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転職コラム注目企業インタビュー
ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ[Vol.5]2024.12.12
誰もが知る世界最大級のグローバルカンパニー、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ(以下、J&J/敬称略)。【注目企業インタビュー】ではこれまで4回にわたり、様々な部署で活躍されている社員の方々にご登場いただき、実際のお仕事の現場や組織の実情、そのキャリアについて迫ってきました。
第一回 『成長機会に溢れる環境と、世界に広がる多様なキャリアが待っている』
第三回 『誰もが当たり前に「ワーク」と「ライフ」を大切にしている。だから、キャリアを高め続けられる』
第四回 『監査法人から、MBAを経て、ダイナミックなグローバルカンパニーでのキャリアへ』
ビッグデータ分析など、昨今ますますビジネスにおける重要性が認識され、注目を集める『データ活用』。第五回となる今回は、医療機器と医薬品それぞれのセクターで、『データ活用』に関する業務に就いていらっしゃる竹内さん、中村さんにお話を伺いました。
お二人は海外ビジネススクールをご卒業されMBAを取得された後、どのような道程を経て現在のお仕事をされているのか? なぜ現在のキャリアを選ばれたのか? またその魅力とは? J&Jの先進的な『データ活用』に関する取り組みとともに、詳しく語っていただきました。
(インタビュアー アクシアム取締役/エグゼクティブコンサルタント 伊藤嘉浩)
MBA留学をきっかけに、キャリアを大きくチェンジ
伊藤:
本日はお忙しい中、インタビュー企画をお受けいただきありがとうございます。どうぞ宜しくお願いします。まず前職でのご経験、そしてなぜMBA留学をしようと思われたのか、J&Jご入社後はどのようなお仕事をされてきたのかなど、これまでのご経歴についてお教えください。
竹内さん:
よろしくお願いします。私は新卒で、通信会社に入社し、IT部門で社内の経営システムの開発や運用に関わる仕事をしていました。そうして3年ほど経った頃、「このまま社内で5年、10年と働き続けていくイメージが持てない」と思い、転職を試みました。ところがIT関連の業種以外の機会は少なく、わくわくするようなキャリアビジョンが描けなかったんです。そこで「経営」についてきちんと学んでキャリアアップをしたい、キャリア機会を広げたいと考えました。もともと海外経験を積みたいと希望していたこともあり、MBA留学を次のステップとして選択しました。
J&Jとの出会いはサマーインターンです。その後、フルタイム採用となったのですが、業種・職種を変えてマーケティングの仕事をしてみたいと思っており、その希望を伝えたところ、念願叶ってマーケティングポジションでの採用となりました。入社後は医療機器のマーケティング業務から始めて、現在は全社のデータ利活用を推進する仕事をしています。
伊藤:
海外でのMBA取得をきっかけにキャリアチェンジをしたかったとのことですが、なぜヘルスケア業界を選ばれたのですか?
竹内さん:
自分の人生の一定時間を使って働くのであれば、「『やっていて良かった』と思えることに携わりたい」、という気持ちが強くありました。社会に根付く教育や医療などの社会貢献、コミュニティへの貢献というのは、私自身の人生になくてはならないもの。その点がヘルスケアという業界がもつ性質と一致しており、この業界を選びました。
伊藤:
ありがとうございます。では、中村さんのご経歴もお聞かせ願えますか?
