転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第27回
2007.10.11

MBA留学中に、家庭事情で帰国。キャリアの不利にならない方法は?

現在、海外MBAプログラムに私費で留学中の者です。突発的な家庭事情で、どうしても帰国しなければならなくなってしまいました。

ビジネススクールを退学して日本に戻り、就職する必要があるのですが、やはり「退学した」ということは、今後のキャリアにとって不利になってしまうのでしょうか? また、できるだけ不利にならない方法などありましたら、ぜひアドバイスをお願いします。

Answer

海外のトップスクールでは、日本の大学院と異なり、成績が良くない場合は退学がありえます。そして、その割合は少なくありません。その場合、退学の理由を「成績」にすることはなく、普通は「家庭の事情」ということにされます。

したがって、大手の採用企業で人材採用を数年以上しているHRマネージャー等の場合、何度も「家庭の事情で大学院を中退した」という理由・中身を質問してくることも考えられます。退学の真の理由は何か。その理由いかんによって、評価が分かれるのです。

本当に家庭の事情で中退・帰国したのなら、不利になることはありません。単に「MBA採用枠」の対象ではなくなるというだけです。「大学卒」としての枠で採用は検討してもらえます。(ちなみに、大学院の成績が悪く中退・帰国したのであっても、単に「大学卒」という扱いになるだけです。)隠す必要はありませんし、隠せるものでもありませんので、前向きに考えて「大学卒」ということでキャリアを再構築しましょう。

ただし、職歴がなく大学院に留学して中退をするような場合には、ただ年齢だけが加算されることになりますので、極めて不利に働きます。日本の有名大学卒でなければ、残念ながら第二新卒市場での競争にも不利となってしまい、十分な対策・対応が必要です。

職歴がある場合で、かつ32歳以下であれば、お持ちの職歴を活かしてしっかり再就職をすることをお勧めします。採用側も好意的に職歴と留学の意欲、英語力を評価してくれますので、困ることはあまりないでしょう。ただMBAホルダー向けのキャリアプランは断念せざるをえませんので、ご承知ください。

それから、まったく別の観点での対処法をご紹介します。

海外のビジネススクールでは、ご存知かもしれませんが、単位を貯金しておくような形をとることができる場合があります。まず、現在の大学院で以下の点について確認しましょう。

  • 家庭の事情で帰国しなければいけないが、何年後かに家庭の事情が許せば、再度MBA取得のために戻ってきたい。大学院としてそれが可能か。
  • どのように手続きしておけば、単位を証明してくれるか。

同じ大学院ではなく、違う大学院でまたMBA留学を再開し、以前の学校から単位を移行できる場合もあります。大学院ごとで方針が異なりますが、アンダーグラデュエートと異なり、MBAクラス内外の交流等を大学院の価値としているためです。2年間のそのプログラムを完了することが大事と考えるからなのでしょう。

いずれにしても、家庭の事情・中退となっても、すぐにMBA取得を断念する必要はないということを申し上げたいわけです。しっかりキャリアをつくってから再度MBA留学に挑戦できるように、ご家庭のご事情が好転することをお祈り申し上げます。そればかりはコントロールできないかもしれませんが、それ以外のことは十分ご自分でコントロールできるとお考えください。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)