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転職コラム”展”職相談室
キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。
“展”職相談室 第17回2007.05.17
創薬ベンチャー経営にMBAは有効?MOTは必要?
博士号を取得した後、医薬品メーカーの研究開発を12年間行ってきました。今後は、仲間と共に創薬のためのベンチャー経営を目指したいと考えています。
ベンチャーを興し、経営をしていくためにMBAは有効でしょうか?また、「MOTを経てからマネジメントを目指してみては」という友人もいます。MOTの有効性、実際のキャリアパスとしての可能性等について教えていただければと思います。
Answer
読者の中には「MBAやMOTって何?」という方もいるかもしれませんね。MBA(Master of Business Administration)は経営学大学院修士号のことで、1881年に米国ペンシルバニア大学にて設立されたビジネススクール”Wharton”がその最初です。現在は世界中にビジネススクールが広まっていますが、広く社会的にも需要がある修士号です。
一方、MOT(Management of Technology)は技術経営という学問分野のことで、米国マサチューセッツ工科大学にて1981年に始まりました。MOTでは、新規技術への投資判断やいかに生産・研究をマネジメントするかといった技術経営分野が主なテーマになります。
まずはMOTについて、お答えします。研究開発を12年間行ってきた方が、その経験を整理するためにMOTを取得されるのであれば話はわかりますが、起業のために必須とは思えません。十分なご経験がおありなのですから、既に研究開発のプロであり、現場のマネジメントを行う力もお持ちなのではないでしょうか?
たとえばベンチャーキャピタルを必要とするビジネスモデルを描いておられるとすれば、MOT(あるいはMBA)を今から目指そうと考えておられること自体が、投資家にとってみれば「研究開発や技術経営がまだできないのか?」といった不満になる可能性もあります。
投資家が関心をもつのは資格という面ではPhD(Doctor of Philosophy=博士号)です。研究開発者としてどのような研究開発実績があり、次に何を開発して社会に出現させてくれるのか、そのコンセプトやビジネスモデル、さらにはその実現可能性に関心があります。したがってMOTは必須でも何でもありません。
MOTを保有している方がベンチャーを創業することを否定するつもりは毛頭ありませんし、マイナスになることもありませんが、本質ではないと思います。
つぎに、MBAについてですが、博士号を取得して12年のご経験のある方が、経営をするために、さらにMBA取得に人生の時間と費用を投資したとして、創業後にそれが十分活かされるとは思いません。一日も早く、学位取得ではなく起業・創業のプランを練っていただくほうが実現の可能性が高まり、成功にも近づくのではないでしょうか。
目指すものがいくつか構想としてはあるが、その中でどれにするかやはり定まらず、仕事を退職・休職して留学できる金銭的余裕もおありであれば、MBAを取得しながら構想を練るのもひとつの道だとは思います。例えば、マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学で学び、周辺のベンチャーキャピタリストや教授、ベンチャー企業との人脈を拡大しに行くというのであれば、賛成します。
また別の考え方として、ご自分で経営者を目指すのではなく、経営のできる人とタッグチームを組むという方向もあります。MBAホルダーで経営はできても、医薬のPhDを持った人は、なかなかいないわけですから。
残りの人生が25年としても、長いようで短いものです。創薬にはご承知のとおり年月がかかりますので、一日も早く起業そのものを本気で検討・実行するのか、あるいは断念するのか判断されるほうがよいと思います。
結論として、創業に向けて時間的な観点から、新たにMBAで経営を学ぶ必要もMOTを取得する必要もあまりないと思います。学ぶ自由は何歳になってもあるものですし、生涯学ぶ姿勢は大事だとも思います。創業にあたり経営や技術経営についてのノウハウ、知識の充実を否定するつもりもありません。
しかしながら、経営・財務・セールス・マーケティング・技術経営などの知識を取得するだけではなく、ぜひともそれらの力をご自分だけでカバーしようというのではなく、経営者チームや組織として備えて創業し、起業家として成功していただければと思います。
コンサルタント
インタビュアー/担当キャリアコンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)