中村さん:
もともと私は生物の研究者になりたくて大学院まで進んだのですが、その際に、日本にはまだまだ人々の生活を豊かにできる研究シーズがあることを知りました。そこで、ある一つの研究を極めていくよりも、色々な研究に携わり、それらのシーズを世の中に出すことに貢献する仕事をしたいと考えるようになりました。つまり、サイエンスとビジネスの架け橋になりたいと思ったんですね。ですから最終的には研究者の道ではなく、研究用薬品や機器、診断薬などを作る外資系企業に入りました。そこには3年半ほど勤めていたのですが、ビジネスを学ぶにつれて自分がやりたいことをするにはより「経営」に近いところの知識が必要だとわかり、海外MBAを取得することにしました。
帰国後は、IRDP(※)生としてのオファーを得てJ&Jへ。J&Jの医療用医薬品領域を担うJohnson & Johnson Innovative Medicine(法人名:ヤンセンファーマ株式会社、以下J&J Innovative Medicine)のコマーシャル・エクセレンス部にBusiness Insight &Strategy Analystとして入社しました。 2022年のことです。そこでは免疫領域の製品に関する市場調査や予測、内部・外部データを使った分析などを行い、マーケティングチームとともに患者さんにどのように私たちの製品を届けるか、様々な側面から考えました。
その後、今年の5月までの1年半は、免疫領域だけでなくすべてのビジネスユニットを対象としたオムニチャネルの戦略と分析をリードする仕事をしました。J&J Innovative Medicineで使用されているチャネルすべてを分析するとともにどのチャネルをどのように使えばよいのかを明らかにした上で、データに基づく戦略的・戦術的な提案を行っていました。その一方で、新製品企画部で新しい薬剤の市場導入に関わるアサイメントなどを行ったりしていました。
(※)International Recruitment and Development Programの略。
J&Jグループが実施する、将来のグローバルリーダーを採用して育成する独自のグローバルプログラム。
社員の「人柄の良さ」と「多彩なキャリアパス」に、心惹かれて
伊藤:
海外MBA卒業後の就職先として、なぜJ&Jを選ばれたのですか?
中村さん:
まず一つめは、私の主観にはなりますが、圧倒的な社員の人柄の良さです。二つめは、ビジネスディベロップメント(以下、BD)やコーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVC)など、将来的に自分のやりたい仕事ができる場所があったことです。もちろん自分の成果次第ですが、社内に多種多彩なキャリアチャンスがあり、希望するキャリアの道を歩める可能性がある点に魅力を感じました。三つめとしては、MBA卒業生のためのグローバルリーダーシッププログラムであるIRDPがあることが理由でした。
伊藤:
J&JにはCVC部門もあるのですね。日本にもあるのですか?
中村さん:
残念ながら日本にはないのですが、アメリカやシンガポールにチームがあります。
伊藤:
J&Jの社内にCVC機能があり、そのようなキャリアの道もあるとご存じの方は少ないのではないでしょうか。ありがとうございます。では、竹内さんからもJ&Jを選択されたポイントをお聞かせいただけますか?
竹内さん:
先程申し上げたように、業界として共感できたことに加え、J&Jが会社のビジョンとして掲げる「我が信条(Our Credo)(※)」にも深く共感したからです。私は留学時、異なる業界で2社のインターンシップを経験したのですが、やはりヘルスケア業界、特にJ&Jで、自分のやりたいことを実現できると感じました。また、グローバルで多くの事業を展開しているJ&Jには、様々なキャリア機会があったからです。私の場合はIT業界から業種・職種を変えての入社でしたが、その私の大きな変化を受け入れてくれた会社だから、きっとこの先も色々なチャレンジができる、それを後押ししてもらえると考えました。
それから中村さんもおっしゃっていたとおり、本当にJ&Jで働いている方々が「良い人」だったからです。インターン中、約8週間をJ&Jで過ごして20名以上の社員の方とお会いしましたが、皆さん医療のため、医師のため、患者さんのためにという思いを強く持って日々お仕事をされていました。「こういう人たちと一緒に働きたい!」と、素直に思いました。
※「我が信条(Our Credo)」
1943年、J&Jの三代目社長ロバート・ウッド・ジョンソン2世により起草されたもの。顧客・社員・地域社会・株主に対して、会社が果たすべき「責任」を明文化している。
外部コンサルではなく、社内にいるからこそできる『データ活用』とその『価値』
伊藤:
お二人は現在、社内外の『データの利用・活用』に関わるお仕事をされているとのことですが、もう少し詳しく教えていただけますか?
中村さん:
まず私の所属しているJ&J Innovative Medicineのコマーシャル・エクセレンス部では、基本的には会社全体のビジネス促進に関わる仕事を事業部横断的に行っています。全社に関わるものはもちろん、それぞれの事業部のプロモーションを最適化するためのデータ分析や、データに基づいた戦略構築にも携わっています。
会社が保有しているデータ・ツール・分析方法を頭の中にインプットしておき、事業部長や執行役員などからの依頼があれば、必要なときに最適な方法で必要なものをアウトプットできるようにしています。
伊藤:
差し支えなければ、具体的にどんな取り組みをされたことがあるのか、お教えいただけますか?
