転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第23回
2007.08.09

戦略コンサルタントを目指し私費留学。キャリア実現へのポイントは?

この秋から、アメリカのビジネススクールにMBA留学するため、渡航したばかりの29歳です。大学卒業後、あるIT企業でソリューション営業の仕事に就いていましたが、戦略系のコンサルタントになることを目指し、退職して留学を決意しました。

これから始まる授業に精一杯努力するのはもちろんですが、戦略コンサルタントとしてのキャリアを実現するため、留学生活の中で意識すべきアクション、就職活動のポイントなどがあれば、ぜひアドバイスをお願いします。

Answer

29歳から2年制のビジネススクールに通い、31歳の夏にご卒業予定と推察します。ご質問内容からは留学先のランキングが分かりませんが、それによっても現実の就職活動は異なると思います。

ビジネススクールのランキングに関係なくアドバイスできることと、上位校とそうでない学校とで異なる点に分けてご説明します。

共通点

戦略コンサルタントには、知識・スキル・ロジカルシンキングが高いレベルで求められることは当然ながら、それ以上に、キャリアに対する考え方・価値観・人間性・トップマネジメントと対話できる教養などが必要になります。そして何よりも徹底的に考え抜く力、答えを見つけ出す力などが求められます。

コミュニケーション能力も重視され、聞く力、質問する力、プレゼンテーションをする力、書く力、まとめる力、多くの人に伝える力など、多角的・総合的に高いコミュニケーション能力が必要です。

就職の際のインタビューにおいて、自分をしっかりプレゼンテーションすることができない人材は、基本的に除外されます。背伸びをする人も、よく落とされてしまいます。現実的な経験からしっかり納得できるコメントを伝えられる、変に飾らなくても持っている能力が読みとれる、といったタイプの方が採用されます。

もちろん、戦略コンサルティングファームすべてが同じタイプの方を採用するわけではないのですし、同じ会社のパートナー4名が不合格にした人を、たった一人のパートナーが「こんなタイプのMBAも採用しておかないと、画一的なコンサルタント会社になってしまう。ぜひ採用すべきだ」と主張し、採用されたというようなケースもあります。このように必ずしも採用基準は画一的ではありませんが、ベーシックなところは、極めて高い知的ハードワークに耐えられる、もっといえば、それを楽しめるタイプの方が求められています。

トップスクール

戦略コンサルティングファームのリクルーターが学校を訪問してレセプションなどを開いてくれますし、戦略コンサルタント業界出身の同級生からも実体験を聴くことができる環境といえます。また、教授自身がコンサルタントだったりもしますし、多くの戦略コンサルティングファームがアメリカにあることも理解でき、各社の情報を日本にいるとき以上に知ることができます。したがって、願望ではなく、現実的な仕事/キャリアとして戦略コンサルタントというものの理解を深められることが大きなアドバンテージです。

かつ、インターンシップの機会も得られやすいので、トップスクールから戦略コンサルタントになることは、それほど難易度は高くないと思います。トップスクールに在籍しているのに各社すべてから落とされる場合には、前述の部分で何らか問題があるのでしょう。半数以上落ちた段階で自己診断し、早期に修正しておくべきです。

意外にも、ごく単純な理由で不採用になっていることもありますので要注意。「志望動機」がまったくナンセンスである、夢物語になってしまっている、大志ではなく単なる願望になっていている、ロジカルな動機になっていない…などのケースが多いパターンです。

中堅校ほか

知識・スキルがきちんと鍛えられており、人間性やコミュニケーション能力も素晴らしければ、トップスクール以外でももちろん採用されます。しかしながら「キャリアに対する考え方」「価値観」などが、戦略コンサルタントの仕事の実態を理解した上で醸成されていないことが多く、入社したいという意欲が大きいことだけをことさら主張するような人が多くみられます。この点、注意が必要です。

本気で経営学を勉強したと言い切れるのであれば成績も十分でないといけませんし、様々な留学経験から得たキャリアに対する現実感のある価値観を(過大に吹聴しなくても)きちんと語ることができれば、インタビュアーの心に響きます。

コンサルタントになりたいという主張ばかりをするのではなく、どのようなコンサルタントになりたいのか、そのためにどんな経験とMBAでの勉強をしているのか、どんなテーマで学んでいるのか、などをしっかり回答すれば、中堅といわれているビジネススクールでも採用される可能性は極めて大になります。

もちろん開示されていませんが、採用対象校をもともと指定しているファームもありますので、その指定対象に入っていなければ、いくら応募しても準備をしても無駄なこともあります。

まずは、フルタイムへのアプローチではなく、1年生の間にインターンシップの可能性をヒアリングしてみて、卒業後、応募対象になりえるのかどうか率直に聞いてみることで無駄な準備は不要となります。中には、メジャーな戦略コンサルティングファームは難しいと判断して中堅のファームに的を絞り、その結果みごと入社を果たしてコンサルタントとしてのキャリアをスタートされている方もおられます。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)