。

「若いのだから、まず行動を」と特に年配者はアドバイスしがちですが、筆者は反対です。若いからこそ、その瞬間の判断・選択が、今後数十年をも左右する決心になってしまいます。ぜひ十分にご自身の状況を把握・分析し、じっくり考えた上で道を選択されることをお勧めします。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)