転職コラム注目企業インタビュー

日本マイクロソフト株式会社2014.09.17

MBAを2012年に取得後、日本マイクロソフトの*MBA MACHで採用された小澤拓史さんに、マイクロソフトでのキャリアについてお話を伺いました。長年、多くのMBAの皆さんのキャリア相談と多数の外資系企業のMBA採用をお手伝いしてきた私でも、初めて知ることができた点も多数あり、きっとこれから日本マイクロソフトのことを知りたい方に参考となると思います。 *MBA MACH (Microsoft Academy for College Hires) : MBAホルダー向けの人材育成プログラム [掲載日:2014/11/13]

日本マイクロソフト株式会社

渡邊

本日はお忙しい中、取材にご協力いただきありがとうございます。MBA留学中の方や、最近MBAを修得した方で、マイクロソフト様でのキャリアに関心を持っている方に、よりご理解を深めていただけるように、いくつかの質問をご準備しましたので、それにお応えいただければ幸いです。

小澤氏

承知しました。私の経験に照らして、できるだけ具体的にお答したいと思います。

渡邊

MBA卒業後のマイクロソフトで、どのようなキャリアの可能性があるのか、教えてください。

日本マイクロソフト株式会社

小澤氏

マイクロソフトでのキャリアとしてユニークな点を2つご紹介します。1つ目は、多様なビジネスに関わる機会が豊富にある点です。マイクロソフトは、検索のMSNや、ゲームのX-Boxをはじめ、一般消費者向けのデバイス・ソフトウェアもあれば、所謂、法人向けのサーバーからソフトウェアまで幅広いビジネスを手掛けています。そのため、過去の様々な経験を生かしていくことができるだけでなく、キャリアパスとしても、消費者向けビジネスから法人向けビジネスまで、ダイナミックな部署異動を通じて新しい道を開いていくことができますし、実際に多くの人がそうした組織の垣根を越えた大胆な異動を通じてキャリアアップしています。また、職域としても、営業、マーケティング、財務、オペレーションといった様々な部門を行き来する中でキャリアを磨いていく方も多くいます。

2つ目は、グローバルなキャリアパスが描き易いという点です。まず、海外のポジションへの応募は自由です。常に本社では多くのポジションが空いており、様々なMBAネットワークからもその空き情報が可視化されます。日本でビジネスを経験することが本社にとっても非常に価値あることとなります。それは、日本が世界で2番目に大きな市場で、アメリカ本社であれば、数百名で担当しているため機能も細分化されがちですが、日本では数名~10名が担当するため、ビジネス全体を俯瞰して見ていくことができるからです。もちろん、ビジネスオーナーとして市場調査・分析、戦略立案・実行、経営陣・本社への説明責任を持つため、大変なことも多いですが、世界で2番目の市場である日本でのベストプラクティスを本社や他拠点に還元していく中で、世界的なvisibilityもあがるため本社や他拠点を視野に入れたキャリアプランというのも考えやすいです。また、日本にはGlobal Talent Programという3か月間、本社等の他拠点で働くプログラムもあるため、そうした中で自分の海外で働いていくことの特性を見極め、必要なネットワークを構築して本社や海外に転籍することも可能です。さらに、現在の日本マイクロソフトの社長である樋口をはじめ、経営陣や本社のビジネスリーダー達も、非常にMBAに対して、理解と期待があり、はっきりとグローバルタレントとしてキャリアを積んで欲しいと言うメッセージがあります。多くのグローバルリーダーたちとのネットワーキングの機会の場を特別に用意されているので、必然的に常にグローバルを意識したキャリアパスを描いていくこととなります。

渡邊

MBA卒業生の多くはグローバルリーダーを目指しておられますが、MBA後のマイクロソフトでのキャリアを選択するということは、どのようなプラスとなるでしょうか?

日本マイクロソフト株式会社

小澤氏

まず、ビジネスオーナーであるということは、営業担当が個別に持つ売り上げ目標などとは異なり、マーケティング担当者一人一人が持つ担当製品・サービスの売上から、全社の経営指標であるスコアカードにも責任を持つことを意味します。その目標達成のために、関係部署の責任者も巻き込んだ戦略立案から実行に移すところまで全てに絡み、必要に応じたレビューを回し、改善策を打つというPDCAを回すことが求められるため、多くのグローバルリーダーに求められるリーダーシップ・オーナーシップ・対外的/対内的コミュニケーション能力・多様なチームのマネジメント・課題解決力、等のスキルが必要となりますし、培っていくことができます。

