転職コラム注目企業インタビュー

株式会社ミスミグループ本社2013.01.14

[掲載日:2013/7/25]

株式会社ミスミグループ本社

渡邊

佐々木様は現在、事業部門にてご活躍されていますが、これまでは人事系のキャリアを歩まれてきたとお伺いしています。御社へのご入社に至るまでのご経歴を、お聞かせ下さい。

ミスミグループ

佐々木氏

ミスミに入社する前は、外資系商社及びアメリカ大使館にて人事を経験し、その後、マーサージャパンにてHRコンサルタントを務めていました。マーサー勤務時にMBA留学し、一度復職した後、2004年にミスミに入社しました。2009年に事業部門へ異動するまで、一貫して人事系のキャリアを歩んできました。

マーサーでは約4年間にわたり、様々なクライアントの課題を解決するべく提案をしてきましたが、次第に、最終的な意思決定者であるクライアントの立場で仕事がしたいと考えるようになりました。

ちょうどそのタイミングで、知人からミスミを紹介されました。会長の三枝の著書は読んでおり、またミスミが先進的な事業・組織運営を手掛けていることは認識していましたので、こういう企業に、人事として直接関われるチャンスは滅多にあるものではないだろうなと思い、入社をしました。

また、マーサー時代に経験した留学も、自分の価値観を大きく変える出来事だったと思います。時間はかかったとしても、いつかはモノを売る会社で、自身で事業を手がけたいと思い始めるきっかけとなりました。

渡邊

人事系のキャリアを歩まれる中で、どういったご理由から、MBA留学を決意されたのでしょうか。

佐々木氏

マーサーに勤務していた当時、先駆的な日本企業は、これまでの職務主義から、職能主義やコンピタンシーなどの概念を取り入れ変わり始めていました。このように会社が変わっていく中でコンサルティングの業務を通じ、「クライアントの組織構造はどうなっているのか、誰がキーマンか、どういう意思決定をされるのか、会社はどうやって動くか、その会社は何を目指しているのかといった企業経営をわかっていないと効果的な人事制度を作ることなんてできないし、クライアントに対しての発言の重みが増さない」と強く感じるようになりました。これをきっかけにMBA留学を決意しました。

それまで経営についての勉強をしたことがなかったので、MBAの授業は新鮮で刺激的でした。これまではあまり感じたことがなかった、事業を手掛ける、売上をあげる、コンサルタントとは別の仕事をする、ということへの関心も高まりました。

渡邊

御社へは人材開発室の室長としてご入社されていますが、マーサー時代のご経験や、MBA留学のご経験は生かされていると思いますか?

佐々木氏

私が入社した2004年は、ちょうど会長の三枝が組織を大きく変えようとしているタイミングでした。例えば2005年には駿河精機と経営統合して、ファブレスメーカーから生産機能をもつ企業へと変わりました。その統合にあたり、ミスミ流の意思決定のあり方、権限規定の仕組みを作るというプロジェクトにも関与しました。かなり大変で苦しいもので、いろいろな人に助けてもらいましたが、コンサルティングやMBAの経験はそれなりに役に立ったと思います。

またMBAで学んだこと全てが業務に直結するわけではありませんが、身についた知識や考え方や価値観の変化は自分の下地になっていると感じます。これは、事業部門でもスタッフ部門でも、共通している点です。

渡邊

2009年に事業部門へ異動し、ご自身の展望に沿ったキャリアチェンジをされています。これは簡単なことではないと思いますが、どのようなきっかけで、異動が可能になったのでしょうか。

ミスミグループ

佐々木氏

入社時点では前述のようにいつか事業部門でやってみたいという思いは持っていたものの、入社後早々に前任者の退任で人事のトップになったこともあり、当面は人事としてやっていくつもりでした。

人事として2-3年経ったある日突然、役員から「事業をやりたいか?」と聞かれたことがあり、「機会があればやってみたい」と答えたところ、その後しばらくたって事業部門へ移るチャンスが訪れました。事業をやってみたいと私の顔に出ていたのと体力があると思われていたかもしれません。(笑)

私はこれまで仕事で失敗もしてきましたし、目標を達成できなかったこともあります。ただミスミは結果だけでなく、そこに至るまでのプロセスや姿勢、努力も大事にしています。その時に任されていた仕事に精一杯まい進していたために、異動が可能になったのではないかと思います。

渡邊

シンガポールの現法社長や、アジア事業部の責任者もご経験されていますが、ミスミにとってグローバル展開とはどういうものでしょうか?またグローバル展開の面白さとはどういうものかお聞かせ下さい。

佐々木氏

ミスミにとって海外マーケットは非常に広大で、まだまだ拡大できるポテンシャルを秘めています。海外の中でも特にアジアマーケットにより注力しています。

全社で見ると、リーマンショックの翌年大きく売り上げを落としてしまいましたが、その後は売り上げを戻し、11年度に続き12年度も過去最高売上、最高利益を更新しました。

この理由として海外売上の伸びが大きく貢献していることが挙げられます。近年では海外売上高比率を重要なKPIとして設定し、会社全体として、本気で海外に力を入れています。海外比率は12年度には33%まで増加しており、今後まだまだ比率を高めていきます。

海外事業でやらなければいけないことは大きく2つあり、1つは当然ながら海外での売上を伸ばすこと、もう1つは仕入の強化です。 例えば、4~5年前まで品質があまり良くなかった中国製品も、最近は急速に品質が向上し、日本製と遜色ないものも出てきています。そういった事象に敏感になる情報収集力、交渉力、スピーディーかつミスなくお客様に商品を提供するオペレーション、どれもが他社を上回っていないと、あっさりシェアを奪われるほど海外マーケットの競争は熾烈です。