中村さん:
例えば、医療従事者の方々に我々の製品のメッセージが最も効率的に届く手段は何なのかを分析しておき、実際にビジネスユニットのマーケティングやセールスの会議に赴いて分析結果やと分析結果を元にした提案をし、一緒にその提案を実施するところまで行いました。
おそらく戦略コンサルタントの方の役割は“提案”までで終わるのだと思いますが、私は中にいるものとして“実行・実施”を一緒に行っています。そして“その後の変化”まで把握します。そうして現場のチームと一緒に取り組みを最後まで行える点が、『社内』でデータ活用の仕事をしている非常に良いところかなと思っています。
伊藤:
中村さんが行った、外部や内部データを活用した改善提案がセールスの皆さんによって実行され、さらにそれによって医療従事者の方々の行動変容が起こっていくのを見て取れる、そこに価値ややりがいがあるということですね。
中村さん:
はい、おっしゃるとおりです。
伊藤:
ありがとうございます。竹内さんのお仕事は、どのようなものですか?
竹内さん:
私はJ&Jの医療機器セクターである、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー(ジョンソン・エンド・ジョンソン メドテック)に所属し、セールス・マーケティング部門での『データ活用』を推進する部署をリードしています。中村さんのいらっしゃるJ&J Innovative Medicineと比較するとデータ量は限られているのですが、社内・社外の必要なデータを日々集約しています。
私たちはより戦略的にデータが活用できるよう目的に応じて情報を精査・集約しできる環境を提供することで、各部署がニーズに応じてデータを集め分析する状況から、より効率的・効果的に、データに基づいた意思決定ができる状況を目指しています。コマーシャル戦略を立てる際の材料、また日々の営業・マーケティング活動に必要な情報を、業務のニーズとプロセスに応じて提供しています。例えば、医療機器業界では前述したように市場に関する情報は限られていますが、我々の事業領域が中長期的にどのように成長するのか、予測し、それを元に中長期戦略が策定されています。
中村さんのお仕事が、よりセールス・マーケティングチームと膝を突き合わせて課題を共有し、提案を持っていくことだとすると、私たちの部署は、分析結果をもとに意思決定しアクションしたいチームに対して、「データ分析で提供できるものとは何か?」をまず提示し、彼らがやりたいことを上手に促進できるためのバックアップとなるような情報を渡していく仕事をしている感覚です。ビジネスインテリジェンスやデータサイエンスを活用して、具体的にデータを可視化してレポートにし、セールス・マーケティング部門に気づきを与えていく。戦略立案・実行の意思決定に役立つデータ・インサイトを提供することを行っています。
伊藤:
竹内さんがリードされている『データ活用』のチームには、どのようなバックグラウンドの方がいらっしゃるのですか?
竹内さん:
もともとセールス・マーケティング部門にいた社員、データの扱いに強いメンバーなどがいます。ですからセールス・マーケティングの業務プロセス、課題についても知識があり、戦略もしっかり理解した上で、必要なときに最適な情報が出せるようになっています。常に積極的に業務理解をして現場に「刺さるもの」を提供していく。使いやすい形を作っていけるのは、やはり社内にいる人間ならではの付加価値なのかな、と思っています。
例えば、社外から期間限定で業務をサポートいただく立場だと、せっかくの取り組みも、計画まで、もしくは一回限りで継続が難しいということは多くあります。一度行った価値のある分析継続・改善し、いかにして当たり前にしていくのかというのが、『データ活用』を進めるにあたって、実はすごく大事なところです。私たちは社内チームの立場だからこその価値を継続・改善して提供し続けることができていると考えています。
データは単なるツール。MBAと掛け合わせることで、有用な『経営への提言』になる
伊藤:
お二人は医療用医薬品と医療機器、それぞれ異なるセクターで日々『データ活用』に関わっていらっしゃいますが、お互いのセクターの取り組みに関して、どのような印象をお持ちですか?