また、そうした具体的なケイパビリティを高められる環境にあるということだけでなく、多くのグローバルリーダー達と実際に日々接しながら仕事をしていくことができる環境にあるという点も非常に大きいです。日本の役員やビジネスリーダーたちの中には、本社や他拠点等、世界的に活躍された人も多くいます。私の上司も少し前まではシンガポールでアジアパシフィックのパートナービジネスをリードしており、その上の上司は、中欧・東欧のカントリーマネージャーをしていました。そうしたリーダーたちと日々、戦略立案から現場を巻き込んだ実行に移していく実践の中で得られるアドバイスや視座等から多くの学びがあります。

また、日本のある製品・サービスのビジネスオーナーであるということは、本社との全社戦略とのすり合わせや、予算確保等の交渉事、さらには当然、結果に対する説明責任が伴います。その一つ一つに本社の責任者と日々コミュニケーションしていき、また、日本だけでは動けないような事案があれば他国のリーダーたちも巻き込み、全社的に動かしていくということもしていく必要がでてきます。その過程でもグローバルな環境下で活躍しているリーダーたちを目の当たりにしますので、彼らと一緒に仕事をしていること自体がネットワーキングということだけでなく、ビジネスリーダーのロールモデルの姿を学ぶという意味においても貴重な経験となり、自分の振る舞いにも影響を与えています。さらに、実際に彼らにメンターになってもらい、キャリアの相談もしています。

また、MBA MACHで採用されるMBA同期の存在も欠かせません。MBA MACHは世界中でマーケティング関係だけでも数十名ずついますので、その同期とのネットワークが極めて重要です。様々なグローバル研修を通じて知り合ったMBAを卒業した同期とは、本当にカジュアルな会話ができ、困った時にはお互いに知恵を貸しあい、助言をしあっています。中途採用として「一人」で入社するのとは違い、このMBA新卒時のグローバルネットワークは、多くのマーケットの情報交換、施策の共有、ブレストといったことから、キャリアの相談まで含めて、切磋琢磨しながら頑張れる大切な仲間たちであり、励ましあえる戦友であり、そして、グローバルでのキャリアの考え方を常に意識させられる存在です。

渡邊

どのような能力やスキル、強みを育んでいくことができるでしょうか?

小澤氏

繰り返しになりますが、グローバルリーダーに求められる、リーダーシップ・オーナーシップ・対外的/対内的コミュニケーション能力・多様なチームのマネジメント・課題解決力、等のスキルが必要となりますし、培っていくことができます。作る資料やコミュニケーションの多くが英語であることは言うまでもありませんが、MBAでケースの議論をした際に確立したグローバル環境における議論の組み立て方など、まさに実践の場で多く試すこととなるので、そうしたソフトスキルも継続して磨いていくこともできます。

また、もちろん、マーケティング、すなわち製品部と呼ばれる私たちの部門は、ビジネスオーナーとマーケティングを合わせた形のミッションがあります。私にとってマーケティングは初めての職種ということもあり、多くの学びがあります。入社直後にはWindows 8のローンチにコンシューママーケティングの観点からかかわり、現在はOffice 365の法人向けマーケティングをしておりますが、市場ニーズを分析し、何を、どういったチャネルを通じてメッセージアウトしていくのが効果的で、また、どういうビジネスパートナーたちとアライアンスを組んでいくことでよりエコシステム自体に広がりを持たせていけるのか、といったことを考え、実行に移していく中で、自分の強み、弱みも把握できますし、次のステップにいくために強化しなければならないことにフォーカスしていくこともできます。

より具体的な経験で言いますと、私の持論になりますが、ETOS(エトス) PATOS(パトス) LOGOS(ロゴス)の3要素のバランスがビジネスのベーシックとして重要と思っています。本社に対してなどビジネスオーナーとしての説明責任としては、この中でも特にロジックに重点を置く必要がありますが、現場のコミュニケーションにおいては、きれいなロジックというのも大事ですが、信頼や成功させるという強いパッションといった要素が、大きく物事を動かしていく上では重要なことになっていきます。お客様、パートナー様との間では、より信頼といった要素の比重も大きくなり、お客様・パートナー様担当の営業担当者が積み上げてきた信頼をベースに交渉事を進めるといった、常にこうした3要素をコミュニケーションする相手や場に応じて適切にバランスさせていく必要性というのを強く意識させられます。そうすることが様々なレイヤーで物事を見ている人たちとうまくビジネスを構築していく鍵なのだなということを痛感させられます。これも、多様な人たちとともにビジネスを進めていく必要がある今のロールだからこそ意識させられ、学べていることと思っています。

渡邊

マイクロソフトでは、どのようなタイプのMBAの方が活躍できると思いますか?IT業界の変化は激しいですが、変化に激しい業界の中にあって、他業種と異なる点や、あるいは同じIT業界の中でも他のIT企業に比べて異なる点などがあれば、教えてください。

