転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第29回
2007.11.08

MBAだが財務の実務経験はなし。CFOを目指すプランは可能か?

現在、海外ビジネススクールに留学中の32歳です。

大学を卒業後、ある日系の事業会社に新卒として入社し、事業開発部門や経営企画部門を経験してきました。その際、3年ほど事業分析のアナリストのような仕事をしていたのですが「もっと経営に関わる数値をきちんと押さえ、ゆくゆくはCOOを目指したい」と考えるようになりました。そこで一念発起。私費でMBA留学し、現在に至っています。

しかし、ビジネススクールで学ぶうち、金融や企業財務の世界に特に面白みを感じ、自分の興味がどんどん「財務」の分野へとシフトしています。今まで財務部門での実務経験はなく、あるのはMBAだけということになりますが、ここからCFOを目指すようなキャリアチェンジは可能でしょうか?

Answer

事業開発や経営企画部門で、3年ほど事業分析のアナリストをされてきたというのは、財務分析の経験といえるのではと推察します。したがって、まったくゼロからのスタートには当たらないと思いますので、ご安心ください。今後CFO候補となるために不足しているのは、以下のような財務会計分野の実務経験です。

  • 決算/原価計算/管理会計
  • 間接金融ならびに直接金融からの資金調達/資本政策立案
  • 株主対応/税務/ガバナンス
  • M&A関連

ですから、事業会社で財務会計の仕事に就くことができれば、このような経験を徐々に獲得することができ、コントローラーそしてCFOへのキャリアパスが開けてくると思います。

一般的に、40歳になってから経理・会計の仕事に就くよりは、若い間に基礎として経理・会計関連業務の経験を済ませておくほうがベターといえます。シニア・ポジションになってくれば、分析のみならず「判断」が必要になりますので、できるだけ早いうちに下積みはしっかりしておきましょう。現在留学されているコストも、そうでないと見合いません。

さて、ご質問の中で、気になる部分があります。MBA留学をされてCOOからCFOにゴール設定を変えたということなのですが、その中でFinanceを「金融」と訳して面白みを感じたというコメントの部分です。

「金融」と訳した部分に非常に関心が高まっておられる場合には、事業会社側の資金需要は理解しておられるわけですから、金融機関側からの融資や投資・ノンバンク・証券・引受・M&Aなどの業務を通じて事業会社を外から見る(判断する)仕事を選択されても良いかもしれません。

ただし、腰掛け的な候補者は採用側(金融機関)にとって好ましいものではありませんし、金融機関の中で既にプロとしてやってきた30代に勝てるか? という観点からすれば、簡単な道ではありません。このあたりは、もう少し詳しくご本人の志向や展望を伺いながらアドバイスを差し上げたいところです。

過去のご相談者には、以下のようなキャリアパスを歩まれた方がおられました。

  • 商社→MBA→投資銀行→CFO(ベンチャー)
  • 都市銀行→MBA→投資銀行→経営企画→CFO
  • 事業会社→MBA→戦略コンサルティング→Financeマネージャー→CFO
  • 公認会計士→MBA→プライベートエクイティ→CFO

それぞれ、時代背景をきちんと捉え、変化を先取りし、その時その時の最適な選択をされていました。

今回のご相談者の場合は、まず事業会社での財務会計のキャリアをしっかり積んでゆかれ、金融機関サイドの利益の源泉が理解できるCFOを目指すことをお勧めします。事業会社も、やはり金融機関からの投資・融資・財務アドバイスが不可欠な時代です。ですから、そのような財務判断について「マネジメントとして決断できる人材」をぜひ目指してください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)