私が現在担当する主な市場は韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インドネシア、インドです。同じアジア地域といっても国によって政治や為替、経済的状況なども様々ですし、さらに弊社の事業によっても市場リスクや競争状態が全く違います。

例えばインドネシアとタイを例にとってみますと、両国とも自動車関連が大きな比重を占める、という点では類似していますが、タイは輸出も多く、HDDなどの企業が「世界拠点」の1つとして手広く展開しており、内需向けが主軸になっているインドネシアとは、産業構造が異なります。また、賃金の違いなどによっても、「自動化」の進み具合が異なるため、FA(ファクトリーオートメーション)事業においても、商品に対する市場ニーズはまったく異なります。 ある国で成功したやり方と同じやり方を踏襲してみて、A国では通用しないがB国では通用することもあり、緻密にシミュレーションを行って見極めたり、進出する国や市場の状況に即した戦略を考え事業を展開していくのは大きな面白みであり、醍醐味といえると思います。

渡邊

海外では、政治や経済状況のほかに文化や言語、考え方などの違いもありますので、色々と御苦労がおありなのではないですか?

ミスミグループ

佐々木氏

色々とあります(笑)。語学でいえばシンガポール、インドは英語がかなり浸透しているので話は通じやすいのですが、タイやインドネシアなど、英語が第二外国語の国はなかなか通じづらいので、平易な言い方をしたり、単語ベースのシンプルな会話をするなどの使い分けをする必要があります。こちらの言っていることの半分も伝わっていないと思って仕事を進めていかないと、後で大きな失敗が生じることもあります。

国民性でいえば、日本の社員は自分の成長やキャリアより事業や会社にコミットして、事業をどう成長させようかと考えている人が多いのに対して、海外では自分の成長や自分のキャリアありきというケースが多かったりするので、皆が向く方向を合わせるため、会社や事業が目指す姿とそれが自分の成長にどう影響するのかを、意識して声に出して言います。

私がシンガポール現地法人の社長をしていたときに、マレーシア現地法人を立ち上げました。マレーシアにオペレーション全てを持って行くと無駄が多くなるため、必要最小限の機能をマレーシアに置くにとどめ、基本的にシンガポールから多くの部分をコントロールしていくやり方をとりました。シンガポールにしてみれば、初めて自分たちのコントロール下の組織ができ、自分たちは一つの国を担当する販社ではなく、地域統括的な立場になるわけです。これを意識して今まで以上に深く考えて行動して欲しいことを繰り返し伝えたところ、ようやくそれが伝わり、自分たちがマレーシア市場をサポートするんだという意識が芽生え始め、士気が上がったということがありました。

海外ではビジネス上の営業、マーケティング、オペレーション、バックオフィスといったテーマ以外にも、メンバーの国民性、慣習、考え方などの違いがあるため、このようなメンバーを統率してビジネスを進めていくマネジメント力や人間としての強さのようなものも求められるので、独特の難しさがありますね。

渡邊

これまで御社にて多くのご経験をされていますが、女性として働きにくいと感じたことはありましたか?

佐々木氏

女性にはあまり馴染みがない業界ですから、ハードルが高いと思われがちですが、良くも悪くも男女差別のない会社で、評価や機会もあくまで公平です。そのおかげでミスミでは自分自身を女性であることを意識したことはあまりありません。また産休・育休制度を利用して復帰するメンバーも、年々増えています。

ミスミではこれまで色々とチャンスをいただいたので、私も女性に色々チャンスを与えてあげられたらと考えています。

渡邊

最後に候補者へのメッセージをお願いします。

佐々木氏

ミスミグループ

ミスミの管理者は自チームのメンバーを統率し、PL責任を持って仕事をしています。これには大きな責任が伴いますが、マネジメント力が醸成され、経営リーダーとして必要な力を身につけられます。これは他社にはない大きな魅力です。

ただ、だからといって、ミスミで数年やればマネジメント人材になれそうだから、経営を学べそうだからという理由だけで応募されるのではなく、ご縁があってミスミで働くのであれば、折角なのですから、自分たちがやっている仕事はもちろんのこと、自分たちが扱っている商品がどう作られているのか、どう使われているのか、どのようにモノづくりを支えているのかなど、事業への根本的な興味も持っていただきたいですね。関心を持つことは洞察や理解にもつながりますし、結果的に事業への愛着や仕事への原動力となり、ひいてはその人の成功にもつながるはずです。

余談ですが、ミスミで扱っている製品は、卵をサイズごとにわけてパックする機械や大根の皮をむくような機械に使われることもあれば、精密機械に使われたり、非常に面白いですよ(笑)。

創業50年経つ今も日々変わり続けるミスミには様々な機会があります。業界・職種という垣根を超えて現在チームの長としてPL責任を持ち活躍している社員も多くいます。みなさん是非ミスミの門をたたいてください。

※当記事でご紹介している内容は、ご登場頂きました方の所属・役職を含め、掲載当時のものです。

Profile

佐々木 貴子(ササキ タカコ) 氏

本社理事 兼 FAアジアABU BU長

2004年:株式会社ミスミ入社
2005年:人材開発室 室長
2009年:FA企業体 FA調整締結事業部長
2010年:SEA FA Director 兼 MISUMI SEA Managing Director(シンガポール駐在)
2012年:FA企業体 FA機構部品SBU FAエレメント部品事業部長
2013年:ミスミグループ本社理事 兼 FAアジアABU BU長

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)