日本マイクロソフト株式会社

小澤氏

新しいことにチャレンジできる人はおおいに活躍していただけるはずです。仕事を楽しめる人には障害となるものは少ないと思います。逆に命令を受ける事に慣れてしまっている人には、成果を出しにくい苦しい環境となると思います。一つの製品だけにこだわらず、オープンな組織の利点を生かして、どんどん自分の職域を広げて、前のプロジェクトや製品での知見を、次の新しいプロジェクトや製品に生かそうとする人にチャンスがくると思います。

他業種と異なる点といえば、MBA取得後はやはり金融やコンサルを志望される方も多いと思います。それぞれ多くの学びを得られる選択肢と思いますが、マイクロソフトの魅力を言うならば、社会的に非常にインパクトの大きい製品・サービスを持つ会社で、実ビジネスの戦略立案から実行までを担えるという点にあると思います。他のIT企業と比較しても、消費者向けから法人向けまでここまで多くの製品・サービスを持つ会社はないのではないかと思います。その中には市場におけるポジショニングも、成熟度等も異なるので、様々な形での挑戦ができますし、シナジーもきかせられるので非常に創造力も試され、おもしろいと思います。

渡邊

MBA保有者として、マイクロソフトに入社して良かったなという点があれば教えてください。マイクロソフトへの入社を検討している人がいたら、その方に、入社前に知っておいたほうが良い点や覚悟すべき点があれば教えてください。

小澤氏

マーケティング部門では、ローテーション プログラムがあります。MBAの方はMBA MACH で採用された後、複数部門をジョブローテーションします。その中で、多くの主要な製品・サービスも担当させてもらえ、マーケティング活動等にも取り組むことができます。私自身も、先ほども申し上げましたが、最初はWindows 8のローンチに携わり、その後、Business Planning Officeという経営全体を見ていく部門、最後にOfficeの部門でパートナーとの新規アライアンスの立ち上げプロジェクトのマネジメントを行っておりました。その中で感じたマイクロソフトの良さの一つに、非常に周りの人がオープンで積極的にやりたいことをパッションやロジックをもってアプローチしていくことでしっかりとサポートが得られる、そこに組織の壁を感じなかったことがあります。もちろん、先に、信頼も大事といいましたが、信頼はそうした中でのアウトプットを通じて積み重ねていき、より円滑に回していく上では大事な要素ですが、転職したばかりの頃に、この前向きにビジネスを進めていける心地よさには驚きましたし、非常にやりがいがあるなと感じました。

また、やりがいを下支えする一つの大事な点として、マイクロソフトは働きがいのある会社ランキングで今年一位を取っていますが、働きやすい環境にあるということも非常に大きな魅力です。私自身、小さい子供がいますが、子供が風邪などを引いたときは、マイクロソフトのOffice 365を使って自宅からでも全く会社の環境と変わらずに打ち合わせに参加したり、他のメンバーとコラボレーションすることができるので、このフレキシビリティの高さというのは変えがたいものです。マイクロソフトには、性別を問わず、結婚~出産~育児といったライフイベントがあっても、仕事の犠牲になることはなく、会社全体が柔軟かつ自然に対応、協力してくれる文化があります。

たとえば、重要な報告会があったとしても、フレキシブルに電話やビデオ会議で参加してしまうといったこともありますし、そうしたことは日々の打ち合わせの中でよく見かけます。本社の重役等も自宅からリモートで参加している際に、小さい子供がパパを呼びながら部屋に入ってくることもありますが、そうしたときも、ほのぼのとすることはあっても、それがビジネスマナーに反するなどと言う雰囲気にはなることはありません。ITビジネスの先端企業だからかもしれませんが、働く環境/ワークライフバランスについて、企業文化としても人事制度としても、そしてテクノロジーでサポートされている点も含めて、総合的に非常に恵まれていると思います。

日本マイクロソフトでのキャリアを一言でいえば、良くも悪くも自由、ということにつきます。受け身ではない主体的で積極的な人にぜひお勧めしたいです。

日本マイクロソフト株式会社

渡邊

ありがとうございました。

※当記事でご紹介している内容は、ご登場頂きました方の所属・役職を含め、掲載当時のものです。

Profile

小澤 拓史 氏

マーケティング&オペレーションズ シニアプロダクトマネージャー

電気通信大学卒業。サン・マイクロシステムズ、アクセンチュア、シスコシステムズを経て、Carnegie Mellon Universityへ留学し、MBAと公共政策学部のデュアルディグリープログラムを修了。2012年に同校卒業後、日本マイクロソフトに入社。

マーケティング&オペレーションズ(M&O)部門のMBA採用ローテーションプログラムにおいて、Windows本部、Business Planning本部を経て現職。現在はOffice本部にて、シニアプロダクトマネージャーとしてOffice365の普及に邁進中。

インタビュアー/担当キャリアコンサルタント

渡邊 光章

株式会社アクシアム 
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント

渡邊 光章

留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)