竹内さん:
医療用医薬品は医療機器と比べると取得できるデータが圧倒的に多く、「データを集めた後に、どう活かすか?」というところまで業界全体で進んでいるという印象です。データを上手に使いながら、患者さんに対する啓発を行うなど、どんどん新しい取り組みをされていますね。私たちは、手術などをする際の医療機器を提供するビジネスですので、手術チームの皆さんや医師の方々に価値を届けるというところにまず集中します。ですが中村さんたちは、よりそこから患者さんに対しての視点、より広い視野を持ってデータへのアプローチを進められていると思います。
中村さん:
たしかに、どの薬剤がどこで処方されたかなど、私が扱っている医薬品の場合は記録がありデータを正確に集めやすいです。一方、医療機器の場合はそこまで個々の使用状況を把握するのが難しく、情報も分散しがちです。そんな中、よりデータをきれいに集める工夫を行い、中長期的に活用できるようにしている点はすごいと思っています。また、医師の皆さんに向けて製品情報や安全使用に関する情報提供を行うアプリを、今年2月に導入されましたよね? 様々な難しさもあるなか、非常に上手にソリューションを提供していると感じました。
伊藤:
なるほど。それぞれの視点でお話を伺えると、同じ『データ活用』でも医療用医薬品と医療機器の現状や課題がよく理解できます。ありがとうございます。では次に、現在のお仕事の魅力について教えてください。
中村さん:
データによって新しい解釈や意味を与えられるため、感覚的にとらえていたものを可視化でき、人を説得するためのひとつのツールとして使える点に面白さを感じています。正直なところ、私はデータやデータ分析は何かを進めていくための「ツールの一つ」だと思っています。データが全てだとはまったく思っていないです。しかしながら、しっかりとしたデータがないと感覚的に物事を進めてしまい、時間や予算を無駄にしてしまう可能性が高くなるとも考えています。つまり、患者さんへ私たちの製品が届きづらくなる可能性があると。データ分析をすることで、より良いインサイトを出して無駄をなくし、最短距離・最短時間で患者さんに我々の製品を届けられる可能性があるのが、今の仕事の大きな魅力です。
データだけを扱うのであれば、データサイエンティストにもできるでしょう。ですが、実際の現場でどんな風にデータが入力され使われているのか、経営層の意図とは何かまで理解した上でデータの解像度を上げ、データに解釈を与えて何かを提案することは、やはり「経営的なマインドセット」や「グローバルマインドセット」を持った“MBAホルダーだからできる重要な仕事”なのではと思っています。
伊藤:
まさにいま『データ活用』の最前線で「生きたデータ」を扱っていらっしゃる中村さんの言葉は深いですね。ありがとうございます。竹内さんは、いかがですか?
竹内さん:
先程も触れたように、これまで医療機器業界では、データの収集や利用といった取り組みが少ない状況にありました。ですから過去の経験を元に仕事をしている社員がすごく多いんです。これには良い面もあって、情報だけでは計れない感覚値が正しいことも確かにあります。しかし、これだけ外部環境が変化していく中では、やはり上手に最新のトレンドなどを取り入れていかなければなりません。
ですから私は、営業など現場の社員が経験から感じていることをデータによって証明しバックアップすること、またある時は思い込んでいた事柄をデータによって客観的に見ることで、より建設的なディスカッションを促すことがしたいと考えています。そしてそれは、会社としての意思決定をサポートする重要な役割だと思っています。
このように、上手にデータを活用して情報を届けていくことで、現場の社員に新しい気づきを持ってもらうこと、実行していることにより自信を持って進めてもらうこと、そのサポートができる点がデータを扱う仕事のすごく面白いところじゃないかと感じています。
J&Jに入社した当初、私は周囲の皆さんと大きくバックグラウンドが違うことを不安に感じていたのですが、違うからこそ皆さんが当たり前だと思っていたことについて率直に質問ができた面があります。違う業界を経験し、海外MBAでビジネスのフレームワークを学んだことによって、取り入れるべき視点が増やせたのではと。このあたりも、中途でかつ異業種からJ&Jに入って、より仕事を楽しめている要因のひとつかなと思っています。
『データ活用』の業務にも求められる「グローバルマインドセット」
伊藤:
今後は、どのような形で『データ活用』を進めていかれるのでしょうか?
