転職コラムコンサルティングの現場から
メールマガジンに連載させていただいたコラムのバックナンバーです。
転職市場、そしてキャリアコンサルティングの現場で起こる日々の出来事から、成功へのヒントを感じていただければ幸いです。
コンサルティングの現場から 第40回 2006.07.13
経営とは…
先日、あるベンチャー経営者とお話する機会がありました。その方はMBAホルダーでもあるのですが、人材の採用から発展し、最後は「経営とは」というかなり大きな話になりました。
その方は、『経営とは哲学だと思う』とおっしゃっていました。曰く、大切なのはMBAで学ぶような知識でも、あるいは人心掌握術といわれるようなテクニックでもなく、『哲学』なのだそうです。
確かにファイナンスやマーケティング、組織論などの知識、それに問題分析力や課題解決の能力も重要ではあるのですが、経営上の課題のほとんどが本質的には人や組織の問題であることを考えると、企業を経営するということは「会社とは何か」や「仕事とは」「幸せとは」など、ほとんど哲学というべき領域の話になってくるとのこと。
「マーケティングは…」「ビジネスモデルが…」とか、あるいは「X理論かY理論か…」などというレベルでの話に終始しがちな日々を送っているなかでかなりインパクトのある深いお話でした。
『経営は哲学』と聞いて最初に思い起こすのは、松下幸之助さんでしょうか。
誰しもが認める日本を代表する経営者であり、「経営の神様」と称えられるその功績と多くの経営者への影響、PHP運動などの思想家としての活躍。著書である『松下幸之助の哲学』『ものの見方 考え方』(共にPHP研究所 出版)などを紐解くと、いずれもシンプルで当たり前なのですが、深く胸を打つ言葉が実に多く語られていると改めて感じます。
1929年の恐慌時にも「ひとりの首もきらん」と雇用を守り、終身雇用による日本的経営の基礎を作ったこと。1933年には戦前の企業としては例のない事業部制を導入し、機構改革を成功させたこと。伝説として語られている多くのことも、その根源には「幸之助イズム」と呼ばれる哲学があったのです。
「人に責任を持たせ、裁量を与えれば、創意工夫が生まれ、活力と成果が生まれる」という根源的な考えも、事業部制という形にとどまらず、いろいろなエピソードとして残っています。
「一方はこれで十分だと考えるが、もう一方はまだ足りないかもしれないと考える。そうしたいわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む。」(『ものの見方 考え方』より)
「“迷わず進め”とよく人がいいますが、本当に迷わず進むという順調な道を歩む人は数少ないと思います。やはりみな迷いつつ進んでいく。迷いつつ進んでいくけれども結論は道をはずさずして進んでいく。そしてゴールインする、ということになるのではないかと思うのです。それが私は人生というものではないかという感じがします。」(『道は無限にある』より)
うーん、深いですね。