転職コラム注目企業インタビュー

株式会社あきんどスシロー2012.10.14

回転ずし業界売上No1、外食産業で顧客満足度No1といった評価に加え、その高い成長性、「現場力と経営力」が高度に融合した経営スタイルから、もはや外食業界の枠に留まらずに注目を集める回転ずしチェーン「あきんどスシロー」。 寿司屋を起源とする同社ならではの「うまいすしを、腹一杯。」の理念、それに基づく徹底した顧客還元(原価率が売上の約半分という驚異的な割合)が消費者の支持を獲得し、国内売上は業界首位の1,100億円に達しています。また、韓国での出店を皮切りに世界展開に向けて始動もしています。「うまいすしを、腹一杯。」は、ついに海を越えて世界に広がりつつあるのです。 この「経営力」を支えるコアメンバーはコンサルティングファーム出身者。マッキンゼーご出身の加藤専務(営業本部長)を筆頭に、A.T.カーニーご出身の宇田執行役員(管理本部長)、その他多数のコンサルタント経験者がいらっしゃいます。  本日は、そうしたコンサルティングファーム出身の部長3名にお集まりいただき、スシローの魅力などをざっくばらんにお話しいただきます。 [掲載日:2013/1/10]

株式会社あきんどスシロー

渡邊

まず、皆様はコンサルティングファームご出身とお伺いしていますが、簡単な自己紹介からお願いできますでしょうか?

株式会社あきんどスシロー

志水氏

入社は2010年11月、スシローに入社して2年ほど経ちます。大学院ではバイオサイエンス/化学を学んでいましたが、卒業後はトーマツコンサルティングに入り、2年半ほどコンサルタントとして経験を積みました。そして、ご縁があって2年前にスシローに転職しています。理系→文系→体育会系と来たわけです(笑)。

平野氏

入社は今年の2月です。スシローに来る前は、コーポレイト・ディレクションというコンサルティングファームにいました。大学を卒業して新卒でコンサルに入り、8年半勤めました。

清水氏

私は大学在学中に公認会計士の資格を取り、卒業後は監査法人トーマツで5年ほど監査を、その後ドリームインキュベータにて戦略コンサルティングを丸6年やりまして、この7月にスシローに入社しました。入社してまだ3ヶ月くらいしか経っていない新参者です(笑)

渡邊

なるほど、そうすると皆さんこの1-2年以内にご入社されていますが、なぜコンサルをやめて転職されたのでしょう?また、当然、伸びているネットやモバイル系ビジネス、外資系のIT企業などからもお誘いはあったのではないかと思いますが、なぜ、スシローさんへの入社を決められたのですか?

平野氏

最も大きいのは事業内容の「本物感」です。年間延べ1億人以上のお客様に、休日であれば1時間以上待ってでも食べたいと思って頂ける寿司を、驚くほど安い価格で提供する。この「本物感」には圧倒的な意義を感じました。また、今後の成長ポテンシャルが国内外とも十二分にありそうだったというのもあります。成長する事業/組織では、事業面でも組織面でも様々な経営課題、それも前向きなものが次々と出てくると考えたので、そこでコンサルティングで培った経験を活かしたいと思ったのです。そういった視点で考えたとき、縁もゆかりもなかった大阪で働くことに対する抵抗は全くなくなりました。

清水氏

私の場合は昔からですが、事業会社を経営するということを通じて世の中の多くの人に幸せを届けたい、会社の仲間を幸せにしたい、という気持ちが強かったですね。そのために公認会計士、コンサルタントと修行をしてきて、このタイミングで事業会社への転身を決断しました。その際にスシローを選んだ理由については平野とほぼ変わりないですが、非常に価値を感じる事業を3万5千人の仲間と一緒に動かしていくことが自分の気持ちに合致したということです。結果、私も大阪に縁もゆかりもなかったのですが、この魅力に惹かれて決断しました。

志水氏

コンサルティングファーム出身の経営者が活躍していることも大きいと思います。経営は理念ありきとはいえ、それを実現するために合理性は必要ですし、経営に対する納得感やコンサル出身者に対する周りの期待感、距離感は事業会社で働く上でとても重要だと思います。その点の安心感はあります。

平野氏

「大きすぎず、小さすぎないサイズ」というのも魅力の1つに感じました。世の中に対してそれなりのインパクトを出したい、マネジメント中心に関わりたいと考えた場合、それなりのサイズが必要になってくる一方、大きすぎて経営全体が見えない、見えたとしても関わることができないとなっては、元コンサルタントとして歯痒い思いをしてしまうだろう、そういう意味で、単一事業/単一ブランドで1,000億円(当時)というのは、自分がチャレンジする事業/組織のサイズとして魅力的なのではないかと思ったのです。

渡邊

ところで、スシローさんは昨年かっぱ寿司を抜き業界首位となりましたが、大阪発、郊外店中心のためか関東や首都圏ではまだ詳しくご存じでない方も多いように思われます。そこで、あらためてスシローさんの強み・特徴などについて簡単にご紹介いただけますか?