竹内さん:
今はまだ特定の部署での活用例が多い状況ですが、全社で活用が進むようにしていきたいと考えています。私が所属するメドテック(医療機器セクター)は、まさにこれからデータをきちんと使っていこうとしているタイミング。その動きを強めることは、会社の競争力を高めることにつながる、大きな武器になると思っています。扱うデータ量もどんどん増えてきていていますし、社内でのニーズもどんどん高まっています。ですからクオリティの高いデータをきちんと集め、全社的に活用できるところまで、しっかりとレベルを上げていこうと注力しています。
そのような状況の中で、セールス・マーケティング部門のこともデータのこともよく理解ができている人材、両面に強い人材がまだまだ社内では足りていません。ヘルスケアのビジネスでは今後ますます「データ活用』のニーズは増えてくるでしょう。ですからケーパビリティを高め、将来に向けての準備ができるチーム体制をしっかり整えたいと思っています。
伊藤:
そういった素養や能力を持つ方を、求めているということですか?
竹内さん:
はい。初めから両方を持っている方は少ないかもしれませんが、データ領域に強みを持っていれば入社後に業務のことを学んでいただくことは十分できます。そうして一緒に育っていける、一緒に成長していける環境がJ&Jにはあります。ですからデータや戦略的思考に強い方で、ヘルスケアに興味がある方には、広く活躍の場があると思っています。
中村さん:
まったく同意ですね。データが豊富にあっても活用できる人材は正直まだまだ足りないと私も感じます。「医療×ビジネス×データ×グローバルマインドセット」を持つ人材が、もっとJ&Jには必要だと思っています。データやツールは多くなってきましたので、薬剤の特性やビジネスの背景を理解した上で「データに基づいて何かができる人」を増やしていけば、よりJ&Jの製品が患者さんに届く可能性が高くなっていきますから。
J&Jはグローバルカンパニーですから、「データ活用』の仕事に関しても海外とのやり取りが多く発生します。ですからグローバルマインドセットを持ち、かつビジネスもちゃんとわかった上でデータを触れる人材が更に増えればと思います。そのような人と一緒に働きたいと、常に思っています。
伊藤:
「グローバルマインドセット」という言葉が何度か出てきましたが、もう少し詳しく教えていただけますか?
中村さん:
あくまで私なりの考えですが、「グローバルマインドセット」とは、「相手の話を聴いた上で、しっかりと自分の意見も言うこと」ではないでしょうか。ビジネスの場でも日本人的な感覚でいると、自分の意見を言えないケースが多々あるんですよね。私も然りですが(笑)。けれど、やはりグローバルカンパニーで求められるのは、ネイティブでなくとも英語でしっかりと自分の意見を伝える、その理由や根拠も併せて伝える、かつ相手に納得してもらえる能力を持った人材だと思います。これらを持っている人が、私の中での「グローバルマインドセット」を持つ人です。
竹内さん:
そうですね。中村さんがおっしゃったことは、その通りだなと思いますし、J&Jではこれができているリーダーが多いです。 私たちはアジアパシフィックリージョンの中の日本というマーケット、世界でも注目されている大きなマーケットに所属をしています。その中で一定以上のマネジメント層になると、やはりリージョンのステークホルダーと上手にコミュニケーションを取ることや、グローバルのステークホルダーに日本の状況をしっかりと伝えてサポートをもらうことが重要になってきます。情報収集も含めて、そのような振る舞いが上手くできることが、とても大事になってきます。
もちろん、私たち全員が十分な「グローバルマインドセット」を持って発揮できているかというと、ばらつきはあります。ただ、海外MBAを取得されてIRDP生として入社されてくる方は、そのキャッチアップがものすごく早いです。そういった人材が、J&Jに増えてくれたら嬉しいですね。
部門や国を越え、グローバルで先進的な「データ活用」に取り組める環境
伊藤:
セクターを超えたコラボレーション、例えば勉強会や共同プロジェクトなどの機会はあるのですか?
