転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第8回
2006.12.12

MBAの1年生。来年夏のインターンシップを探すには?

企業でのインターンシップを希望している27歳です。日本の大学を卒業し、約5年間、ある電気メーカーに勤務したのですが退社をしました。今年9月、MBAを目指して私費で米国のビジネス・スクール(2年制)に留学しました。

来年夏のインターン先を探していますが、自分が通っているビジネス・スクールには、希望するような会社が日本勤務者を対象にして訪問してくれないことが、こちらに来てわかりました。トップスクールであれば色々選択ができると聞いていますが、企業からの情報もなく、困っています。

インターン先の紹介、あるいはインターンを探す方法をお教えいただけませんか?また、インターンをする際の注意点などもアドバイス頂ければと思います。

Answer

イギリスでは1970年代から「サンドウィッチ」、アメリカでは1980年代半ばから「インターンシップ」とよばれ、両国で歴史を持つこの制度。いずれも経済が構造的に大転換したことに端を発し、教育機関と産業が人材育成のために協力しようという社会的なニーズを背景に始められました。

日本でも1990年代半ばから「インターンシップ」というアメリカ式の呼び名が使われ、制度が輸入されましたが、残念ながらスタートから約十年が経過したにもかかわらず拡大をみていません。欧米とはMBAに対する需要の大きさが違うということもありますが、インターンシップ制度自体が、まだまだ日系大手・中堅企業へ浸透していない状態です。しかも制度を導入している企業でも、プログラムの内容が必ずしもMBA向けでないという現実もあります。欧米諸国との差は歴然で、アメリカでは大手もベンチャーも地域産業もMBAをインターン生として受け入れるのに積極的ですが、日本では一部の外資系企業を除き、社会全般としてその受け入れにまだ抵抗があるようです。

結論から申し上げると、MBAをインターン生として受け入れる会社は極めて少ない状況です。受け入れ先は、弊社サイトに掲載されている十数社と、掲載を許可いただけなかったが実施している数十社に限定されており、そこにMBA学生が集中することになってしまっています。つまり、卒業後の就職は売り手市場になっても、インターンシップについてのみは、あいかわらず買い手市場といえます。

無償であっても有償であっても、イギリスやアメリカでは採用だけが目的ではなく、社会的役割として人材育成を担っているという意識が企業にあるのですが、日本ではそのような企業はほとんど存在しません。この点が、日本におけるインターンシップ制度の問題点といえるでしょう。

そのような歴史・現状をご理解いただいた上で、現状を嘆くばかりでなく、以下の方法をご参考に受け入れ先を探していただけたらと思います。これらはアクシアムが過去の諸先輩と知恵をしぼり、一緒に行ってきた方法です。

1)【インターンシップの探し方】

  1. アクシアムからフルタイムの就職先であることを前提として、受け入れ先を紹介

    ※ただしアクシアムから紹介できるのは数社、数名程度です
  2. 過去インターンシップを受け入れたことがある企業に直接アタックする
  3. ビジネス・スクールのキャリアマネジメントセンターから情報収集する
  4. 教授に頼み、教授が顧問をしている先やコンサルタントをしている企業に紹介してもらう
  5. 教授に要請し、公式なリサーチプロジェクトを企画して企業に持ち込み、それを無償で行うことをもってインターンとする(地場のベンチャーなどに有効)
  6. ETICなどのNPO団体を活用し、受け入れ先への仲介を依頼する
  7. Public Policy,International Relationなど、他学部のキャリアマネジメントセンターに掲載されている受け入れ先にも直接アタックする
  8. NASDAQに公開したベンチャーなどに問い合わせ、インターンシップを自ら申し出る(ベンチャーに有効)


2)【インターンシップの心構え】

  1. フルタイム採用と同様に考え、インタビューもそのつもりで受ける必要があります。
  2. インタビューの際には「勉強させてください」ではなく「どのように貢献できるか」を意識し、事前にアピールポイントを考えておきましょう。
  3. 採否の決定は、フルタイム採用と同様の審査ポイント、審査プロセス、難易度です。

皆さんが、有意義なインターン先を見つけ、よい経験をされ、さらに見識を豊かにされることを祈っています。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)