株式会社あきんどスシロー

清水氏

「うまいすしを、腹一杯。」、これがスシローの原点であり、全てと言っても過言ではありません。

「原価率約半分」ということで代金の半分をそのままお客様にお返ししているわけですが、そこに徹底して品質にこだわった仕入力、豊富な知識に基づく商品開発力が相乗効果として加わることで、業界でもダントツと言えるだけの「Value for money」が実現されています。

これが純粋にお客様の支持につながった、コンサル的に言うなら明確な競争優位性として機能した、この結果が売上約1100億円、回転寿司業界No.1、外食全体で見ても顧客満足度No.1といった評価につながったのだと思います。あるいは評価という点で言えば、お客様はスシローを食べるために1時間、多いときは2時間も並んでいただいているわけで、これこそが一番強烈な支持ですよね。

日本人の愛する寿司で、価格を最低限に抑えつつも、ひたすら美味しさを追求し、結果としてこれだけの顧客支持を得ている。この王道感、本物感がスシローの強みと言える気がします。「驚くほど安くて、驚くほど美味しい」、こんなに分かりやすい強みはなかなかないと思います。そしてその強みは認知・ブランドの向上、規模の拡大と経験の蓄積によって、日々強化されているのです。

志水氏

例えばセントラルキッチンをやめて店内調理に切り替えるというのも、普通はコスト的に簡単に出来ることではないですが、「うまいすしを、腹一杯。」のために決断したことです。その分現場に求められるものも大きいので簡単ではありませんでしたが、逆に容易に追いつけない優位性にもなっていると思います。

平野氏

お客様からの強烈な支持は働く社員やスタッフにとっての誇りにもつながり、これも1つの強みになると考えています。当社への入社を検討いただく方の中にも「どうせ同じだけ働くなら、より多くのお客様により強烈な支持のある会社で働きたい」と考えられる方がいらっしゃるのではないでしょうか?

渡邊

私も家族で月一回は食べに行っていますが、本当に一皿100円とは思えないおいしさですよね(笑)。休日の夕方などいつも混んでいて大盛況ですが、一度あのコストパフォーマンスの良さを体験してしまうと、少々待ち時間があってもほかに行こうとは思わないです。こう考えると、回転ずしの市場は国内では頭打ちではないかという声も聞くことがあるのですが、スシローさん自身はまだまだ出店も増やせそうですね。

株式会社あきんどスシロー

志水氏

そう言っていただけると嬉しいです。確かに外食産業全体では厳しい環境にありますが、回転寿司、特に一皿100円の低価格チェーンは、まだまだ伸びる余地があります。ちょうどこの10月に「開発企画部」を新設し部長に就任したのもそのためで、各エリアを緻密に分析した上で、出店や既存店の梃入れを戦略的に企画していくつもりです。今までは経営企画部でプロジェクト的に取り組んできたのですが、これにより更に結果にコミットする形になりました。その分やり甲斐もプレッシャーも大きくなりましたが、今後のコンサル出身者の方にとっても良いキャリアパスを作れているんじゃないかと思います。

渡邊

なるほど。ではちょうどこの流れで聞きますが、他のお2人は現在どのような仕事をされているのですか?

株式会社あきんどスシロー

平野氏

私も入社は経営企画部でした。いきなり「既存業態の進化プロジェクト」のプロジェクトリーダーとしてアサインされ、商品/接客/雰囲気の全てをゼロベースで企画し、既存業態の進化モデルを構築するのをミッションに活動しました。内容としてはコンサル時代と重なる部分もありましたが、経営者や各部門の責任者と「同じ釜の飯を食べる仲間」として膝詰めで議論したり、社内の合意形成に心を砕いたり、実験店舗での実験から全店への展開までの実行段階に深く関わったりと、事業会社でしか味わえないリアリティの中で、とても充実した日々でした。