竹内さん:
データサイエンスのチームはそれぞれのセクターに分かれて仕事をしているのですが、「データサイエンスカウンシル」という場があり、共同プロジェクトや事例紹介、業界の最新情報の共有、意見交換などを毎月実施しています。今年9月にはアジアパシフィックで「データサイエンスサミット』があり、各国の事例を共有し学ぶ機会もありました。このサミットは、毎年2日間にわたって行われています。
そもそも医療機器と医療用医薬品の部門が同じ会社の傘下にあるというのは、J&Jの特長的な点であり、私たちはこの恩恵をとても多く受けていると常々思っています。同じ社内ですから事例などについてもオープンに質問でき、可能な範囲で色々な情報を提供してもらえ、多くを学べています。
伊藤:
医療機器や医療用医薬品などのセクターも、国も越えて、そのような場が用意されているのですね! やはりJ&Jさんはすごいなぁ。
中村さん:
データサイエンスカウンシルやサミット以外でもIRDPの同期生や先輩などとのつながりで、アンオフィシャルな形にはなりますが、他のチームとコミュニケーションを取ることはよくあります。「こんなデータ分析をしようと思っているんだけど、どう思う?」など、カジュアルな形で相談ができたり、情報交換をしたりしています。IRDPの卒業生はJ&Jグループの様々な部署で活躍していますから、彼らとつながって気軽にコミュニケーションできることは、非常に参考になっています。
グローバル人材として輝く、なりたい自分に成長できる会社
伊藤:
海外MBAで学ばれたことは、現在のお仕事にどのように活かせていますか?
中村さん:
経営、リーダーシップ、マーケティング戦略、ネゴシエーション、ビジネス分析…そのすべてが役に立っています。例えば会社の上層部の方々と対話する場合でも、それらすべてが総合的に役立っているというほうが正しいかもしれません。中でも私が一番価値を感じているのは、やはり「マインドセット」ですね。私にとって海外に飛び出してMBAを取得したことは、大きな意味がありました。
私はビジネススクールに留学するまでほとんど海外経験はなく、人とのコミュニケーションにおいては基本的に傾聴しているタイプでした。けれどビジネススクールでは、そういってもいられない。様々な国から留学してきている同級生たちを前に、しっかりと自分の意見を言って、かつその意見を相手に飲んでもらわなければならない。その体験は、海外MBA留学での一番のカルチャーショックでした。とてもハードな経験でしたが、自分の中のマインドセットを育てることができたと思っています。その点が、やはりMBAでの学びの中で一番役に立っていますね。
竹内さん:
MBAを卒業して新しい業界・業種に飛び込みわからないことが多かった中で、得意領域でなくとも全体として必要なフレームがわかる点は、大いに自分の助けになりました。前職のIT業務ではまったく関わりのなかった分野、例えばある製品の在庫量の話題やファイナンスに関する課題に話が及んだ際にも、バックグラウンドがない中でも「このあたりの、この問題を話しているんだな」と理解することができました。やはり様々なビジネスに関するフレームを早めにわかった上で、経営陣たちがどのポイントについて話しているかが理解できることは、大きなアドバンテージです。その点がわかるか否かは、とても大きな差につながるのではと思います。
もちろん、中村さんが挙げてくださった「グローバルマインドセット」を持ってしっかりと英語で人と議論ができることや、英語のプレゼンテーションで押さえるべきポイントがわかっていることなど、テクニカルなことも含め本当に多くが役立っています。
伊藤:
お二人は、今後は、どのようなキャリアビジョンを描いていらっしゃるのですか?
中村さん:
私はこれから、BD部門やCVC部門に進みたいと考えています。いまでも覚えているのですが、IRDPの最初の面談で当時の人事の方と話した際、私は「自分ならできるので、すぐにBD部門やCVC部門に行かせてほしい!」という旨の話をしました。その人事の方は、「もっと製薬業界全体のことや会社全体のことを把握し、横串でそれらをしっかりと見たほうがいい」「もっと知識とスキルを身に着け、自分でコネクションを作り、成果を出してからそのポジションに行った方がいい」とアドバイスしてくれました。
本当にその指摘通りで、当時の自分の知識やスキルは、まったく足りていなかったと今ならわかります。ですからこの二年半で積み上げてきたものを活かし、今後はBD部門やCVC部門で活躍し、サイエンスとビジネスの架け橋になりたいと思っています。
竹内さん:
まず、ヘルスケア業界の中で、日本以外の地域も含めて経験・視野を広げていきたいと思っています。デジタルやデータなど、自分の強みを活かして新たな取り組みをリードし、人材としての価値を高めたいと考えています。それと同時に、まだ子どもが小さいので、家族との時間も大切にしながらキャリアを築いていきたいですね。そのためには、家族と離れている時間は自分のやりたいこと/やるべきことのために使っている意識をしっかり保ち、有意義に使えるような仕事の仕方を磨き、家族との生活、家庭での時間とのバランスを取っていきたいと思っています。
伊藤:
最後に、MBA留学中の方、J&Jでのキャリアに興味があるという方に向けて、先輩としてひと言メッセージをお願いします。
竹内さん:
ビジネススクールもキャリアも、いくつか選択肢があっても、次にやることは一つしか選べません。そうであれば、自分が後悔しないようにできることをやり切る、そして楽しむ。経験は何でも学びになります。そうすると自分ならではの経験の組み合わせができ、次の機会が見えてくると思います。ぜひ、留学生活を楽しんでください!
