転職コラム”展”職相談室

キャリアや転職に関わる様々な疑問・お悩みなどに、アクシアムのキャリアコンサルタントがお答えします。

“展”職相談室 第5回
2006.10.31

会計監査10年。事業会社CFOやPEへの転身は叶うか?

会計事務所に勤務し、大手企業の監査を約10年手がけてきました。
企業財務をメインにしたサービス部への転部を申請していますが、現在の部署が大変多忙であることもあり、なかなか聞き入れられません。

これを機に、監査業務だけを行う仕事・キャリアではなく、CFOを目指して事業会社に移るか、PE業務やキャピタル業務を行う仕事・キャリアへの転身を考えています。

プロからみてその可能性はあるのでしょうか?

Answer

まず、監査を10年程度担当されていたということなので、公認会計士の資格保有者であるという推察、ならび現在のご年齢が概ね30代前半と推察した上で、ご回答させていただきます。

CFOを目指してキャリア形成していくための機会・可能性は、ずばり、あります。

特に、事業会社に移る場合も、PE(プライベートエクイティ)やVC(ベンチャーキャピタル)等の業界に移る場合も、現時点から2~3年程度(つまり30代前半)の間は、チャンスは多くあるでしょう。しかし、30代後半になるに従い、そのチャンスは減少していきます。

事業会社においては、決算実務・コスト分析・プロジェクション・収益計画立案・予実管理…などなど、営業やマネジメント等とやりとりしながら汗を流して仕事をする経験が不可欠です。すなわち、他人が作ったPLやBSを監査するだけではなく、PLやBSを自ら作るという作業経験が求められます。

ですから30代前半であれば、これらが多少不足していても入社後に経験を積んでキャリアアップをしていけばいいと判断され、チャンスも多いのです。年齢が上がるに従い、“既にこれらの作業経験を持っている人材”でないと求人の対象にはならなくなります。

そうして30代~40代を過ごした後、事業会社におけるキャリアとしてCFOを遂行するスキル、見識、判断力を持てます。もちろんこれだけでなく、CFOとなるまでには、企業財務・資金調達・資本政策など、金融機関との折衝力や財務の知識を身に付ける必要があります。あるいは会社法、ガバナンス、コンプライアンスなどの見識も必須となります。

また中堅・中小会社(二部上場以下すべて)や新興産業においては、CFOといっても、会計・人事・総務など経営管理本部長としての責任も同時に負う場合が多く、実務経験はさらに広く、深く要求されることになります。その点ご理解の上、今後のキャリアの選択をしてください。

PE、VCについては、アソシエイトとしてなら20代の時点から32歳くらいまでが採用対象となります。ただ、35歳ともなれば、投資先の発掘・投資判断までできる人材が求められますので監査や公開支援のスキル・経験だけでは難しいといえるでしょう。(PE、VCにとっては、それらの仕事は会計事務所に出せばいいので、自社にはいらないという理屈になります。)例外として、ファンドの中に経験と見識のある会計士を入れておきたいというニーズがある場合もありますが、これは、ファンド立ち上げの際のケースで、どちらかといえば稀です。

以上のように、ご自身の現在のご年齢、つまりキャリアにおける時間軸の視点を持って、ぜひつぎのキャリアへご判断を下されることをお勧めします。

※こちらでは、質問と回答を簡潔に要約し、典型例としてご紹介しております。キャリアコンサルティングの現場ではコンサルタントとキャリアについてご相談いただくのはもちろん、実際の求人ポジションをテーブルに載せながら、「現実的な可能性」の検討をしています。したがって、その時々で市場動向・受託ポジションが異なりますので、「現実的な可能性」=キャリアのチャンスも様々になります。

コンサルタント

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)