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転職コラムコンサルティングの現場から
メールマガジンに連載させていただいたコラムのバックナンバーです。
転職市場、そしてキャリアコンサルティングの現場で起こる日々の出来事から、成功へのヒントを感じていただければ幸いです。
コンサルティングの現場から 第39回 2006.07.06
日本人の労働意欲は世界最低水準? vol.2
前回、人事コンサルティング大手のタワーズペリンによる調査の結果を題材に日本人の仕事意欲について書きました。
タワーズペリンの分析では、日本人の仕事意欲の低さは「年功序列型の報酬体系や企業の合理化、業界再編などさまざまな要因から生じている」とのことですが、どうやら、日本人の仕事意欲の低さは転職に対する意識にも関連があるようです。今回は、この調査を題材に、労働意欲と転職の関係を考えて見たいと思います。
この調査全体でみると、意欲的な従業員は、意欲的でない従業員に比べ転職を考えていない傾向が強く、調査全体(世界)では59%、日本では75%が転職の予定なしと回答しているそうです。
また、意欲的でない従業員のうち、積極的に転職活動を進めている従業員の比率は、調査全体(世界)では21%、日本では11%、同様に意欲的でない従業員のうち、「退職の予定はないがオファーがあれば検討する」と回答している人は調査全体(世界)では39%、日本では53%になるそうです。
日本人はそもそも諸外国に比べ転職に積極的でないというのは明らかに言えると思います。これは終身雇用制の名残を考えると当然の傾向でしょう。転職に積極的でないこと自体は必ずしも悪いことではなく、むしろ、意欲的な人材が現在の会社にコミットする傾向が強いことは、日本企業の強みといえるかもしれません。
ただ、あらためてこの数値を見ると、「現在の仕事に意欲的でないにもかかわらず転職には積極的でない」という日本人像が浮かび上がり、その点、大きな問題であると感じます。結果、「不満があり意欲的でなくなっているが会社にしがみつく」という不健全な状態になっていると思われます。
タワーズペリンのコンサルタントは、日本のこの傾向を終身雇用の名残や転職市場が十分発達していないこと、そして周囲に転職成功の例を聞くことが少ないために心理的に転職活動が抑制されることが要因として挙げられるだろうと分析しています。
それ以外に大きな要因として、そもそも日本人が仕事を選ぶに際し、「雇用主を選ぶ」という感覚を持っていないか或いは極めて希薄であるということが考えられます。
日本人は職場環境(人間関係を含む)に対する、特に上司への不満が大きくあるという傾向が出ているそうですが、それら職場環境が所与の条件であるという意識が強く、自らそれを変える(転職する)ことにそれほど積極的でないという傾向があるそうです。
以前、このコラムの『ウチの会社』という稿で書きましたが、日本人にとっては会社が「『公』の要素を持った共同体」としての存在である傾向があり、歴史的にも「公」に所属することを好む風潮にあるということが影響しているのでしょう。会社≒社会(生活の共同体)であり、選ぶものではなく所与の環境として捉える感覚になっているのではないでしょうか。
今、転職市場が十分発達していないこと、そして周囲に転職成功の例があまり聞かれないことに関しては、我々ももっと努力し改善していきたいと思いますが、これからの時代、皆様には是非「雇用主を選ぶ」という感覚を持っていただけたらと思います。