プロジェクトでの取り組みが各部門でのものに切り替わった現在は、標準化推進部という部門の責任者として、店舗のマネジメントやオペレーションを底上げするミッションにコミットしています。具体的な説明が難しいのですが、人事制度と育成制度の改革をすることで、社員やスタッフそれぞれが必要な能力を獲得/発揮し、役割を果たせる環境を整える仕事です。「社員やスタッフの意識や行動を変化させる」という非常に大きなチャレンジで、人材マネジメントについては取り組む余地が非常に大きく、成功すれば業績だけではなく顧客満足や従業員満足に対するインパクトも計り知れないものがあり、所謂「ピープルビジネス」ならではのやり甲斐を感じています。

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清水氏

私の経営企画部は、通常の予算策定・管理といった業務に加え、全社的な課題解決や、各部の側面支援に取り組んでいます。入社後の具体例という点ではグローバル展開の検討や広告宣伝の改革などがありましたし、今後は新規事業の検討などもやることになると思います。コンサルティングスキルがフルに活きる、非常にやり甲斐のある部門ですよ。

渡邊

海外展開についてはちょうどお聞きしたかったのですが、韓国への出店が既に始まっている状況ですね?スシローの海外展開について、言える範囲で結構ですので少し教えていただけますか?

清水氏

韓国には2011年暮れに海外1号店として出店し、現在は4店舗目まで拡大しました。初の海外展開ということで最初の立ち上げは苦労しましたが、出店するごとにノウハウも溜まり、また良い事業パートナーと巡り会えたこともあって、徐々に軌道に乗り始めています。

幸い寿司は、既に世界の相当多くの国で認知されていますし、一部の国には数十店舗を展開する回転寿司チェーンがあるほど浸透もしていますが、一方でそういった日常食としての寿司は総じて美味しくない(笑)。ここにスシローのチャンスがあります。他業界の苦戦が目立つ中、本気で「日本発、世界へ」というのを狙えるのは嬉しいしやり甲斐がありますよね。

平野氏

グローバルに展開するだけではなく、本当の意味でグローバルな存在になれる会社は、国境を越えられる普遍的な付加価値を持っています。もちろんローカライズは必要ですが、どの国/地域でも基本となる付加価値が市場に受け入れられ、競争に勝っていく、マクドナルドさんやスターバックスさんなどはその典型だと思いますが、当社にもそのポテンシャルがあるのではないかと思います。食文化や価格感度などの需要側、サプライチェーンなどの供給側ともに乗り越えなければならないハードルは決して低くはないと思いますが。

渡邊

ありがとうございます。では少し話題を変えますが、経営陣の加藤専務や宇田執行役員もコンサルティングファーム出身ですが、コンサル出身者が活躍をしやすい環境なのでしょうか?逆に、苦労されることなどおありですか?

志水氏

加藤が最初に入ったころはコンサル出身者に対する期待は未知数だったかもしれませんが、今ではその存在を理解され、認めてもらえる風土があると思います。もちろん真剣に現場のお客様や従業員と向き合うことができればという当然の条件はつきますが。

平野氏

真剣に現場のお客様や従業員と向き合うというのは、コンサル出身者だからというわけではないにしろ、苦労するところではあります。「この人は多様なお客様や従業員が数多くいる現場のリアリティを、分かったような机上の論理だけで片付けないか」、「ビジネスをモデルとして機械的に捉えるだけではなく、のべ1億人のお客様と3万5千人の従業員という血の通った人間が主役のストーリーとして捉えられているか」といったことが常に問われているような気がします。それに対してとにかく「まずは相手の意見だけではなく、その背景にある現場の風景を、映像として見えるくらい徹底的に聴き込むこと」を肝に銘じています。数値だけで勝手な想像や思考をせず、相手の立場や状況をできる限り立体的に理解してから、解決の方向性や施策を提案する。もちろん言うべきことは言いますが、独りよがりにならないように最大限の注意を払っているつもりです。

清水氏

経営陣にコンサル出身者が多いと言うことは、それだけ共通言語も通用し、自分が思ったことをストレートに役職に関係なしの議論ができるということだとも思います。溶け込みやすく、真剣勝負できるというのは魅力的な環境ですよね。

志水氏

そうですね。直接の上司がコンサル出身ということで、コンサルティングファームにいなければ磨けないようなスキルも事業会社にいながら磨けていると感じます。それはそれで厳しかったりするのですが(笑)、とても恵まれていると思います。

渡邊

確かにそうですね。一方経営という点では、つい先日、株主が日系のユニゾン・キャピタルから英系のペルミラへと移動することがニュースになっていましたが、これにより戦略が変わったり、組織に影響があったりしないのでしょうか?

