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転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2019年7月~9月 2019.07.04
40代の憂鬱と、未来の創り方
団塊ジュニアと呼ばれる1971年から1974年生まれの世代は、その人口ピークが1973年生まれの210万人で現在は45~46歳となる人々です。彼らは総じて上の世代より貯金額が少なく、親の介護が始まる頃に備えなければならない一方で、お子さんがいる場合には養育期間がまだまだ続く、受難の世代だとしばしば評されます。
さまざまに発表・報道される日本の人口推移と将来の推察をご覧になりながら、今後のビジネスモデルを考えてみたり、ご自身のキャリアについて思いを馳せたりすることは、皆さん一度ならずあったことでしょう。すこし前の資料になりますが、国土交通省から出された以下のリンク先に示された図は、とても分かりやすく今後の日本社会の見通しを紹介しています。
◆「人口の推移と将来推計(年齢層別)」図 ほか
※国土交通省HPより
団塊ジュニア世代のピークである1973年生まれの人々が、大学を卒業したのは1996年あたり。まさに戦後日本の大企業経営の優位性が崩れ去り、年金破綻が最初に叫ばれ、間接金融から直接金融重視に移行せざるを得なかった1998年の少し前になります。1995年がピークであった生産年齢人口は、2060年には半減が見込まれています。どんどん数を減らしていく下の年代層からみれば、団塊ジュニア世代は組織の中の大きな“ひさし”であり、大企業ほど上が見えない、邪魔なものに見えているのかもしれません。
個人的には、キャリアデザイン、人生設計のモデル、組織のリーダーの在り方、経営者の要件は、1998年までがいわば恐竜の時代であった「中生代」で、それ以降が恐竜絶滅後の「新生代」とみなせるほど、変わってきているように思います。1998年までに社会人となった人たちの常識は、それ以降に社会人となった人たちの常識とは全く異なるものであるように感じています。戦後50年間にわたり変化が起こらなかったのに、1998年を境に過去になかったような数々の変化が、社会・会社・個人のキャリアに降りかかったように思うのです。
20代・30代の方には、ぜひとも1998年以前のキャリア形成の在り方で成功した人たちを、ロールモデルにすることのないようにしていただきたいと思います。いまや同じモデルをなぞることは得策ではありません。一方、40代の方には、いまなお恐竜時代のキャリア形成を真似てその成功パターンに近づこうとするのであれば、過酷な人生しか待っていないとお伝えしたいと思います。逆に、新たな時代の先発隊として、下の世代のロールモデルになるようなキャリア開発を目指すのだと考えれば、ポジティブな発想に転換できるのではないでしょうか。
下の世代からは、虎視眈々と、そのキャリア選択の成否を見られています。厳しい時代にあっても前向きにキャリアに挑戦している人と、過去の化石のようなキャリアや働き方を目指している管理職がいたら…どうですか? 古い成功事例・成功体験・価値観のままでは、冷ややかに評価され、リーダーとして認めてもらえなくなってしまうと思います。ビジネスの場でも私生活においても、もっと新しい自由な発想で、キャリアを考えてみることが大切なのだと思います。
現在の転職市場は、20代・30代の求人はもちろん、40代の求人も過去にないほど活性化しています。しかしこれは、団塊ジュニア世代を含む上の世代の中で二極化が起こり、残念ながら組織からお荷物扱いされている人たちがいる一方で、新たなキャリアデザインが可能になったことを理解し、積極的にそのデザインを実行しようと挑み始めた人たちが出てきたことに起因すると考えています。
かつて50代にあったチャンスは、すべて40代に移りました。そのチャンスとは、経営者求人です。40代の人がそのことに気づいても、まだほとんどの方はCxOとなれる経験値や知識を持ち合わせていないのは、本当に歯がゆいかぎりです。古いキャリア観に引きずられて漠然と経営を目指し、部課長になってそれなりの報酬を獲得し、満足しているままではチャンスを手にすることはできません。
そんな中、キャリアの潮流が大きく変わっていること、あるいは日本だけが海外と異なった会社経営のガバナンスを備えてしまったこと、日本の大企業こそ経営者が変化しなければならないことに気づき、強く意識し始めた人たちがいます。その代表的な人々は、海外ビジネススクール卒業生、海外勤務経験者たちです。彼らは新たな時代の経営者として既に挑戦を始めています。古いキャリア観を脱ぎ捨て、新たなチャンスに気づき、踏み出してくださる方が増えることを望みます。
旧世代の経営者・リーダー像と新時代の経営者・リーダー像の違いについては、語りたいことが多く長くなりますので本稿では触れませんが、またいつか別稿やキャリアセミナーなどで皆さんにお伝えしたいと思っています。
関連情報
コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)