中村さん:
MBAが終わった5年後に、皆さんはどのようになっていたいかビジョンを持たれていますか? 経営者になっていたい、海外で働いていたい、大きな企業の幹部になっていたい、日本の社会に貢献できる人になっていたい、などあるかと思います。もしかするとこの記事を読んでいる方は、いまちょうど自分のビジョンと重なる企業を探していらっしゃるのではないかとも思います。
私にとってJ&Jは、なりたい自分に向けて常に成長させてくれて、自分のビジョンに近づかさせてくれているとても良い企業です。もし皆さんがお持ちのビジョンとJ&Jの事業とが少しでも重なるところがあるなら、ぜひJ&Jでのキャリアを検討してください。そうなれば、ひとりの社員として、とても嬉しいです。一緒に働けること楽しみにしています!
伊藤:
海外MBA留学時のお話から今後のキャリアビジョン、現在取り組まれているJ&Jの先進的な『データ活用』についてまで、貴重なお話の数々をありがとうございました。今後の益々のご活躍を期待しております。
Profile
竹内 紀子さん
ジョンソン・エンド・ジョンソン メドテック コーポレート・ストラテジー&コマーシャル・エクセレンス部 ストラテジック インサイツ&アナリティクス シニアマネジャー
大学新卒で通信会社に就職、システム部門で経営管理システムの開発・運用に従事。2012年に米国ノースカロライナ州立大学にてMBAを取得、在学中のインターン経験を経てジョンソン・エンド・ジョンソン メドテックに「IRDP」として入社。整形外科領域のマーケティング、データ分析の経験を経て、2021年より現職。全社横断的なコマーシャルデータマネジメント、データ分析、データサイエンスプロジェクトをリード。
中村 銀士さん
J&J Innovative Medicine コマーシャル・エクセレンス部 ストラテジー&オペレーションズチーム マネジャー
日本学術振興会特別研究員を経て、外資系ライフサイエンス企業に就職。再生医療や遺伝子治療に関わる製品担当として働く。その後、2022年にシンガポールにてMBAを取得し、J&J Innovative Medicineに「IRDP」として入社。全社横断的な仕事を行うコマーシャル・エクセレンス部門にて市場調査、データ分析、市場予測などを担当。その後オムニチャネル戦略・分析リードを経て、2024年6月より現職に至る。
インタビュアー/担当キャリアコンサルタント
伊藤 嘉浩
株式会社アクシアム
取締役/エグゼクティブ・コンサルタント
2008年、アクシアムに参画。エグゼクティブ・コンサルタントとして、経営者やプロフェッショナル人材、MBA、若手・次世代ビジネスリーダーまで、幅広い年齢層へのコンサルティング、キャリア開発、紹介実績あり。アクシアム参画前は、商社にてアパレルブランドの輸入販売や海外事業開発を手掛け、新規事業の立ち上げと事業の黒字化を達成。事業計画策定、商品企画、マーケティング、リテールマネジメント、組織開発、生産管理などの経験を持つ。海外事業開発をはじめとする“実業経験を持つキャリアコンサルタント”として、個人のグローバルなキャリア、イノベーティブなキャリアの実現を使命とする。
日本キャリア開発協会認定 キャリアディベロップメントアドバイザー(CDA)