清水氏

現時点で大きく変わるということはありません。もちろん数字につながる成果は常に厳しく問われるでしょうし、特に経営企画という部門は株主への説明責任を担うという点で仕事は大変になるかも知れませんが、基本的には更なる成長のために重要なステップなのだと理解しています。コンサル出身者を含む経営陣と外資系ファンドの新たな株主とで更にレベルの高い経営をしていこうというわけですから、個人的にも良い経験が出来ると期待しています。

渡邊

皆さんお忙しいのではないかとも思いますが、いわゆるワーク・ライフバランスはいかがでしょう?

志水氏

ライフ・ワークバランスはかなり良いと思います。会社としてライフ・ワークバランスを重視していますし、制度的にも変形労働制を導入していて、業務の状況に合わせて遅めの出社にしたり、早く帰ったりもできます。そのあたりはコンサルティングファームほど自由にできないだろうと思っていたのですが、想像よりも融通がきく感じです。忙しいときもありますが、コンサルのように毎日徹夜や終電が続くなどということはまずないですし、20時を過ぎたオフィスは閑散としています。そういう意味では、実に働きやすい環境です。

渡邊

とはいえ、皆様はそれぞれお忙しく、人は足りないと聞いています。具体的にどんな方を求めていますか?やはり、コンサル出身者が望ましいのでしょうか?

清水氏

おかげさまで成長フェーズにあり、様々な経営課題が待ち受けている状況であるため、コンサル出身者に限らず、幅広く人を募集させていただいています。本社部門で求める人材としては、汎用的な論理的思考力、仮説構築力などに加え、マーケティング、広告宣伝、人事などといった専門スキル/経験も持ち合わせている方でしょうか?更なる成長のためにまだまだやることが見えており、こういった能力をお持ちで、当社のビジネスに共感する方に是非参画していただきたいと思っています。

平野氏

先程の話と重なりますが、外食は「ピープルビジネス」ということもあり、「現場感」を尊重できる方、つまりお客様や従業員の感情/思考/行動などに対する想像力を働かせながら必要な情報を的確に押さえることができる方は、非常に向いていると思いますし、事業会社の醍醐味を感じながら楽しんでいただけるのではと思います。

志水氏

コンサル出身の方であれば、まずは経営企画部に所属していただき、課題解決をするプロジェクトで力を発揮していただきながら、状況に応じて部門の責任者になったり、部門を新設したりして、企画した内容を実行し実現していくといった可能性もあります。私自身がそうだからではないですが、そういうキャリアに魅力を感じる方にはきっとチャンスを与えられるのではないかと思います。

渡邊

ありがとうございます。では最後に、改めてスシローの魅力を語っていただけますでしょうか?

平野氏

繰り返しになりますが、やはり事業内容の「本物感」に尽きる気がします。また入社して強く感じますが、社長からスタッフまで事業に誇りを持ち、熱い思いのある人が非常に多いです。結果として、経営会議でも部門会議でも日々の業務でも、「『うまいすしを、腹一杯。』をどう実現するか」が究極の論点になるため、ストレスなく本質的な議論をすることができます。自分にとってこれほど魅力的な会社はなかなかないだろうなと思いますね。

清水氏

よくコンサル出身者は「事業がやりたい」と言いますが、スシローには本当の意味での「事業」があると思います。1千人の社員、3万5千人のパート・アルバイトと共に、年間1億人以上のお客様に寿司を食べていただくというビジネスモデルが持つ圧倒的なリアリティ。そこに直面する現場にどっぷり浸かりながら、あるいは少なくとも片足は突っ込みながら、信頼関係を築き会社全体を動かしていく。この醍醐味は、なかなか他の事業会社では味わえないのかなと思います。

志水氏

私も最初の1ヶ月弱はお店に張り付いて、現場の社員と一緒にネタ切りや接客までやりました。まだまだ奥は深いと思いますが、少なくともこれでようやく現場の雰囲気を把握できた気がします。このくらい本気で「事業」に取り組んでくれる方にとっては、スシローはとてもやり甲斐のある楽しい職場だと思いますし、私達としても是非そういう仲間がもっと増えると嬉しいですね。

渡邊

本日は、ありがとうございました!

※当記事でご紹介している内容は、ご登場頂きました方の所属・役職を含め、掲載当時のものです。

Profile

平野 貴大 氏

標準化推進部長

略歴:2012年2月 入社
東京大学卒
コーポレイト・ディレクション出身 31歳

志水 祐介 氏

開発企画部長

略歴:2010年11月 入社
京都大学 大学院修士
トーマツコレンサルティング出身 30歳

清水 敬太 氏

経営企画部長

略歴:2012年7月 入社
一橋大学卒、公認会計士
ドリームインキュベータ出身 34歳

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)