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転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2015年4月~6月 2015.04.02
求人が多い事と幸せになれる事に、相関関係はあるか?
求人数は非常に多くなっています。ベースアップを発表する企業も増えてきました。株価も上がってきています。
ところで、皆さんの幸福感は上昇してきましたでしょうか?
総務省の2014年10-12月期労働力調査の結果によると転職者は304万名となり、前四半期より8万名増加したそうです。1年以内に転職を重ねる人が重複回答されていると思いますが、転職者数は四半期合計累計で1,161万人にもなります。現在の就業者数約6,300万人のうち、おおざっぱに言えば6名に1名。かなり多くの人材が転職するようになったと言えます。
また、2012年から連続して求人状況が改善していることは、図1の有効求人倍率の上昇と完全失業率の下降から見て取れます。
図1:総務省統計局 労働力調査に関するQ&A/Q H-1 の回答より
労働力調査の結果を表1のとおり年齢別分布で見ると、50代の方も転職しているように見えます。しかしながら、いつもこのコーナーで述べていますように、実際には20~40代の求人数は非常に多くなっているのに対し、50代の求人は非常に少ないように思われます。
表1 2014年10-12月度 年齢別転職者数
年齢 | 転職者数 |
---|---|
15~24歳 | 60万人 |
25~34歳 | 80万人 |
35~44歳 | 67万人 |
45~54歳 | 45万人 |
55~64歳 | 38万人 |
65歳~ | 13万人 |
労働力調査(詳細集計) 平成26年(2014年)10~12月期平均(速報)結果(総務省統計局)>統計表 第1-2表 年齢階級別転職者数及び転職者比率より
また、総務省の統計には一般求人サイト経由やサーチ経由の転職者の実態が反映されていないことは良く言われています。きっと20代~40代のスカウト対象になる人材の流動は、この類型1,611万名に含まれていないでしょう。そう考えますと、さらに多くの人数が転職しているように感じます。ただそれは憶測であってデータが取れるものではありません。
また、年収レンジについても同様で、アクシアムとして、過去にもっとも大きなボリュームゾーンであった800~1,500万円レンジに限らず、1,500~2,400万円レンジの求人も非常に増えています。ボリュームゾーンが800~2,400万円に拡張したという表現が妥当でしょう。
実際のところ50代の方々にとっては、転職しなくてはならない時は大変ですが、とくに現職で転職の必要がなければ経済的には安定しているでしょう。
次に20~40代の方々では、自発的な転職希望者も増えてきています。
最近の市場では、自発的な転職者と会社理由による転職者の双方が市場に出てきています。採用側からすると、この2通りの人材をあまり区別していません。
幸福な転職を期待したいのであれば、現職でもキャリア形成上、好ましい状態でいること。そのうえで、別のチャンスを考えるのであれば、不景気な時よりも売り手市場である今のような時期にこそ、選択肢も多く、好ましいステップアップ、年収アップが容易となります。
そして、いざ転職の際には、直接応募であっても、人材紹介経由であっても、スカウトに応じた応募であっても、インタビューの際には必ず「現職も満足しているが、貴社の今後の戦略変更にともなう今回のポジションの仕事は、私が本来やりたいことだったので、真剣に考えている」というスタンスを明確に伝えましょう。そうすれば採用側は社外から招聘すべき人材で本当に求めている人が貴方なのであれば、喜んで最上級の好条件で迎えてくれます。キャリア形成上、転職を通じて幸福になるきっかけを掴める可能性が高くなります。実際、このようなケースが増えています。
しかしながら、転職理由をはっきりと説明できない人や、新卒のような応募を繰り返しているだけの人は、採用側から見ても、社外からわざわざ採用しないといけない適正が高い人材とは言えないケースが多く見受けられます。このようなタイプの方の特徴は、余裕がなく、自分を能力以上に見せようと思ってしまうあまり、身の丈以上の希望求人だけを選んで応募してしまうため、応募回数、NG回数も多く、無駄に時間だけが経過し、半年、1年と転職活動が続いてしまうこともあるでしょう。そして、本来の自分を生かせる機会に視野が狭く見向きもしないという最悪のケースを繰り返してしまいます。
求人が少ない不景気では、このような愚行は行えないのですが、どうしても沢山の求人があると、「こんなに沢山あるのだから、私もキャリアアップができるはず。彼や彼女もうまくいったのに、俺がうまくいかないはずがない。」といった虚栄心までもが時として本人の幸福を阻害しているケースも見受けられます。
自分の適正と求人側の適正、そしてお互いの理解、利害を合致させることが大事です。
いつも申し上げていることですが、適材、適所のみならず、適時が肝心です。いつまでも売り手市場が続くわけではないので、しっかり今がその適時と言える場合は、好機です。
ただ転職活動に際して、上述しましたように2種類の人がいるはずです。
ほんの少し上を目指す勇気をもってチャレンジをすべき人もいれば、ほんの少し自分に対する自己評価を下げる勇気を持つべき人もいます。
求人が多くても、求人が少なくても、幸福な転職、後悔しない転職ができる人とは、この自分を知る力、社会の変化を知る力、相手(求人側)の求めるものを理解する力、の3つをしっかり備えている人だと思います。
反対に求人の量にかかわらず、不幸になる転職、後悔の連続となる人とは、自分の足るを知らず、社会の変化への理解も浅く、相手の求めるものも理解できていない人と言えるでしょう。
そして後者のタイプは求人が多い現在のような時にこそ、幻想を追いかけた不幸な転職、転々とする転職、後悔を感じる転職となってしまう場合が多いので、特に注意してほしいものです。
関連情報
コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)