- MBA転職・外資系求人(HOME)
- 転職コラム
- 転職市場の明日をよめ
- 好景気を生かせ
転職コラム転職市場の明日をよめ
アクシアム代表/エグゼクティブ・コンサルタントの渡邊光章が、日々感じる転職市場の潮流を独自の視点で分析しお伝えします。(※不定期更新)
2014年10月~12月 2014.10.02
好景気を生かせ
マーケットは幸いにも求人が多い状況ですが、果たしていつまでこの状況は続くのでしょうか。
7月期の有効求人倍率(季節調整値)は1.10倍となり、前月と同水準となったことで、それまでの4年間連続増加に初めてストップがかかりました。新規求人倍率(季節調整値)は前月を0.01ポイント下回りました。考えなければならない点は、これで求人増が減少に転じるのか、停滞あるいは継続増加を示すのか?年末までの労働市場の動向に注視する必要があります。
過去の有効求人倍率だけを見ても大きな波が見えてきます。
平成14年~平成18年(2002年~2006年)の5年間で求人倍率は増加、平成18年~平成21年(2006年~2009年)の4年間は減少、平成21年~平成26年現在(2009年~2014年現在)までの7年間は増加を続けています。
そして昨年11月あたりからは、月間有効求人者数が月間有効求職者数を上回っており、人手不足を意味しています。平成2年(1990年)当時の有効求人倍率1.40倍には及ばないものの、求人だけを見ればかなりの好景気といえるでしょう。実態として好景気と感じる人は限られると思いますが、経営管理者やホワイトカラー、エンジニアの求人を扱う弊社の実感とはほぼ一致しています。
転職を考える人達にとって、どうしても現職の会社の中でのキャリアは見やすいのですが、社外の可能性についてイメージしにくいものです。好景気の間は現職もボーナスも増額されて、未来も順調に感じるものです。特に40歳あたりまでの年齢なら手厚く処遇されるようになったので、そう感じるでしょう。
でも、もし、あなたが転職を考えているのであれば、できるだけ早く、できれば年内中にすべきでしょう。なぜなら、過去のパターンから類推するに、有効求人倍率が増加の後は必ず減少に転じる時が来るからです。経済の専門家ではないので、減少に転じるのが今なのか、年末なのか、あるいは来年なのか、その時期を予見することはできませんが、私がお伝えできることは、「この20年間で、求人は必ず何度も減少し、しかもその時には急激に減少した。」という特徴です。
減少に転じた場合に起こることは、会社からいきなり大量の人が放り出されてしまうということです。ご注意いただきたいのは、決して選択枝の多い好景気の間に転職することを勧めているのではありません。こういったタイミングの時こそ、自分の理性を働かせてみることや、直観を生かして今の人生が自分の希望に合致しているのか正直に問うことを勧めているのです。自分が何をすべきか定まっていないのであればそれを考えて発想して見るためには、今ほど望ましい状況はそれほど多くはないということです。
27~28歳、33~34歳、38~39歳、そのあたりの方が、例えば、今回のタイミングを見送ったとして、来年リセッションに転じたとしたら、転職したくても案件がないという理由から、しばらく景気が戻るまで3年程度は転職しないでしょうから、都合4~5年後となってしまいます。27歳の人は32歳、34歳の人は39歳、39歳の人は44歳になります。それによってタイミングを逸してしまうと、スタッフレベルの仕事の能力しか証明できない32歳や、マネージャーながらも部下1名程度の中間管理職、経営者への道筋がつかない44歳になってしまいます。
こうしたキャリアのリスクは、「今、考えないこと」ではなく、今リスクを取らないことによって、その先でリスクをとれない状況に追い込まれてしまい、「将来、選択肢を失ってしまうこと」なのです。
ちなみに50歳以上の方は、キャリアが景気に左右されることはなくなっています。案件がある人にはあるが、ない人には残念ながら全くない、という状況です。
脅かすわけではありませんが、ご自分の市場価値は、紙面や検索結果で楽観的に考えるものではなく、実際にマーケットインし、インタビューしてみて、オファーが出るかどうかではじめてわかります。
実際は意外にも、好景気でもオファーを得られない人が多いのです。求人数が多くても、採用側は以前のバブル期(1990年前後)や2000年当時のように妥協しての大量採用や数集めは一切していません。社内では見つけられないスキルや経験を社外からの登用者に期待しているのです。
最後にもし、今、転職しようと決心した方がいたのであれば、今転職するメリットやそのキャリアの選択の際の心得を、5つのポイントにまとめておきますので、参考になさってください。
- 転職後も好景気が続いているので、成果を出しやすい。リセッションに転じた後の転職者は思ったような成果が出なかったり、転職後すぐに会社事情でリストラに合ったりというようなリスクまで起こるが、好景気にはそれがない。
- 新しいキャリア、職能開発には最適。採用側も投資局面にあるので、将来性のある機会を得ることが多い。
- 年収や処遇を改善し、より良くすることができる。
- リセッション時期にはどの会社もギスギスしているが、好景気の転職は、新しい社外の仲間を受け入れやすい、明るい雰囲気にある。
- 35歳以下なら業界、職種を変えることができる好機。35歳以上の人でもどちらか一つ変えても成功する可能性が高い。リセッションの時期にはこの35歳の壁が32歳に下がる。好景気は年齢層が上がる傾向にある。理由は能力、実績は妥協できないが、年齢上限が緩くなり、報酬提示が可能になるためである。
最後に、好景気、不況にかかわらず、人生を豊かにするためのキャリア設計、キャリアの展望をもつことが大事ですが、好景気には不況になった時のことをイメージしにくいものです。逆に不況の時には好景気の時のことをイメージしにくいものです。現時点から3~5年間の中期のキャリアデザインにイマジネーションをもつことが重要となります。
コンサルタント
渡邊 光章
株式会社アクシアム
代表取締役社長/エグゼクティブ・コンサルタント
留学カウンセラーを経て、エグゼクティブサーチのコンサルタントとなる。1993年に株式会社アクシアムを創業。MBAホルダーなどハイエンドの人材に関するキャリアコンサルティングを得意とする。社会的使命感と倫理観を備えた人材育成を支援する活動に力を入れ、大学生のインターンシップ、キャリア開発をテーマにした講演活動など多数。
大阪府立大学農学部生物コース卒、コーネル大学 Human Resource修了
1997年~1999年、民営人材紹介事業協議会理事
1998年~2002年、在日米国商工会議所(ACCJ)人的資源マネージメント委員会副委員長
著書『転職しかできない人展職までできる人』(日経人材情報)