転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第10回
2007.01.25

アシスタント業務を超え、やりがいある仕事を手にしたい

大学卒業後、商社に採用され27歳になった女性です。海外営業部で市場分析や営業支援の仕事に従事してきましたが、いわゆるアシスタント業務の範疇をなかなか超えることができません。

いつになればマーケティングや事業開発などの業務に就けるのか、どうすればやりがいある仕事に就けるのかと悩んでいます。手ごたえをもってキャリアを積んでいけるようなチャンスはあるでしょうか?留学経験があり、英語のスキルには自信があります。できれば英語を生かした仕事をやってみたいとも思っています。

Answer

若い方の多くは、このご相談者と同様に「悩み」というより「希望」をお持ちです。現職と違う職種、時には違う業界に移りたいとお考えの方も多いでしょう。

今回のご質問にはジェンダーの課題が含まれるのかもしませんが、残念ながら現在でも、昔のままの「見えない壁」に阻まれることが会社によって、あるいは上司によってはあり得ます。そのような状況が主な要因であれば論外で、間違いなく、壁のない会社・上司のもとに転職すべきです。もっとひらけた環境はどんどん増えていますので、その点は安心してください。

それから、ご質問の本質に「アシスタントからプロフェショナルになりたい」というご希望があるとすれば、先に解決すべきは営業のアシスタントから何故プロフェショナルの営業に展開できていないのか、という点です。何か御本人側にも原因があるのかもしれず、そこに第一の課題があるはずです。ご自身での振り返りや発見が難しければ、我々キャリアコンサルタントのような第三者をご利用になって、課題を探されてみてはいかがでしょうか。

次に、「セールス職からマーケティング職に展開できるか」「セールスのアシスタントからマーケティングのアシスタントに変われるか」というご質問ですが、答えはYESです。さらに英語に関してですが、TOEICで750点程度以上の力をお持ちなら(転職後も英語を向上させるべく努力することを必須として)上記のようにキャリアを展開させる転職が可能です。

ここでポイントとなるのは、「留学経験、英語力を活かしての転職なら大手外資系だ!」とイメージだけで道を決めつけてしまわないことです。

確かに大手外資系企業は社員数が多く、その分チャンスも多いはずで「一人ぐらいアシスタントとして採用してくれるのでは」と思う方も多いでしょう。そのようなチャンスが全くないと否定はしませんが、実態はじつは逆です。大手外資系企業では、ご相談者が狙うポジションには社内から既に十分に登用できる人材が揃っているのです。まして、他業界のセールス職の人材をマーケティング職として採用するリスクよりは、社内のセールスアシスタントをマーケティングアシスタントに異動させる方が成果を期待できる、と彼らは考えるでしょう。

ですから、大手外資系企業のみにアプローチするのではなく、中小規模の外資系も視野にお入れになるとか、また本気で絶対にマーケティングをやりたいと熱意をお持ちなら、ベンチャー企業への展開も検討されるべきといえます。

例えば、新たにWebマーケティングの分野を模索しているベンチャー企業などはチャンスが多いですし、そこでマーケティングを学び、実践していくことに20代の3年間を使うことは有効なキャリアプランだと思います。その経験を社内で活用してマネージャーへとキャリアアップすることもできますし、そこから職域を広げ、事業開発などの次の道を切り拓くこともできます。

当初ベンチャー企業で得られる現金報酬がたとえ低くとも、そこで得たキャリアのコンピテンスはその後、市場で高く評価されることになります。その段階になってから外資系企業に転職をすれば、人材市場の適正価格でご自身(スキル・経験)が評価され、報酬はベンチャーに移る前に戻るどころか、かなりアップすることが十分可能です。

外資系企業は経験重視であり、採用リスクをあまり取りません。ポテンシャル採用を狙うなら、外資系大手・中堅や日系大手企業よりも、あきらかにベンチャー企業の門戸の方が大きく開かれています。

また「今すぐ英語を活かせる仕事」という条件を優先させるのではなく、今は英語を活かせずともマーケティングという職歴の獲得を第一にし、職歴を得てから後、英語でマーケティングをできる人材になることが今後5~6年後の有効なビジョンになるのではと思います。

あとは、英語力を使いつつ、何をマーケティングしたいのか?という、さらに長期のビジョンを見つけ、生み出されることが今後のキャリアにとって重要だと思います。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)